未希&双葉、出陣!
準決勝に進むための第一試合はAブロックで六試合、Bブロックでも六試合、合計十二試合行われるわけだが、全ての試合が一斉に行われるわけではなく、三試合ずつ四回に分けて行われることになっていた。最初に行われるのは、トーナメント表の一番から六番までのペアが戦う三試合だ。未希と双葉の名前が書かれた紙は五番目に引かれたので、最初に行われることになった。試合前、俺達は最初四人一緒にいたのだが、未希と双葉は求是学舎初等部の二人に挨拶をしに行くと言って、俺と冬真から離れていった。
問題を読み上げるのはそれぞれの参加校から来た、解答者とは別の生徒で、公平性を確保するために、自分の学校ではない二校の対戦で問題を読み上げる決まりになっていた。同じ理由で問題そのものも、自分の学校の先生が作った問題は出されないようになっていた。「いよいよ…始まるな」冬真が緊張した顔で俺に言った。「ああ。めちゃくちゃ緊張してきた。俺たぶん、自分の試合よりも工藤さんと双葉の試合の方が緊張するわ!心配で!」
「第一試合の問題を読み上げます、早稲山実業初等部の久山です。成淵学院初等部の小山さん、工藤さん。求是学舎初等部の中嶋さんと鴨居さん、よろしくお願いします」
読み上げ担当の生徒が挨拶をした。そしてついに、初戦の火蓋が切られた。
「…問題!作家・三島由紀夫の本名は?」
一瞬、静寂が場を包んだ。俺は『いきなり本名問題かよ!』と心の中で叫んだ。本名問題が出されるなら、夏目漱石か森鷗外あたりだと思っていたが…!
バシッ!
練習のときに見せていた、あの疾風のごとき速さで、未希が早押しボタンを押した。ボタンが光った。
「平岡公威!」
未希が答えた瞬間、皆の視線が出題者の久山君に集中した。
「…正解っ!」
ピンポンピンポ〜ンという、クイズ番組で聞き慣れた正解音が響く。この音は、出題者の手元にある『早押し次郎君』本体に付いている小さな黄色のボタンを押すと出るようになっている。不正解のときは小さな黒のボタンを押すと、「ブブーッ」と不正解の音が出る。
「うわっ!やった!やったぞ!」
俺は興奮して叫んだ。冬真も横でガッツポーズしていた。未希の顔を見ると、緊張したまま、少し微笑んで、ほっと胸を撫で下ろしたような感じだった。双葉は大喜びして、未希に抱きついていた。求是学舎の二人は、『しまった…』という感じの悔しそうな顔をしたが、すぐに『次は必ず正解してみせる!』という闘志が伝わってくる表情に変わった。俺達の近くで未希と双葉を応援していた岩瀬と田辺は、「工藤さん、すごいね」「ほんとだね」「俺なんて、森鷗外の本名の森林太郎を、『しんりん たろう』だと思ってたからね、最近まで」「もう、ヤダ〜!岩瀬君ってば!」などと、楽しそうに会話していた。
「成淵学院初等部さん、一ポイント獲得です。それでは、次の問題に移ります」
俺はゴクリと唾を飲んだ。




