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今後の相談(3)

 僕たちは、騒動のあと数分程歩いて砦内の会議室へと辿り着いた。中には机を中心として、20人程が座れる量の椅子が向かい合うように並べられていた。僕たちは、勇者側と僕たち側になって向き合うように座る。


 座って少しすると外が騒がしくなってくる。なんだ? カグヤたちも怪訝な顔をして扉の方を見る。そして勢い良く扉が開けられ、入って来たのは


「カグヤ! どうして中に入れている!」


「ちょっとマコト、落ち着きなさいよ」


 とキレているマコトと、宥めようとするユフィーだ。そして後ろには


「騒がしいぞマコト。少しは落ち着けよ」


 松葉杖を突いたリュウジが入って来た。見る限りは足は大丈夫そうだね。さすがはマリアさん。そんな事を思っていると


「お前! なんで我が物顔で中に入ってんだよ! 他の奴らとも馴れ馴れしいし、一体誰なんだ!」


 と声の限り叫ぶマコト。まだ僕に気づいていないのか。ユフィーも気づいてなさそうだし。それを聞いたカグヤたちは呆れた顔をしている。なんで気づかないんだって雰囲気だ。


「マコトまだ気付かないの?」


 とカグヤが聞く。


「何がだ!」


 マコトはやっぱり気付かない。まあ、マコトやユフィーの中ではその程度だったのだろう。昔は悲しかったが、今となっては全く気にならない。周りに大切な人がいてくれるからだろうか?


「僕の正体が知りたいんだっけ。僕の名前は魔王エルフリート。昨日魔王になったばかりの新米魔王さ。そして魔王になる前の名前は……エルフリート・シュバルツさ。久し振りだね、マコト、ユフィー」


 僕は2人に向き合ってそう答える。それを聞いた2人の反応は


「はぁ? 嘘つくんじゃない! あの負け犬は人族だぞ! なんで魔族になってんだよ!」


 とキレるマコト。うるさいなぁもう。ユフィーの方は


「え? うそ……でも言われてみれば確かに面影か……」


 と戸惑った様子だ。


「まあ、僕が誰だろうと君たちには関係ないよね。それより話し合いを始めようよ。全く話が進まない」


 マコトやその部下が乱入ばかりするから話が進まない。僕がそういうとリュウジは「それもそうだな」と言い中に入りマリアさんの元へ行く。どうしたんだ?


「俺の足を直してくれたのはあんただって聞いた。あんたがいなければ元には戻らなかっただろうとも言われた。ありがとう」


 と頭を下げる。マリアさんは素っ気ない感じに「別にいいわ、エルに言われただけだし」って返すが、耳が少し赤くなって照れてる。可愛いね。


 そしてリュウジも勇者側の席に座り立っているのはマコトとユフィーのみとなった。


「なんでリュウジまで座るんだ! こいつは魔族だぞ。敵対するはずの魔族になんで馴れ合っているんだよ! それでも勇者か!」


「それじゃあ聞くけどあなたの中での勇者って何? 魔族を倒せば何をやってもいいのが勇者なの? 私やリュウジが思っている勇者っていうのは、守るべきもののために敵と戦うのが勇者だと思っているのだけれど。そうよねリュウジ?」


「ああ、その通りだ」


 そう言うカグヤとリュウジ。まさか2人が反論してくるとは思わなかったのだろう。顔を真っ赤にしてプルプルしている。マリアさんたちがすると可愛いけど、マコトがすると気持ちが悪い。


「その為なら魔族と組むっていうのか!」


「人間にも良い人と悪い人がいるように、魔族にも良い人と悪い人がいると思うわ。今までは敵対していたから戦っていたけど、そうでないなら無駄に血を流す必要は無いと思うし、協力し合えるならするべきだと思う。それに彼がいなかったら私たちはみんな死んでいた。それは紛れも無い事実よ」


 カグヤがそう言うとリュウジやアルにビルまで頷く。それを見たマコトは


「ぐぬぬ、それなら勝手にしろ! どうなったって俺は責任を取らないからな!」


 そう言い部屋を飛び出すマコト。ユフィーもついて行くのかと思ったら僕を見ていた。なんだ?


「どうして戻ってきたのよ」


「は?」


 僕は質問の意味がわからずに素で答えてしまった。どういう事だ?


「なんで戻ってきたのよ! あなたが戻らなかったらマコトがこんな事にはならなかった! 砦に戻った時のみんなの目線なんて、とても冷たい目で私たちを見ていたわ! 今まではそんな事はなかったのに! それに近衛団だってあなたが捕らえたって聞いたわ! どうしてそんな事したのよ!」


 ……そういう事か。恋は盲目って言うけど、マコトの事を盲信し過ぎて今の現状をわかっていない。ただ、知らぬふりをしているだけかもしれないが。


「それならカグヤたちやあるやビルのような兵士たちが死んでも良かったとユフィーは言うのかい? さっきからカグヤが言うように僕たちが来なければみんな殺されていただろう。それか男だけ殺されて、女は慰み者になっていたか。それでも良かったとユフィーは言うのかい?」


 僕が聞くとユフィーは黙り込んでしまう。


「それに近衛団だっけ? あいつらが何をしていたのか知っているのかい? 僕が見たのは今までやってきた内の極一部だろう。それでも酷いと思ったから僕は捕らえたんだ。その近衛団を連行していく兵士たちの顔をユフィーは見たかい? みんなが一様に喜んでいたよ。それほど嫌われる事を近衛団はしていたんだ。他の兵士たちに聞くと良いよ。何をしていたのかね」


 そこまで言うと、ユフィーは黙って部屋を出て行った。これを聞いて考え直してくれると良いんだけど、無理だろうなぁ。


「大丈夫、エル?」


 僕の事を心配してかマリアさんが寄り添ってくれる。


「うん、大丈夫だよ。ありがとうマリアさん」


 口ではこう言うがやっぱり心の中では堪えていたのか無性にマリアさんを抱き締めたくなった。そしてぎゅ〜と抱き締める。


「ちょ、ちょっとエル! みんなが見てるわよ!」


「うん。でももう少しだけ」


 なんだかんだ言いながらもそのままでいてくれるマリアさん。ありがとう。


 心が落ち着いてきた僕は席に戻り、ようやく話し合いが始まる。


「それでこれからの事なんだけど」


「ええ。私は一旦王都に戻った方がいいと思うの。現状怪我人が多過ぎるし、食料も物資も足りていない状況だしね。補充も兼ねて戻った方がいいと思うわ。リュウジはどう?」


「ああ、俺もその方がいいと思う。ここはここの司令官に任せれば大丈夫だと思うしな。軍の事を陛下に相談しないといけないだろう」


 と2人とも戻る事に賛成のようだ。アルやビルも頷いている。2年ぶりの王都か。……両親にも会っておかないとね。

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