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八年後 13

 まず最初に意見を述べたのは、『サラミではなくイヤミを乗せたピザ』『出木杉君とスネ夫を足して2で割ろうとしたら失敗して出来上がった、ただのスネ夫』『悪いことをしていないフリーザ』など、様々なあだ名をマサキに付けられたことがある男、阿川冬真であった。

「まずボクが気になったのは、新生国語クラブの名称は『国語クラブ Version 2.0 PWFM』なんだよね?『People Waiting For Miki』つまり『未希を待つ人々』なのに、その高山君っていう人は、工藤さんのこと全く知らないわけでしょ?てことは、高山君は別に待ってないわけだよね?それは部長的にはOKなの?」

 そ、そこかよ!と鶴川は心の中で叫んだ。やはりこいつには、『正論おじさんの若い頃』『Mr.融通利かない』『本ばかり読んで空気読まない男』などのあだ名を追加で付ける必要がある…。鶴川はそう思った。

「え、えっとね。その点については、例えば俺が高山君に、『工藤さんって、すっごく魅力的な人なんだよ。地上に舞い降りた天使なんだよ』と、一億パーセント真実である情報を伝えたとするよね?」

「うん」

「で、高山君が『へえー!そうなんですね。俺も会ってみたいなあ』と言ったとする」

「うん」

「その時点で、『未希を待つ人々』つまりPeople Waiting For Miki の仲間入りなわけだよ、高山君も」

「ええー?」阿川は、まるで『今日からイルカは哺乳類じゃなくて魚です』と言われたかのような顔をした。つまり、1パーセントも納得していない顔である。

「ちょっと待ってよ、部長。そりゃ、待ってることにはなるかも知れないけど、想いの深さが全然違うじゃん。ボク達三人とは!マリアナ海溝と路上の水溜まりくらいの差があるよ?」

「…バカモノッ!マリアナ海溝どころじゃないんだよ!地球の中心部まで掘り下げても、まだ足りないくらいの深さだ!」

「だったら、尚更…無理があるんじゃないの。高山君とボク達の想いを同列に扱うのは」

「…やっぱり、そうだよな。やっぱりやめておくか」

 鶴川は真面目な顔でそう言った。そのとき、同じように真面目な顔で思案していた双葉が口を開いた。

「あの…ちょっとよろしいかしら?」

「もちろんだよ、双葉。双葉の意見を聞かせてくれ」

「その高山君という方は、『友達が少ない』って、寂しそうにおっしゃっていたのですよね?」

「うん。そうだよ」

「わたくし…思うのですけれど、もし工藤さんがこの場にいたとしたら、きっと『入部してもらおうよ!友達が少なくて寂しがってるんでしょ?可哀想じゃん!』って、言うと思いますわ。彼女なら、きっとそう言うと…わたくし思いますわ」

「…なるほど。確かにそうだな」マサキは納得の表情で言った。「どこかの正論冷血融通利かない人間とは違って、地上に舞い降りた全宇宙で最も可憐な天使こと工藤さんなら、聖母マリアあるいはマザー・テレサのような優しい顔で、そう言うに決まっている。どこかのスネ夫と違って」

「ちょっと部長!ちょいちょいボクの悪口を混ぜるのはやめてよね!」阿川はまさにスネ夫のように口を尖らせて抗議した。

「ボクだって、部長と小山さんが入部させたいって言うなら、別に異存は無いよ!」

 双葉が笑いながら「スネ夫さんが、異存は無いとおっしゃっていますわ、部長!」と言うと、鶴川は「このスネ夫は、なんだかんだ言いながら根は優しいスネ夫だからね!」と言って大笑いした。

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