研究発表、そのあと
国語クラブでは、毎週水曜日は部員の中の一人が研究発表をすることになっていた。今までは部員三人でローテーションを組んでいたので、ひと月に二回発表をすることになる部員もいたわけだ。四人になったので、今後はそのようなことは、かなり少なくなるだろう。未希が入部したその日は水曜日で、冬真が研究発表をすることになっていた。
「えー、ボクは今回、『無常観』をテーマにしていくつかの本を選び、読んできました。それらはどれも長い作品なので、全てを読んだわけではありませんが、それなりに理解出来た部分もありますので、ボクなりに解説を行いたいと思います」
冬真はそう言って、『平家物語』や『方丈記』について語り始めた。俺もそのふたつの作品の冒頭部分は、読んだことがある。古文なので現代語訳と照らし合わせながら読んだが、古文の方が圧倒的に美しく感じられた。どのように言葉を並べれば最も美しい文になるか、徹底的に考えて作られた文に違いないと思った。
「…ふたつの作品に共通する無常観というのは簡単に言うと、『永遠に続くものなど、無い』ということです。ボクはそう解釈しました。皆さんは、どう思いますか?」
冬真は皆に問いかけた。俺を含めた他の三人は、しばらく沈黙していた。何しろ難しいテーマなので、何を言えばいいのか俺は考えていた。口火を切ったのは双葉だった。
「オーッホッホッ!!!わたくしの美は、永遠でございますのよ!!オーッホッホッ!!…というのは冗談でございまして、わたくし、人間というのは限りある命だからこそ輝くのだと、そう信じておりますわ」
笑いをこらえているんじゃないかと思って未希の方を見ると、意外にも真面目な顔で双葉を見て、何か考えている様子だった。
「無常観っていうのは仏教の思想なんだよね。古文ってのは、仏教や儒教を土台にしているものが多いからね」
俺はとりあえずそう言ってから、「工藤さんは、どう思う?」と未希に問いかけた。
「ええと…そうですね…永遠に続くものは無いっていうのは、何か寂しい気もしますね。アハハ…」
未希はそう言って少し笑った。俺にはその笑顔が少し寂しそうに見えた。しかし今日、初めて参加した未希にそれ以上語らせるのは酷な気がして、「うん、確かにそうだね。俺もそう思うな」と言って、自分の意見をしばらく述べた。そのあとも議論は続いたが、未希は遠慮していたのか、あまり発言をしなかった。研究発表の後はそれぞれ読者や文法の勉強をしたり、皆で雑談をしたりして過ごした。
「わたくしは家庭教師が家に来ますので、そろそろ帰らせて頂きますわ!オーッホッホッ!!!」
まず双葉がそう言って、部室を出て行った。そのあと冬真も「そろそろボクも帰るね」と言って退出し、俺は部室で未希と二人きりになった。俺は、今なら大丈夫だろうと思い、「工藤さん、さっき無常観について話していたときに『寂しい気がする』って言ってたけど、どうしてそう思うの?」と訊いてみた。




