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遠回りの理由

 ここまでこの物語を読んだ人は、「岩瀬が告白したんだし、マサキもそろそろ告白するのかな」と思ったかも知れない。でも俺は未希と出会ってから離ればなれになり、連絡も取れなくなってしまうまで、一度も告白はしなかった。その理由を言葉で説明するのはとても難しい。俺は未希が「ライン、交換しよ?」と言ってくれたときも、断ってしまった。それは今でも毎日、俺を苦しめている人生最大の後悔だ。あのとき、もし「いいよ」と言っていたら…どんなに楽しい毎日を俺は過ごしていたんだろう。毎日メッセージのやり取りするとか、そんなんじゃなくてもいい。そんな贅沢は言わない。ひと月に一度だけでもメッセージのやり取りすることが出来ていたら、俺はどんなに幸せだっただろうか。未希が差し出してくれたものを、俺は断ってしまった。そして、気がついたときには未希と離ればなれになり、連絡をとる方法は何も無くなってしまった。

 俺は多分、「自分にはそんな資格は無い」と考えていた。俺は普段は別に、極端な真面目人間ではない。ダメなところもたくさんある。でも俺は未希に対しては、超が付くほど真面目に向き合っていた。その理由はもちろん、死ぬほど大切に思っていたからだ。表面的には冗談を言い合ったりしていたが、俺は一番深い根本の部分で、未希に対しておそろしく真面目だった。だから自分のことさえも未希に近づく悪い虫だと思って、切り捨てたのかも知れない。そうすることで未希を守れた部分も確かにあったと思う。だから、あの判断は正しかったのかも知れないと思うときもある。あの頃の俺にとって未希は、『絶対に守らないといけない存在。絶対に守りたい存在』だった。それはもちろん今も変わらないが、あの頃はそのことにとにかく必死で、自分の本当の気持ち、心の奥底にある気持ちに気づく余裕が無かった。後になってから俺は、気づいてしまった。つまり、「俺はこれからもずっと、未希と生きていきたいんだ」という気持ちに。俺は未希のことが大好きだということは自覚していたが、大統領を警護するシークレットサービスのような感じで、めちゃくちゃ大好きな未希を守り切ることの方に重点を置いていて、そういう自分の本心に気づいていなかった。

 こうやって説明をしても、きっとこの物語を読んでいる人は「…よく分からないな。大好きなのに、なんで断った?さっぱり分からない」と思うだろう。そう思う気持ちは、よく分かる。俺自身も分からないのだから。この物語は、俺がその分からない部分を解明するための旅のようなものだと思って欲しい。こんなことを言ったらほとんどの人達はバカバカしいと笑うだろうけど、俺が今まで生きてきた全てをかけて書くこの物語には、未希を守る力があると俺は信じている。俺はこの物語を書くことで、自分の「後悔」に必ず打ち克つ。そして必ず、未希の心を本当の意味で守ってみせる。

 未希は「調子がいいこと言わないでよね!断られたときのこと、忘れてないんだからね!許さない!」と言うかも知れない。俺はとにかく、謝るしかない。俺にとって物語を書き続けることは、未希に謝り続けることでもある。

 俺はいつか、大人になった未希と、あの頃のようにたわいもない話をして、笑い合いたい。あの頃と同じ場所には戻れないけど、また好きな本の話をして、一緒に絵を描きたい。そのために俺は、この物語を書き続ける。

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