熾烈な戦い 2
「問題!漢数字の『三』が含まれている四字熟語を、三つ挙げなさい」
バシッ!
求是学舎の中嶋さんがものすごい速さでボタンを押した。速いし、早いというわけだ。
「『三者三様』、『戯作三昧』、『三三五五』!!」
ピンポーン!正解の音が鳴る。未希と双葉は一瞬、「しまった!」という顔をした。
「問題!『魔女の宅急便』の作者は?」
バシッ!
今度は鴨居さんが押した。
「角野栄子!」
ピンポーン!
あっという間に追いつかれてしまった。そのあと、両校はともに一ポイント獲得し、三対三という状況になった。俺は「おい岩瀬!追いつかれちゃったよ」と言って横を見たが、いつの間にか岩瀬と田辺は非参加者のための応援席に移動しており、俺達のそばから消えていた。冬真を見ると、祈るような表情で未希と双葉のペアを見つめている。
「問題!六歌仙を五十音順に並べると、最初は誰になる?」
バシッ!
未希と鴨居さんが、ほぼ同時に押した。光ったのは…未希のボタンだ!
「在原業平!!」
ピンポーン!音が鳴る。正解だ。ついに、マッチポイント。あと一ポイントだ!
「問題!谷川俊太郎の詩『朝のリレー』の中で、メキシコの娘が朝もやの中でバスを待っているのは、カムチャツカの若者が何をしているときでしょう?」
バシッ!今度は双葉が押した。ボタンが光る。
「きりんの夢を見ているとき!」
ピンポーン!正解!
「やったぞ!!勝った!!」
俺は冬真を見てそう言ってから、すぐに未希と双葉に視線を向けた。二人は両手を合わせて大喜びしていた。求是学舎の二人は、全力で戦った結果なので悔いはないという感じの、さっぱりした表情をしていた。そして二組のペアはともに解答席から立ち上がり、歩み寄って笑顔で握手をした。俺は、なんて素敵な光景なのだろうと思った。
そのあと未希と双葉は俺達のところに来て、俺達とハイタッチをして勝利の喜びを分かち合った。未希と双葉の嬉しそうな顔を見ることが出来て、俺はとても嬉しかった。
「冬真、俺達も頑張らないとな!」
「うん!必ず勝とうな!」
冬真の表情には緊張も混ざっていたが、それよりも戦いに向けて燃えている気持ちの方が勝っているように見えた。
そのあと、抽選でAブロックの七番目から十二番目になったペアの三試合が同時に行われた。そしてついに、Bブロックの一番目から六番目までのペアの試合が行われるときがやってきた。俺と冬真が、早稲山実業初等部と対戦するのである。早稲山実業初等部のBブロック出場ペアは少し離れたところにいて熱心に何か話し合っており、挨拶を交わすことが出来たのは試合開始の直前だった。柔道をやっていそうな体格の良い男子と細身でショートヘアの女子の、男女混合ペアだった。
「成淵学院初等部の鶴川と阿川です。今日は対戦できて光栄です。よろしくお願いします」
俺がそう挨拶すると、体格の良い男子の方が
「早稲山実業初等部の坂本と及川です。こちらこそ、このような大会に参加させて頂き光栄です。よろしくお願いします」
と礼儀正しく挨拶してくれた。俺達はゆっくり歩いて、解答席へ向かった。俺はかなり緊張していた。




