表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/98

研究発表、そのあと

 国語クラブでは、毎週水曜日は部員の中の一人が研究発表をすることになっていた。今までは部員三人でローテーションを組んでいたので、ひと月に二回発表をすることになる部員もいたわけだ。四人になったので、今後はそのようなことは、かなり少なくなるだろう。未希が入部したその日は水曜日で、冬真が研究発表をすることになっていた。

「えー、ボクは今回、『無常観』をテーマにしていくつかの本を選び、読んできました。それらはどれも長い作品なので、全てを読んだわけではありませんが、それなりに理解出来た部分もありますので、ボクなりに解説を行いたいと思います」

 冬真はそう言って、『平家物語』や『方丈記』について語り始めた。俺もそのふたつの作品の冒頭部分は、読んだことがある。古文なので現代語訳と照らし合わせながら読んだが、古文の方が圧倒的に美しく感じられた。どのように言葉を並べれば最も美しい文になるか、徹底的に考えて作られた文に違いないと思った。

「…ふたつの作品に共通する無常観というのは簡単に言うと、『永遠に続くものなど、無い』ということです。ボクはそう解釈しました。皆さんは、どう思いますか?」

 冬真は皆に問いかけた。俺を含めた他の三人は、しばらく沈黙していた。何しろ難しいテーマなので、何を言えばいいのか俺は考えていた。口火を切ったのは双葉だった。

「オーッホッホッ!!!わたくしの美は、永遠でございますのよ!!オーッホッホッ!!…というのは冗談でございまして、わたくし、人間というのは限りある命だからこそ輝くのだと、そう信じておりますわ」

 笑いをこらえているんじゃないかと思って未希の方を見ると、意外にも真面目な顔で双葉を見て、何か考えている様子だった。

「無常観っていうのは仏教の思想なんだよね。古文ってのは、仏教や儒教を土台にしているものが多いからね」

 俺はとりあえずそう言ってから、「工藤さんは、どう思う?」と未希に問いかけた。

「ええと…そうですね…永遠に続くものは無いっていうのは、何か寂しい気もしますね。アハハ…」

 未希はそう言って少し笑った。俺にはその笑顔が少し寂しそうに見えた。しかし今日、初めて参加した未希にそれ以上語らせるのは酷な気がして、「うん、確かにそうだね。俺もそう思うな」と言って、自分の意見をしばらく述べた。そのあとも議論は続いたが、未希は遠慮していたのか、あまり発言をしなかった。研究発表の後はそれぞれ読者や文法の勉強をしたり、皆で雑談をしたりして過ごした。

「わたくしは家庭教師が家に来ますので、そろそろ帰らせて頂きますわ!オーッホッホッ!!!」

 まず双葉がそう言って、部室を出て行った。そのあと冬真も「そろそろボクも帰るね」と言って退出し、俺は部室で未希と二人きりになった。俺は、今なら大丈夫だろうと思い、「工藤さん、さっき無常観について話していたときに『寂しい気がする』って言ってたけど、どうしてそう思うの?」と訊いてみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
鶴河マサキさまの作品を拝読いたしました。 まだ読みはじめではありますが、学園ものは好きなのでブクマさせていただきました。 とても特徴的な文体に惹かれるものを感じております。 ゆっくり読ませていただきま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ