部員達の考察
双葉が俺達に渡した原稿用紙のコピーに書かれていたのは、そこまでだった。俺は双葉に訊いた。
「これ、本当は続きがあるわけだよね?とりあえず一度ここで読むのをやめて、推理してっていうこと?」
「オーッホッホッホッ!さすがは部長、鋭いですわねッ!その通りでございますわッ!皆様、この怪事件の真犯人が誰なのか、推理してみて下さいませっ!」
やはりそういうことだったのか。俺達は双葉に促され、推理を始めた。この部はミステリー研究会では無いのだが、なんか面白そうだし、やってみるかと俺は思った。
「えーと、まず四人の学生の氏名と発言内容を整理すると、こうなるな」俺はそう言って原稿用紙のコピーを片手に、ホワイトボードにこう書いた。
徳田冬樹「わあ!本当ですか?嬉しいなあ」
水上奈津恵「きゃ〜!嬉しい!約束ですよ?期待してますからね!」
鎌田健一郎「俺、フランス料理って初めてですよ!楽しみ!」
向井大地「俺、エスカルゴ食べたい!」
「ボクがまず気になったのは、水上だけが『期待』という言葉を使っていることだよ。この言葉は真犯人だけが該当する『期待している』という条件に使われている言葉、そのものだからね。重要なんじゃないかな」
冬真はそう言って、双葉の顔を見た。双葉は何も言わず、ニヤニヤしていた。
「でも、それを理由にして水上が真犯人ですって言っても、不正解なんだよねきっと。そんな単純な理由なわけはないし」
俺がそう意見を述べると、冬真は「確かに、それはそうだね」と言って再び考え始めた。
「徳田冬樹と水上奈津恵は、名前に『ふゆ』と『なつ』が入ってるよね。つまり四季のうちのひとつだ」
冬真はそう指摘した。俺もそれは気づいていたが、四人のうち二人が当てはまってしまうのでは、一人である真犯人の特定には繋がらない、と考えた。
「工藤さんは、何か気づいたこと、ある?」
俺は未希にそう聞いてみた。未希は「う〜ん…」と言って、困った顔をして小首をかしげた。俺は『うわっ!!困った顔、めちゃくちゃ可愛い!!首を少し傾けただけで、気絶してしまいそうなくらい可愛い!!ほんと何なの、この生き物はっ!!』と心の中で叫んだ。
「単なる直観なんですけど、発言の内容はあんまり関係無いような気がするんですよね。名前に…何かありそうな気がします」
未希はそう言って考え続けていた。
「確かに、発言内容を比較したときに『一人だけ違う』っていうのは、水上だけが『期待』という言葉を使っていることと、向井だけが『エスカルゴ』と具体的なフランス料理を挙げていることくらいなんだよね」
冬真はホワイトボードの文字を凝視しながら、そう言った。
「『田』という漢字が名前に入っているのは徳田と鎌田の二人か。漢数字が入っているのは鎌田健一郎だけだな。一番期待しているってことか?いや、双葉がそんな適当な謎解きを俺達にさせるわけはない。何かもっと、みんなが納得出来るような明確な根拠があるはずだ…」
俺はそう考えを述べて、ひたすら考え続けた。いくら考えても、『これだ!』という真犯人特定の根拠は見つからなかった。そのとき、未希が突然、いつもより少し大きな声で言った。
「あっ!分かったかも知れません!わたしっ!」
俺と冬真は目を丸くして未希を見た。『この人もしかして、全宇宙で最も可愛いうえに、推理の才能まであるの!?』と俺は思った。




