表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/103

戦いから日常へ 2

「あ、そういえば俺、今度田辺さんと美術館デートすることになった」

「えっ。そうなの?いいじゃん。最高じゃん、美術館デート」

「田辺さんは美術が好きみたいなんだよ。印象派が好きらしい。で、箱根にある美術館に行こうって」

「てことは、ポーラ美術館かな。あそこは最高だよ」

「日帰りでも行けるよな?」

「行ける行ける。強羅駅から無料の送迎バスが出てるよ」

「俺、バス酔いするからエチケット袋を用意しておかないと。おやつは三百円までだよな?バナナはおやつに入るのか?黒豆の甘煮は?境界線が分からない」

「遠足じゃないんだよ」

「田辺さんに『岩瀬君は好きな画家とか、いる?』って訊かれたから、一応『モーツァルトとゴッホと滝廉太郎です』って答えておいた」

「一応じゃないよ。お前、もしかして好きな作品は『アイネ・クライネ・ナハトひまわり』か?」

「あと岡本太郎も好きだよ」

「そうなのか?初耳だが…どの作品が特に好き?」

「『月の塔』だな。滝廉太郎なら『荒城の太陽』が好き」

「話をややこしくするのがお前の特技だってことは知っていたが、間違え方までややこしいな」

「音楽ならドビュッシーの『月の光』が好きだ」

「…それは合ってるのに、お前が言うと太陽だったような気もしてきて、何が正しいのか分からなくなる」

 俺はこれ以上、岩瀬と会話を続けると精神に悪影響が出ると判断し、退避することにした。

「岩瀬すまん、俺ちょっと二組に行って、工藤さんに(ねぎら)いの言葉をかけてくるわ」

 俺はそう言って、二組に向かった。二組の扉は開いていて、未希は鞄からノートやタブレットを取り出しているところだった。

「工藤さん、おはよう!」

「あ、鶴川君!おはよ!私も今から一組行こうと思ってたとこ!」

「おお。先に来ちゃいました!昨日はお疲れ様でした。そして、あらためて、おめでとう」

「ありがとう!」

「工藤さん、めちゃくちゃ格好良かったよ」

「てへへ…!みんなが支えてくれたおかげだよ。あ、そういえばさ、昨日、青木先生達と一緒に撤去作業したじゃん?観覧用の椅子とかの」

「うん」

「あのとき、田辺さんと話して、ちょっと仲良くなっちゃった。てへへ」

「え、そうなの?」

「うん。田辺さんの方から『工藤さん、おめでとう。すっごく格好良かったよ』って声をかけてくれてね。『私、一組の田辺加奈って言います。鶴川君の友達の、岩瀬君の…あの…』って口ごもってたから、『もしかして彼女さん、ですか?』って言ったら、『…はい』って、顔を赤くして答えたの!可愛いよね!キャハハ!」

「えー!あいつ、そんなこと言ったの?相変わらず大胆だなあ」

「相変わらず?」

「あいつ、岩瀬と初デートしたとき、待ち合わせ場所でいきなり腕を組んできたらしいよ」

「きゃー!大胆っ!岩瀬君、よく気絶しなかったね」

「ギリギリのところで(こら)えたみたいだよ。というか元々、気絶しながら生きてるような感じだからな、あいつは」

「キャハハ!なにそれ〜!」

 俺はそのあとも朝のショートホームルームが始まるまでの間、未希とたわいもない話をした。そういう時間こそが俺にとっては一番大切な、宝物のような時間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ