田辺の相談 3
田辺に蹴りを入れられた翌日、俺は田辺に「次の休み時間に、またB棟の裏に来て」と言われ、しぶしぶ再びB棟の裏に向かった。
「まったくもう…今日は何だよ?ラプンツェルになれば岩瀬に好かれるって教えてやっただろ。もっとも、お前はラプンツェルというよりスーサイド・スクワッドのハーレイ・クインだけどな!」
俺が迷惑顔でそう言うと、田辺はまた俺の尻に蹴りを入れてきた。しかも今度は二発だ。
「いててて…!冗談だよ、冗談!」
「鶴川君、冗談言ってる場合じゃないのよ!私、根本的な問題に気づいてしまったのよ!」
「え?あ、分かった。そもそもラプンツェルは私みたいに暴力的じゃない!ってことでしょ?」
「それもあるけど、もうひとつあるのよ!」
「それもあるって…とうとう認めちゃったよ。で、何なの?もうひとつって」
「私、髪がショートなのよ!全然、髪長姫じゃないのよ!」
「はぁ?別にいいだろそんなの。五年生のときからショートなの?」
「うん」
「それなら尚更、問題無いだろ。岩瀬はショートのお前に惚れたわけだから。むしろ伸ばさない方がいいくらいの話だろ」
「でも、岩瀬君てラプンツェル好きなんでしょ?」
「それは確かに言ってたけど、ラプンツェルよりお前のことの方が好きだよ絶対」
「え!?なんでそう思うの!?」
「だって、お前のことを話すときの岩瀬ときたら…いつも必死だし、夢中って感じだよ、お前に!」
「…!」
俺の言葉を聞いた田辺は、『今まで生きてきた中で一番幸せ』という感じの顔になった。嬉しさが隠しきれず、溢れ出てしまっている。
「ちょっと!鶴川君!恥ずかしくなるようなこと…急に言わないでよねっ!!」
田辺は顔を赤くして抗議したが、言葉とは裏腹に顔はニヤケてしまっている。分かりやすい奴だ。
「鶴川君、他に何か、岩瀬君に関する情報持ってない?なるべく岩瀬君に詳しくなった状態で遊びに行きたいのよ!」
「岩瀬に関する情報?何だよそれ。そうだなぁ。えーと…あ、あった!」
「何?何?」
「海の生き物には興味無いって言ってた」
「え?じゃあ、なんで水族館に私を誘ったのかな」
「そんなの決まってるじゃん。お前と一緒なら、場所なんてどこだっていいからだよ。どこでも天国になるってこと。お前が隣にいれば」
「…!」
田辺の顔は再び真っ赤になった。
「ちょ、ちょっと!鶴川君!!ストレート過ぎる!もうちょっとオブラートに包んだ言い方してよね!恥ずかしいじゃん!」
「アハハハ!あ、そう言えばさ。田辺さんは、岩瀬にどんな服装で来て欲しいの?何か希望とか、ある?岩瀬はそのことでめちゃくちゃ悩んでるよ」
「岩瀬君と遊べるなら、服装なんて何でもいいよ、別に」
「ドードー鳥のプリントTシャツでも大丈夫?五歳児用の、アンパンマンとハートマークのシャツとか」
「…それはさすがにちょっと…」
「だよな。分かった。伝えておく!」
「いやいや!伝えないでよ!ここでの会話は全て内密にしておいてよ?」
「あ、オーケー、オーケー。分かってます」
「あ、そう言えばさ。鶴川君最近、しょっちゅう二組の女の子と話してるよね。国語クラブの新入部員の子」
「え?ああ、そうだね。工藤さんでしょ?」
「もしかして、鶴川君あの子のこと好きなの?」
「うん。好きだよ」
「…!そんなにすぐ認めちゃうんだ!」
「田辺さんもすぐ認めたじゃん!」
「そうだけどさ。…で、どんなところが好きなの?教えてよ!」
「全てだよ」
「…!凄いね!情熱的だね〜!」
「人を好きになるって、そういうもんだろ。他人から見たら欠点に思えるようなところも好きになるし、むしろ、そういう部分こそ一番大好きになるんだよ」
「あ〜、分かる〜!」
「お互い、頑張ろうな!恋愛成就を目指して!」
「だね!」
そう言って俺と田辺は、時間差を作って別々に教室に戻った。




