新たなる挑戦 1
双葉が研究発表をした翌日の放課後、俺が未希と一緒に部室に行くと、珍しく顧問の青木先生がいて、冬真や双葉と話をしていた。
「あれっ。青木先生、珍しいですね!『幽霊部員』もとい、『幽霊顧問』なのに!」
俺が冗談めかしてそう言うと、青木先生は笑いながらこう言った。
「鶴川、工藤。ちょっと大事な話があってな。まあ、座ってくれ。」
俺は、何か悪い話じゃないかと思い、少し不安な気持ちで椅子に座った。
「実は、いま小山や阿川には少し話したんだが、今度、明鏡学園小学校の寺崎先生の発案で、小学生国語王決定戦が開催されることになった」
俺と未希は固まって、目を丸くした。
「こ、国語王…ですか?」
「そうだ。国語の王ということだ。もちろん名付けた寺崎先生自身も、国語に『王』などいないし、必要無いことは重々分かっておられる。あの人はそんなバカじゃないんだ。ただ、あの人特有のユーモア精神で、わざとふざけた名称にしただけなんだ。名作というのは、『王者、勝者を讃える』ようなものではなく、むしろ、うなだれて悲しみに暮れる者に、寄り添うものだ。『山月記』のようにな」
「確かに、そうかも知れませんね」
「寺崎先生という人は、そのことをよく分かっている人だ。そのうえで、あの人はとりあえず国語が大好きな人間を集めて、盛り上がりたいだけなんだよ。アハハハ!結構、お茶目な人なんだ。だから、俺と酒を呑んでいるときに盛り上がってね。俺も『それ、やりましょうよ!』ということになったんだ」
「…は、はぁ…。なるほど。」
俺は『おいおい、酒の勢いで決定するなよ!』と思ったが、俺も国語が好きなので、気持ちは分かるような気がした。
「で、うちの国語クラブの部員は全員、参加するんですか?というか、その決定戦って、全国規模なんですか?」
俺はとりあえず、そう訊いた。
「全員、参加してくれると助かる。二人ずつペアを組んで、二対二で戦う形にしようと思っている。全国規模でやれるわけないだろ、アハハハ!俺と寺崎先生の二人で言い出したものだからな。そんな大規模でやることは出来ないよ。でもな、今のところ二十校くらいの私立小学校の国語の先生に声をかけて、十校以上から前向きな返事をもらっているんだ。公立は色々と制約があるだろうと思ってな。それで、一校につき二ペア、つまり四人参加してもらおうと思ってる。会場は俺が校長先生に頼み込んで、うちの学校の体育館を使わせてもらうつもりだ。多分、日曜日に開催することになるだろう」
「なるほど…。僕は別に構いませんよ。なんか、面白そうだし。冬真と双葉はどう?」
「ボクも別に構わないよ。参加するよ」
冬真があっさりと答えた。
「オーッホッホッホッ!わたくしも構いませんことよ!参加させて頂きますわッ!」
双葉もそう言って承諾した。
「工藤さんは、どう?嫌じゃない?」
俺がそう訊くと、未希はニッコリ笑って、こう答えた。
「私も、参加します!楽しそう!」
「そうか、良かった!ありがとう。どんな類の問題が出されるのか等の詳細は、後でプリントにして渡すよ。決定戦の概要をまとめたプリントを作って、参加校にも配るつもりなんだ。じゃあ、そういうわけで、よろしくな!」
そう言って青木先生は職員室に帰っていった。




