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謁見

 僕がフードを脱ぐと、陛下と父上は直様気付いた。他の大臣たちは困惑気味だけど。その代表に


「な、魔族がどうして王宮内に! 兵士ども、出合え! 直ちにこの魔族を捉えるのだ!」


 とデンベル公爵が叫び出す。そして扉から兵士が30人ほど入ってき僕たちを囲む。


「な! やめるんだデンベル公爵。彼は勇者たちを助けてくれたのだぞ!」


 陛下が僕を庇ってくれるが、


「何を甘いことを言っているのですか、陛下! 奴らは魔族で、私たちは魔族を滅ぼすために戦争をしているのですよ。それなのに魔族を庇うなんて、どうされたのですか!」


 デンベル公爵は反論する。そして


「ガルバ軍団長。奴を捕まえろ! 最悪殺しても構わん!」


 と近くに立っていた兵士に命令をする。あれが今の軍団長なのか? 2年前とは違う人になっている。以前の僕なら圧倒される程の身長に筋肉。2メートル近くあるので余計大きく見える。そして背に背負う大きな大剣。しかしあの人たちに比べると何も感じない。


「了解しましたデンベル公爵。おい魔族。おとなしく捕まるなら痛い思いはしないぞ」


 そう言い大剣を抜く軍団長。それと同時に周りの兵士たちも剣を抜く。こうなってしまったら陛下も何も言えないのだろう。他の貴族も見守るばかりだ。


 さすがにここを血まみれにするわけにはいかないから剣は抜かない。その代わり骨の数本は覚悟して貰おう。


「兵士たちよ、かかれ!」


「ウォオオオオ!」


 軍団長が号令をかけると兵士たちが僕目掛けて走りだす。その中の1人が、右側から僕に斬りかかる。僕はそれを右手で払い兵士の首元をつかみ、他の兵士に向かって投げ飛ばす。投げられた兵士は受け止められずに後ろにいた兵士を巻き込み倒れていく。


 兵士たちは、突っ込むのは危険だと思ったのか、囲む様にし、ジリジリと近づいてくる。そして左右同時に来る。まずは左の横払いをしゃがんで避け、右の振り下ろしを回し蹴りで蹴り飛ばす。その時に左手に影魔法を付与する。そして左側の兵士が、再び攻撃をしてきたので左手で受け止める。兵士は驚きの顔をするが、僕はその隙を見逃さず、首を掴み持ち上げる。そして床へ叩きつける。あ、床が割れてしまった。


 このままじゃあ面倒だと思った僕は光の道(テレポーション)を使い軍団長の目の前に移動する。頭(軍団長)を潰せば足(兵士たち)は止まるだろう。


「なっ! な、なぜ!」


 突然目の前に移動した事を驚いたのか、光魔法を使ったことに驚いたのか、はたまたどちらともで驚いたのかわからないが、この程度で動きが止まるようじゃダメだね。


「く、くそ!」


 直様大剣を振り下ろすが遅過ぎる。この程度で軍団長か。僕は避けることも出来たが、力の差を見せつけるために動かない。その時、陛下や父上が叫ぶが、そんなに心配しなくてもいいよ。大丈夫だから。


 僕は振り下ろされる大剣を左手で掴む。そして少し握ってやるとバキッ! と、掴んだところから大剣が折れる。


「な、なに!」


 軍団長は驚いて折れた大剣と僕を交互に見る。そんなに驚く事があるだろうか? 僕が軍団長に近づくと、軍団長は一歩下がる。僕に気圧されているようだ。僕は至近距離まで近づき、そして


「ぶっ飛べ」


 左手で殴り飛ばす。軍団長は呆然としたまま避ける事もせずに、僕の左手をモロに腹にくらい吹き飛ぶ。轟音をたてながら壁へめり込む。あ、謁見の間の壁に穴を開けてしまった。まあ、床も割れているし、始めたのは公爵の方だから、陛下も許してくれるよね。


「な、な、な、な……」


 とデンベル公爵は僕を指差しながら口をパクパクとさせている。言いたい事があるなら言えよ。聞いてあげるからさ。


「止めるのだお前たち! 剣をしまえ!」


 と、陛下が兵士たちを止めてくれる。兵士たちは困惑な表情を浮かべながらも、陛下の命令には逆らえないので剣をしまう。……初めからそうして貰えば良かったね。


「……すまない。デンベル公爵が勝手な真似を。兵士たちよ。この倒れているものたちを運び出せ」


 そして僕が殴り飛ばした軍団長などを、兵士たちが運び出す。少しはすっきりしたね。


「それでエル……魔王エルフリート殿は、どの様な要件で参られたのだ?」


 陛下は僕にそう聞いてくる。僕の強さがわかったのか周りはもう何も言ってこない。全然本気は出していないんだけどね。


「私がグランディークに参ったのは、陛下との顔つなぎをして頂くためです。理由は2つありまして、1つは僕の夢のため。もう1つは連合軍の状況を話すためです。僕の夢については今はまだ話せませんが、顔つなぎは出来たので良しとしましょう。問題は2つ目です。この事については……カグヤ、君に任せるよ」


 と、全部カグヤに投げる。カグヤは驚いた顔で僕を見てくるが、僕は知らぬふり。さあ、早く話すのだ! 穴が開くほどカグヤに背中を見られたが、ようやく観念したのか軍の現状について話し出す。主にマコトの行動に近衛団の事をだ。


「……そんなことになっておったとは。副団長よ。なぜその事がわしの元に入ってきておらぬのだ。軍の事については報告する様に指示をしたはずだが?」


 と陛下は軍団長が立っていた隣に立つ兵士を睨みつける。


「そ、それは、その」


 と副団長は狼狽え始める。そこにまた


「それは私が言わなくていいと言ったのですよ。陛下」


 デンベル公爵が入ってくる。よっぽど陛下と対立したいらしい。


「……それはなぜだ、デンベル公爵よ。お主にそこまでの権限は与えておらぬぞ」


「いやはや、私が軍団長と親しいのが理由なのか色々と相談されましてね。その時にその様な些細なことは報告しなくて良いと言ったのですよ。陛下もご多忙の様子だったのでね。この様な報告をして心労を煩わせる必要もないかと思いまして」


 下卑た笑みを浮かべるデンベル公爵。それを睨む陛下。うーん、見る限り陛下はデンベル公爵に反論できない感じだな。何か弱みでも握られているのか?


「……わかった。今後はその様な些細なことでも報告をする様にしてくれ」


 そして陛下が折れてしまう。一体なんなんだ?


「魔王エルフリート殿。今回は勇者を助けていただき感謝する。この後はどうする予定で?」


 と陛下は聞いてくる。まあ、今は陛下とデンベル公爵について何も分からない状況だ。変に拘るよりかは調べてからの方がいいか。


「……知人に会いに行こうかと」


 僕はそう言い父上の方をチラッと見る。父上もそれに気づいたのか何度も頷く。


「了解した。それではこれで会議を終わる」


 そう言い退室する陛下と宰相に、僕を睨むデンベル公爵。他の貴族も出て行く。その中で、


「エル!」


 と僕の元まで走ってくる父上。ちゃんと謝らなきゃね。

昨日投稿できず朝になってしまいました。


評価どうよろしくお願いします!

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