岩瀬のデート報告 1
翌日の月曜日、俺は岩瀬からどんな報告が聞けるのか楽しみにしながら学校へ向かった。あの田辺の様子からしても、二人で出かけて悪い方向に事が運ぶ可能性はほとんど無いだろうと俺は思った。もしかしたら付き合い始めているかも知れない。
俺は人が少ない朝の教室の雰囲気が好きで、いつも早めに学校に行く。だからその日も俺が教室に着いたとき、まだ岩瀬も田辺も来ていなかった。俺はいつものように鞄から本を取り出し、まだ生徒が三人しか来ていない静かな教室の中で読み始めた。
時間が経過し生徒が一人増え、また一人増え、十五人くらいになったとき、ついに岩瀬が姿を現した。岩瀬は、俺に「事情聴取」をされることは分かりきっているのだから先に自分から語ろうと思ったようで、俺のそばに来て「マサキ、ラウンジ行こうぜ」と言ってきた。その表情は少し微笑みをたたえているように見えた。
「で、どうだったんだ?田辺とのデートは」
ラウンジに着き、岩瀬の隣に座った俺はさっそく訊いた。
「まあ、そう焦るな。順を追って話すから」
「また、それかよ!」
「まず服の件だが、かなり悩んだ末に、俺は着ていく服を決定した」
「五歳の妹さんの、アンパンマンのシャツだろ?」
「そんなわけあるか!ドードー鳥のTシャツにした」
「え〜!う、嘘だろ?頼む、嘘だって言ってくれ」
「本当だ。だが、安心してくれ。ドードー鳥が一羽だけプリントされてるやつじゃなくて、三羽の方を選んだから」
「…どこに安心要素があるんだよ」
「サーベルタイガーは、サメと同じで威圧感があるから選択肢から外した。最終候補に残ったのはドードー鳥Tシャツ、ニホンカワウソTシャツ、トキTシャツの三つだった」
「…頼むから絶滅動物以外のTシャツも用意してくれ」
「前にも言ったが、全て母親が買ってきたものなんだ。俺は自分で服なんて買わないからな」
「ていうか、服の話なんてどうでもいいから田辺とどうなったのか早く教えてくれよ。あらためて告白して、付き合い始めたりしたのか?」
「というかな、実は最初から凄い展開になったんだよ」
「えっ!何、何?どんな展開?」
「待ち合わせ場所で俺が待ってたら、薄紫と白のチェックに白い丸襟の、めちゃくちゃ可愛いワンピースを着た田辺が現れてさ、」
「うん、うん。で?」
「『おはよ!…行こ!岩瀬君!』って言って、いきなり俺の腕に自分の腕を回して、くっついてきたんだよ!そして、そのまま歩き出したんだよ!グイグイ俺を引っ張って!」
「えー!田辺のやつ、大胆だな!」
俺はそう言いながら、『田辺のやつ、岩瀬にもらった手紙と俺からの情報で岩瀬からの好意に絶対の自信をもって、大胆な行動に出たんだな』と内心、思った。
「俺もう、ビックリしてさ。心臓止まるかと思ったよ。私服の田辺、めちゃくちゃ可愛いし…俺、多分あのときタコみたいに顔赤くなってたと思う!」
「水族館に行くわけだし、タコになっといた方がいいだろ。水族館にいるタコと仲良くなれるかも知れないし」
俺はそう言って笑った。




