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早押し特訓!

 『小学生国語王決定戦』は早押しクイズ形式で行われるとのことだったので、俺達は早押しの練習もした。参加校に配られた大会概要プリントに『早押しボタンは、K社の「早押し次郎君・二人対戦用」を使います』と書いてあったので、俺達はお小遣いの中から少しずつお金を出し合い、親に頼んでネット通販で『早押し次郎君・二人対戦用』を購入してもらった。この二人対戦用は、直径十センチほどの二つの丸いボタンが、出題者が手元に置く本体と有線で接続されている。早く押された方のボタンが光るという仕組みだ。本体にはリセットボタンが付いていて、それを押すと光が消える。二対二で対戦する本番もこれを使うので、一人にひとつボタンがあるわけではない。二人一組のペアの前に、ひとつボタンが置かれることになる。俺達の早押しの練習は、実際に一人がクイズを出し、二人が解答者になる形で行った。

「…勅撰和歌集のうち、収録されている和歌の数が千百十一首のものといえば…」

 冬真が問題を読み上げる。未希が疾風のごとき速さで、机上の消しカスを払い除けるようにボタンを押す。そういえばクイズ好きの青木先生が以前、「消しカスが世界で初めて発生したのは一七七〇年だ。その年、イギリスの化学者ジョゼフ・プリーストリーが消しゴムを発明して、世界初となる消しカスが発生したんだ」と教えてくれた。はっきり言って何の役にも立たない知識なのだが、そこが逆にいい。

「く、工藤さん…あなた、早押しの才能が絶対ありますわよッ!凄過ぎますわッ!」

 双葉が驚嘆して言った。

「キャハハハ!そ、そうですか?照れますね」

 未希は嬉しそうに笑った。俺も冬真も練習してみたが、確かに未希が圧倒的に一番だった。いくら知識があっても早押しで負けると解答できないので、早押しの技術は極めて大事である。また、問題文が読み上げられている途中で押してもルール違反にはならないので、どのタイミングで押すかも重要だ。どんな問題なのか途中で推測して押すことも当然アリなのだが、推測が間違っていたらマイナス一ポイントになるうえに、一回休みになってしまう。かなりの度胸が必要だ。

 指が少し痛くなるくらい俺達は毎日、練習した。そして知識を少しずつ増やしていった。俺だけでなく、きっと他の部員達もそうだったと思うが、早押しの練習も勉強も、全然苦では無かった。むしろ、とても楽しかった。俺達は、本が好きで、国語が好きで集まった仲間だ。だから、全て楽しく感じられた。これがもし、強制されて、やらされていることだったら、かなり苦痛だっただろう。どんなことでも、「好き」がまず最初にあるっていうのは、最強なんだ。

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