小学生国語王決定戦・決勝 2
時田君は決勝戦の開始を宣言し、おもむろに顔を下に向け、問題が書かれている紙を見た。
「問題!上から読んでも下から読んでも同じ音になる言葉や文のことを、何と」
バシッ!
時田君の読み上げの途中でボタンを押したのは、中央の解答席に座っている紫電学院ペアの秋山さんだった。
「回文」
高揚している感じが全く無い声だった。あまりにも淡々としていて、少し怖いくらいだった。
ピンポーン!正解の音が鳴った。
「問題!『突然で、調子はずれなこと』『慌てて間が抜けていること』を表す、『と』から始まる言葉を」
バシッ!
またしても、読み上げの途中で秋山さんが押した。
「頓狂」
ピンポーン!正解だった。
うわ、秋山さん強過ぎる…。なんとか勢いを止めないと、このまま負けてしまう。
「問題!次の和歌は何句切れか、答えなさい」
おっ!句切れの問題か!俺は『きた!!』と思った。なぜなら部室で句切れの勉強をしていたとき、隣りにいた未希に「工藤さんも一応、これ覚えておくといいよ」と言って、句切れに関する重要ポイントを教えたことがあったからだ。
「くちをしや」
バシッ!
反応してボタンを押したのは未希、秋山さん、坂本君の三人だった。光ったのは…未希のボタンだった!よしっ!
「初句切れ」
ピンポーン!正解だった。切れ字について俺が教えたのを、しっかり覚えていてくれたのだ。横で冬真も「よしっ!工藤さん、ナイス!」と喜んでいた。
「問題!『源氏物語』の本質を、『もののあはれ』と」
バシッ!
今度は未希、秋山さん、及川さんの三人が押した。及川さんのボタンが光った。
「本居宣長」
ブブーッ!不正解の音が鳴った。及川さんは『しまった!』という感じで顔をしかめた。
「早稲山実業は不正解でしたので、一回休みとなります。なお決勝戦だけは、不正解だった場合は同じ問題を再び出さずに、別の問題を出します。これは事前にお配りしたプリントにも、ルールとして書かれております。今の問題の正解は『源氏物語玉の小櫛』でした」
時田君がアナウンスした。作品名を答える問題だったわけか。
「問題!『どうにもならない、動きがとれない』という意味を持つ、『の』から始まる言葉を答えなさい」
解答権を持つ四人は最初、固まったまま動かなかった。しかし三秒ほど経ったときに双葉がボタンを押した。
「のっぴきならない」
ピンポーン!
よしっ!双葉、ナイス!俺は小さくガッツポーズした。これで二対二だ!
「問題!子供の『子』という漢字を十二個並べて、」
バシッ!
押したのは未希、鈴木さん、坂本君だった。鈴木さんのボタンが光った。この問題はええと…『宇治拾遺物語』だっけ。嵯峨天皇が出したなぞなぞだな。何て読むでしょう?ってやつ。
「ねこのここねこししのここじし」
ピンポーン!
正解だった。まずい、これで紫電学院は三ポイント獲得だ。あとふたつで優勝が決まってしまう。
「問題!『奏す』『啓す』のような、主に天皇や皇后、神などに対して使われる、対象が限定されている敬語のことを何という?」
バシッ!
押したのは秋山さんだった。
「絶対敬語」
ピンポーン!
ついに、紫電学院が優勝にリーチをかけた。わが成淵学院初等部と早稲山実業にとっては、絶体絶命のピンチである。俺は目を凝らして未希と双葉の表情を見た。いや、表情というよりも、目を見た。二人とも、弱気になっている目では無かった。むしろ『絶対に勝つ』という、強い気持ちがみなぎっている目だった。大丈夫だ、勝てる。俺はそう思った。
「問題!『物惜しみするさま』『けちなこと』を意味する、『や』から始まる言葉を答えなさい」
バシッ!
押したのは早稲山実業の及川さんだった。
「吝か」
ピンポーン!
これでポイントは紫電が四、成淵が二、早稲山が一だ。




