小学生国語王決定戦・決勝 3
「問題!これから読み上げる文章は、ある二つの慣用句について、A君が説明したものです。その二つの慣用句とは何か、答えなさい」
ほほう…これは面白そうな問題だな。俺は耳を澄ませた。
「この二つの慣用句はどちらも、『空に浮かんでいるもの』を比喩として使っているね。それは漢字一字で現されていて、それぞれの慣用句の頭文字になっている。この二つの慣用句は、意味がかなり近いね」
バシッ!
ボタンを押したのは双葉、鈴木さん、及川さんの三人だった。光ったのは双葉のボタンだった。俺と冬真は同時に「よしっ!」と叫んだ。
「『月とすっぽん』、『雲泥の差』」
双葉はゆっくりと慎重に答えた。正解の音が鳴った。双葉は未希の顔を見て、二人は笑顔で頷き合った。よし、あと一ポイントで紫電に追いつく。
「問題!陰暦で十六日ごろの月のことを『十六夜の月』と言いますが、十七日ごろの月のことは、何というでしょう?」
バシッ!
押したのは双葉と坂本君、秋山さんだった。光ったのは…坂本君のボタンだった。秋山さんのボタンが光っていたら勝敗は決したも同然だったので、俺はかなり肝を冷やした。
「立ち待ち月」
ピンポーン!正解だった。これで紫電が四、成淵が三、早稲山が二ポイントだ。心臓がバクバクして、生きた心地がしない。
「問題!A君は、書き抜きではない記述解答式の読解問題で、『一日中寝ていたから。』と答案を書こうとして『一日中』まで書きました。しかし、それだと指定された文字数に収まらないことに気づきました。ひと文字少なくして収めるためにA君は『終日』あるいは『通日』を用いることも考えましたが、面倒なことが嫌いなA君は、別の方法を選択しました。その選択とは何か、答えなさい」
バシッ!
押したのは早稲山の及川さんだった。
「『中』だけを消した」
ピンポーン!
早稲山に並ばれてしまった。やばい。これはもう、激戦というやつではないか!
「問題!これから、文をひとつ読み上げます。その文のニ音、つまり二つの音だけを変えて、『小僧は一日中寝ていた』という意味を持つ文にして下さい」
ん?また『一日中』?同じ先生がつくった問題なのかな。俺はそう思いながら、読み上げを待った。
「それでは、読み上げます。『ひねくれ小僧は寝ていた』」
バシッ!
ボタンを点灯させたのは未希だった。及川さんと秋山さんも押していたが、コンマ一秒、未希の方が早かった。俺は息を殺して目をぎゅっとつぶった。お願いします!国語の神様…!そんなものいるのかどうか分からないが、とにかくいると仮定して俺は祈った。未希を、お守り下さい!
「ひねもす小僧は寝ていた」
俺は目を開けた。正解の音が鳴り響いた。俺は横にいる冬真の肩をガシッと掴んで揺さぶりながら、「やったぞ!やったぞ!」と叫んだ。
これで紫電学院とわが成淵学院はともに四ポイントとなり、並んだ。
「問題!『重箱読み』である二字熟語を三つ、挙げなさい」
バシッ!
全員の手が動いた。最も早く押したのは早稲山実業の坂本君だった。
「『豚汁』、『竹輪』、『団子』!」
ピンポーン!
「アハハハ!坂本君、面白いなぁ。全部、食べ物で揃えてくるとはね」俺がそう言うと、冬真も「この緊迫した状況の中、癒されるね。アハハ」と言って笑った。しかしよく考えてみると、早稲山も四ポイントになり、三校が一様にリーチ状態で並んでしまったのだ。これは『癒される』などと呑気に言っている場合じゃないぞ!




