帰郷
砦で相談した結果王都に戻る事になった僕たちは、1週間の道程をかけて王都へと帰ってきた。
僕はこの1週間試行錯誤した結果、何と頭に生えている角を引っ込める事に成功した! 原理はどうなっているのかわからないけど、角を意識すると2センチ程まで縮めれた。今は髪の毛で隠れている状況だ。
何でもっと早く気付かなかったんだろうとも思ったけど、それは今まで魔国にいたからだろう。魔国にいる間は僕みたいな容姿の魔族は沢山いたので注目されることもなかったけど、ここは人族しかいない。そのため角が珍しくて見てくる人が多いので、気になったのだ。
「どうしたのエル? しきりに頭を気にして」
僕が角の生えていたところを触っていると、マリアさんが尋ねてくる。
「いや、今まで出ていた角が無くなったからね。変じゃ無いか確かめていただけだよ」
僕は笑顔でそう答える。するとマリアさんに
「へ、変じゃ無いわよ。だってカッコ良いもの」
と、照れた顔をして言われた。……そんなこと初めて言われたような。僕も自然と顔が熱くなる。多分真っ赤になっているんだろうな。僕とマリアさんの間に気まずい空気が流れていると
「見えたぞ! 王都が見えてきたぞー!」
と先行隊が戻ってきて大声でそう言った。すると疲れていた兵士たちも元気を取り戻し隣の兵士と喜びを分かち合っている。生きて帰れたのだからそれもそうか。
「あれがエルの故郷なのね」
「うん。2年前に捨てた場所になるんだけどね」
僕はそう言い昔を思い出す。僕はあの時逃げ出してしまった。父上も母上も置いて。もしかしたら縁を切られるかもね。僕はそう思いながらも王都へ向かって歩んでいた。
先行隊が戻ってから1時間ほどで門まで来ることができた。先行隊が伝えていたのだろう。王都は戦勝ムードになっている。まあ、勝ったのには変わりは無いからね。戦闘はもちろん勇者3人にユフィーだ。そのうち2人は浮かない顔をしているけど。
周りの声からは、
「きゃあ〜、マコト様よ! こっち向いて〜!」
「リュウジ様〜! 抱きしめてぇ〜」
など女の声だけでなく、
「カグヤちゃん、結婚してくれ〜!」
「ぎゃははは! カグヤちゃんがお前なんかと結婚するかよ!」
と男の声もする。王都中の人たちが集まっているようだ。いろいろな歓声に包まれて兵士たちもご機嫌だ。
そして歩くこと30分ほど。ようやく王宮へと辿り着いた。此処からは勇者3人にアルにビル、そして僕たちだ。僕たちは今は魔族ってバレるわけにはいかないのでフードを被って素顔を隠している。角が引っ込んだおかげで被りやすい。
久しぶりの王宮はやっぱり変わっていなかった。ただ、侍女たちが勇者を、特にマコトを避けている気がする。アルの言っていた通り侍女たちにも手を出しているからか。
この1週間でアルとビルからは王都の現状について話を聞いた。とにかく思ったことはマコトのやりたい放題になっているということだ。理由はマコトに意見を言える人がいないからだ。陛下でさえ言えないのだから誰も言えないだろう。
なぜ言えないのかというと、魔王に対抗できるのがマコトしかいないからだ。そのマコトが戦わなくなったらグランディーク王国は終わりだ。そのため貴族たちや陛下も及び腰になっているのだろう。それに便乗してうまい汁を吸おうとする貴族がマコトを後押しするせいで余計に調子乗っている。その犠牲に侍女たちがなっているのだろう。
「なんか暗い雰囲気」
「そうですね。なんか侍女さんたちも避けているようですし」
初めてくるミルさんとクラリスさんが感じるくらいだ。かなりどんよりとしている。そんな事を感じながらようやく辿り着いた謁見の間。
「入るよ」
と許可を得ようとせずに中に入ろうとするマコト。兵士たちは困った表情を浮かべながらも何も言わない。これも普通となってしまっているのか。アルとビルは苦い顔をしているし。
僕たちも仕方がなく付いて中に入ると
「おお、これはこれはマコト殿! よくぞ帰ってこられた!」
と太った大臣がマコトへ擦り寄る。あの人はデンベル公爵だったか。シュバルツ家と対立していた公爵家だ。今までは公には姿をあまり出さなかったのになぜこんなところに。しかも陛下たちをさしおいて。
陛下の方を見ると……昔よりやつれているな。僕の事も含めていろいろとあったのだろう。宰相も同じような感じだ。そしてその隣には……父上が立っていた。……白髪が増えて老けてしまっている。確実に僕のせいだね。申し訳ない気持ちがいっぱいになる。
「それで魔王軍はどうなったのでしょうか? いやいや言わなくてもわかりますぞ。マコト殿が魔王を倒したのでしょう! さすがですぞマコト殿!」
と、1人で勝手に盛り上がるデンベル公爵。それを聞いていたマコトは苦虫を噛み潰した顔をする。
「デンベル公爵よ。落ち着け。マコト殿が何も話せないだろう。それでマコト殿。どうだったのだ?」
陛下も気になるのだろうマコトに確認する。デンベル公爵は鼻で陛下の事を笑いながら元いた位置に戻る。……殴ってやろうか。そんな事を思うが我慢する。
「報告します。私たちは魔王を倒す事が出来ませんでした。逆に……殺されそうになったところを……くそ! こんな事を俺の口から言えるか!」
と、謁見の間を出て行くマコト。そしてそれを追いかけるユフィー。みんなはびっくりした表情でマコトが出て行くのを見守る。
「ど、どういう事だカグヤ殿? なぜマコト殿は出て行ったのだ?」
陛下は、カグヤに聞く。
「私が彼の代わりにご説明します。私たちはメルッセ砦から2キロほどの場所で魔王軍……いいえ、魔王ザガンと名乗る魔族1人と交戦しました。しかし魔王ザガンは余りの強さで私たち勇者3人でかかっても太刀打ちする事が出来ませんでした」
その事に驚きを隠せないみんな。魔王1人で勇者たちが勝てなかったのだ。それは驚くよね。
「ならどうやって助かったのだ? いや、変な意味で聞いているのではないぞ。お主たちが助かったのは喜ばしい事だが、魔王が見逃すとは思えん」
それも陛下がそう思うのは当たり前だ。
「はい。私たちはもうダメだと思った時に彼らが助けてくれました」
そうして僕たちの方を見るカグヤ。リュウジやアルとビルもこちらを見る。すると陛下たちも気になっていたのかすぐに確認してくる。
「おお、その者たちが助けてくれたのか。フードを被っているから何者かと思ったぞ。もし差し支えが無ければフードを脱いでもらいたいのだが良いか?」
と陛下が確認してくる。緊張するなぁ。僕はそう思いながらもフードをめくる。そして
「初めまして、私の名前は魔王エルフリートと申します。グランディーク陛下よ」
と挨拶をする。取り敢えず初めて会った体にしておこう。話はこの謁見が終わった後だ。しかし
「なっ!」
「え、エル!」
と陛下と父上には直ぐに気付かれてしまった。姿が変わっていても気付かれるのは嬉しいね。
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