いざ、決戦のとき
俺達は『小学生国語王決定戦』に向け、毎日お互いに問題を出し合った。そして知識を増やすための勉強をして、早押しの練習も繰り返し行った。そしてついに、大会当日を迎えた。
その日、俺は目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。寝ているときも気分が高揚していたのかも知れない。俺が洗面所で顔を洗ってタオルで拭いていると、姉が来て「いよいよだね!頑張りなよ!」と声をかけてきた。姉には大会のことを何度か話していたので、知っているのだ。俺は「うん、ありがとう!何か一問、出してみて!」と言った。
「『古今和歌集』は、誰の勅命で編纂された?」
「醍醐天皇」
「正解!…ちょっと簡単過ぎた?アハハハ」
「朝から自信喪失したら大変なんで、むしろ有難かったです!」
俺は少しおどけてそう言って、ダイニングに向かった。軽めの朝食を済ませて、俺は制服に着替え、駅に向かった。
学校に着き、会場である体育館に行くと、俺達の応援をするために岩瀬と田辺が来てくれていた。
「マサキ!いよいよだな!応援してるから頑張れよ!俺の応援は効果バツグンだから安心してくれ。二〇一六年のアメリカ大統領選挙では、当時幼児だった俺はヒラリー・クリントンを応援していたし、ワーテルローの戦いではナポレオンを全力で応援していた。本能寺の変では信長を応援して…」
「岩瀬!お前、頼むから応援しないでくれ。他の参加校を全力で応援してくれ、頼むから」
「え?応援しなくていいの?遠慮深い奴だな。もしお前が優勝したら、うちの母親に頼んで、お前にもドードー鳥Tシャツを買ってもらってプレゼントするからな!頑張れよ!ドードー鳥が一羽だけプリントされてるやつと、三羽のやつ、どっちがいい?」
「…どっちも全力でいらないよ。言っとくけど、ニホンカワウソTシャツもいらないからな?」
俺達がそんな会話をしていると校門の方から、紺色のブレザーを着た、いかにも頭の良さそうな小学生の集団がこっちに向かって歩いてきた。先頭にいた眼鏡をかけた色白の男の子が、俺に握手を求めてきた。
「はじめまして。僕達は律己館小学校の者です。僕は律己館小学校文芸部部長の鷲山隆則です。素晴らしい大会に参加させて頂けること、光栄に思います。お互い頑張りましょう。よろしくお願いします」
俺は彼の真っすぐな目の迫力に、一瞬たじろいでしまったが、すぐに気を取り直して「こちらこそ、よろしくお願いします。僕は成淵学院初等部の国語クラブ部長、鶴川マサキです」と挨拶をした。
「フフフ…うちの鷲山部長は、模試の国語で全国一位の実力者だからね…覚悟しておいた方がいいよ」
鷲山君の後ろにいた律己館の生徒がニヤニヤしながらそう言ったが、すぐに鷲山君が「おい、やめろ。そういう失礼な発言をする奴は出場メンバーから外すぞ」と厳しく注意した。俺は、鷲山君は優秀なだけでなく人間性も立派なんだな…と思った。




