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小学生国語王決定戦・決勝 1

 俺と未希は、冬真達がいるところに戻った。この大会の解答席は体育館のステージ上ではなく、観覧席と同じ高さの競技フロア上に設置されているのだが、決勝に向け解答席は今までと違う配置になっていた。二つずつ寄せて置かれた机と椅子のセットが二メートルほどの間隔を空けて三組置かれ、それぞれのセットの後ろには、記述解答用のホワイトボードも設置されている。その三つのホワイトボードとは別に、右端の解答席よりも更に右の位置に、かなり大きいサイズのホワイトボードが設置されていた。そこには観覧者からもよく見えるよう太い油性マーカーで大きく書かれたトーナメント表がマグネットで貼られていたのだが、俺と未希が戻ったときには、トーナメント表の上に重ねる形で、決勝進出校を記した新しい紙が貼り付けられていた。


決勝進出校


成淵学院初等部(小山・工藤)

早稲山実業初等部(坂本・及川)

紫電学院初等部(秋山・鈴木)


 書かれた文字を見て俺は、『これは、何か凄いことが起こりそうだ。これから観るこの決勝は、間違いなく俺にとって一生忘れないものになるだろう』と思った。俺は目を閉じて、未希と初めて会った日から今までの、色々な出来事を思い出していた。そうだ、俺はどんな未希だって、大好きなんだ。世界で一番、大好きな人なんだ。どんなときでも世界で一番、未希を応援している人でありたい。一番の味方でいたい。俺は!

「決勝戦を行いますので、観覧者の皆さんは席にお戻り下さい。決勝戦に参加する解答者の皆さんは、解答席にご着席下さい」

 青木先生のアナウンスが流れた。その直後、体育館内には『Old James Bonded Bourbon』という曲が結構大きな音量で流れた。この曲は青木先生が大好きな『アメリカ横断ウルトラクイズ』で、決勝戦が始まる前に流れていた曲なのだそうだ。「今回の大会で、俺はあの曲を絶対に使いたい!学校のイベントで非営利なら、著作権の問題も生じないからな!」と興奮して言っていた。なるほど、確かにこれはめちゃくちゃ気分が高揚する曲だ。

 その曲が流れる中、決勝で戦う六人はゆっくりと歩いて解答席に向かった。紫電学院初等部の秋山・鈴木ペアは、準決勝を五対一の圧勝で勝ち抜いて上がってきていた。秋山さんは平均身長くらいの背丈で、楕円形の眼鏡をかけていた。髪は肩くらいまでの長さで、前髪を綺麗に分けておでこが見えている。気が強そうな優等生、という印象を俺は受けた。鈴木さんの方は秋山さんに比べると、話しかけやすい感じに見えた。背丈は秋山さんより少し高く、体型も秋山さんより太めだが、均衡がとれていて綺麗に見える。姿勢もすごくいい。秋山さんは少し猫背に見えた。

 早稲山実業の坂本君は、及川さんと小声で何か話しながら解答席に向かっていた。坂本君は体格が良くて背も高いので、少し頭を低くして及川さんの高さに合わせて話していた。二人ともそれほど緊張している様子は無く、リラックスしているように見えた。どちらかと言うと紫電学院の二人の方が緊張している気がしたが、それも適度な緊張と言える程度だった。

 一番最後に解答席に向かったのが未希と双葉だった。二人は三組の中で一番緊張しているのではないかと俺は心配していたのだが、意外とリラックスした様子で、未希は解答席に向かって歩きながら笑顔で双葉に何か言っていた。

 三組のペアの全員が着席し、読み上げ係の生徒に視線を向けた。やがて大音量で流れていた曲が終わり、会場は静寂に包まれた。

「決勝戦の読み上げ係を務めさせて頂きます、無心学舎初等部の時田(ときた)です。よろしくお願い致します」

 そのあと、時田君は三組のペアの学校名と名前を読み上げ、名前を読み上げられたペアはそれに合わせて観覧席に向けお辞儀した。

「それでは、小学生国語王決定戦、決勝戦を始めます」


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