謎の幸福感!
翌日、一時間目の授業が終わって俺が教室でぼーっとしていたら、誰かが俺の肩をトントンと指で叩いた。振り返ると未希がいた。
「あっ…工藤さん。どうしたの?」
さっきまでぼーっとしていた俺の心は、いきなりドキドキし始めた。それは不意打ちを食らった驚きから来るドキドキであり、また目の前にいる未希に対する純粋なドキドキでもあった。
「えへへ。ねえ、これ見てよ」
未希は俺にノートを見せてきた。そこには『世界一クラブ』の日野クリスの絵が、鉛筆で描かれていた。
「お、これ日野クリスだよね?可愛いじゃん。工藤さんが描いたの?」
「うん!結構上手く描けたから、鶴川君に見せようと思って、来ちゃった」
俺は未希にそう言われたとき、自分でも驚くほどの凄まじい幸福感に包まれた。何なんだ、この嬉しさと楽しさが混ざった、ものすごい幸福感は!!と、叫びたいほどだった。
「えー!めっちゃ嬉しい。わざわざ俺に見せに来てくれるなんて」
俺はそう返答した。俺はこういうときの対応で一番大切なのは、誤解の余地を残さないことだと思っている。照れなどから微妙なリアクションをして、万が一にでも、未希が二度と来なくなったりしたら、絶対に嫌なのだ。だから俺は『嬉しいと思っていること』を明確に伝え、『また来て欲しい!』という俺の気持ちもきちんと伝わるような言葉を選んだ。
未希は俺の言葉を聞いて、嬉しそうな顔をしていた。その顔を俺が見て、未希以上に嬉しくなる。俺は『これは素晴らしい、嬉しさの連鎖だな』などと考えながら、他の自作絵も見せようとページを繰っている未希の姿を眺めていた。いや、眺めるというよりも、もはや俺は見とれていた。『この人ってもしかして、全宇宙で最も可愛い生命体なんじゃないの!?この破壊力、凄過ぎるだろ…』俺はそう考えながら、表面上は少し微笑むくらいで、冷静を装っていた。
未希は自分が鉛筆で描いた『世界一クラブ』の風早和馬の絵を俺に見せながら、「これ、どう?忍びっぽさ、出てるでしょ?」と聞いてきた。確かに目元がキリッとしていて、忍者らしさがよく出ている。俺は「めちゃくちゃいいね、この和馬」と答えた。未希は「鶴川君も和馬君、描いてみてよ!」と言って、俺の顔に自分の顔を近づけた。『おいおい…ただでさえドキドキしてるのに、心臓止まるだろ…!』俺はそう思いながら、「よし、描くか!」と言って鉛筆を握った。
俺が風早和馬の絵を描きながら「あれ?なんでだろう?あんまり和馬感が出てないな」と言うと、「目が少し違うんじゃない?」などと助言してくれた。それを聞いて俺が少し修正する。少しずつ似てきて、未希が喜ぶ。俺は、未希と過ごすこういう時間が本当に大好きだった。その思い出はあまりにも俺の心の中で輝いていて、思い出すととても苦しくなってしまう。今はもう未希に会うことは出来ないのだから。それでも俺は思い出すし、絶対に忘れない。そのきらきら輝く思い出は、未希が俺にくれた贈り物であり、俺にとって何よりも大切な宝物なのだから。




