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未希との対話

 未希は少し考える様子を見せてから、急に「これ、見て下さい!未希が描いたんですよ!」と言って、笑顔で自分のノートに描かれた女の子のイラストを俺に見せた。後になって分かったことだが、未希はそうやって明るく振る舞うことで、自分が抱える寂しさを隠そうとするときがよくある。

「おお〜、可愛い絵だね」

 俺はそう言ったあと、「工藤さん、俺には敬語使わなくていいよ?同じ六年生なんだしさ」と言った。未希は一瞬、きょとんとした顔をしてから、「じゃあ…鶴川君。鶴川君も絵を描くのが好きだって聞いたんだけど、本当なの?斎藤さんが、『鶴川君は読者クラブの部長だけど、絵も得意なんだよ』って言ってたんだけど…」と聞いてきた。「え…ああ、まあ、少しは…」と答えると、「じゃあ、お願いっ!このホワイトボードに、すみれちゃんの絵、描いてくれない!?」と、合掌しながらお願いしてきた。

「そ、そんなに必死にお願いしなくても、それくらい全然、いいよ」

 俺がそう返答すると、未希は「ほんと!?ありがとう!!じゃあ…これ!!このすみれちゃんがいいの!」と言いながら『世界一クラブ』の挿絵を指差した。俺は未希の嬉しそうな笑顔を見て、絶対に上手に描いて、喜ばせてあげたいと思った。俺は気軽に描くようなふりをしながら、美術の授業で絵を描くときの十倍くらい気合を入れて五井すみれの絵を描いた。絵が完成すると未希ははしゃいで、とても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

 その日から、未希がリクエストをして、俺がそれに合わせてホワイトボードに絵を描くことが、二人の習慣になった。日によっては先に俺と未希が部室に来て、冬真と双葉がまだ来ていないときもあったので、そういうときはクラブ活動を開始する前に絵を描いた。部室に着いて俺が椅子に座ると、未希が鞄からライトノベルをいそいそと取り出す。そのたびに、「今日はどのキャラクターをリクエストしてくるのかな」と、俺は温かくて幸せな気持ちになった。こんな時間が永遠に続けばいいのに…。月並みな言い方だが、俺はいつもそう思っていた。そう思うのと同時に、俺はそれが不可能であることも理解していた。だから、今という時の輝きを、目の前で微笑む未希の輝きを、心に深く刻みつけておこうと思っていた。

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