姫君の考察
「く、工藤さん、分かったって…犯人と同じ名前をもつ学生が誰なのか、分かったの!?」
俺はゴクリと唾を飲み込んでから、そう訊いた。
「はい!正解かどうか分かりませんけど、多分、正解だと思います!」
「どういう推理か、聞かせて!工藤さん!」
冬真が興奮した様子で言った。
「は、はい…私はまず、向井大地という名前をじっと眺めていたら、大地の『地』が、地球の『地』に見えてきたんです。同じ字だから当たり前なんですけど、とにかく『地球』という言葉を『大地』から連想したんです。それで、他の人達の名前をあらためて見てみたら、水上奈津恵さんの、『水』は、『水星』かな、と思ったんです!
「なるほど。でも、徳田冬樹と鎌田健一郎は?この二人の名前には太陽系の惑星は無いよね…あ、あっ!」
俺は、そのとき『部首だ!』と気づいた。
「そうなんです!一見無いように思えるんですけど、よく見ると、樹と鎌の部首は、『木星』の『木』と、『金星』の『金』なんです!それで私、犯人と同じ名前なのは徳田冬樹だと分かったんです!」
「えっ、どういうこと?四人はみんな、名前の中に含まれる漢字や部首によって太陽系の惑星に当てはめられることは分かったけど、なんで徳田冬樹ひとりに絞ることが出来たの?」
「一人だけ『期待している』人物がいる、それは誰かっていう問題だったじゃないですか、この謎解き問題って。『期待』を、『固体・液体・気体』の『気体』に変換して考えるんですよ!四つの惑星の中で、気体なのは…」
「木星だ!!つまり、徳田冬樹というわけか!!」
俺は興奮して叫んだ。
「そうなんです!どうですか、双葉さんっ!」
俺達三人は、一斉に双葉に視線を向けた。双葉は顔を下に向けて床に視線を落としてから、肩を震わせて「フフフ…ククク…!」と小さく笑った。そして、勢いよく顔を上げた。
「オーッホッホッホッホッ!!!さすが!!さすが、このわたくしの可愛い妹的存在である工藤さんですわッ!!!正解っ!正解でございますわ〜ッ!!オーッホッホッホッホッホッ!!!」
双葉はそう叫んで、未希のもとに駆け寄り、背後から、座っている未希を抱きしめた。
「わたくしの作った謎解き問題を、目の中に入れても痛くないほど可愛い工藤さんに解いて頂けたこと、とっても、とっても嬉しくて…わたくし、本当に幸せでございますわ〜ッ!!!」
抱きしめられて嬉しそうに照れている未希と、本当に幸せそうな双葉の様子を、俺と冬真は静かに微笑みながら眺めていた。
「工藤さん、お見事!さすが、わが国語クラブの大型新人だね!」
冬真はそう言って未希を讃えた。
「本当に凄いよ!工藤さん」
俺もそう言って、名探偵・未希を称賛した。この国語クラブは、いつもこういう温かさで満たされている。そして今ここは間違いなく、編入してきた未希にとって居心地のいい、安心できる『居場所』になっている。俺はそのことが何よりも嬉しかった。そして、そのとき俺は『いつか未希をヒロインにした物語を書こう。どんなときも、未希が安心して帰って来られる温かいお家のような物語を…』と、あらためて決意した。




