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田辺の相談 1

 岩瀬から相談を受けた日の昼休み、俺は再び未希をラウンジに誘って雑談をした。そして昼休みが終わり教室に入ろうとしたとき、入り口の近くで待機していたと思われる田辺加奈に小声でこう言われた。

「あの、ちょっと…鶴川君。五時間目の授業が終わったら、B棟の裏に来てくれない?相談したいことがあるの」

 俺は田辺加奈と会話をしたことはほとんど無かったので、とても驚いた。そのとき教室に岩瀬はいなかった。後から分かったことだが、田辺は岩瀬がいないことを確認してから俺に声をかけていたのだ。

 指定された時間になりB棟の裏に行くと、そこには果たして田辺加奈がおり、このあと、驚くべき展開が待っていた。俺がもし脚本家養成所の講師だったら、「こんな偶然、あるわけないでしょ。書き直し!」と絶対に言うような展開である。

「あっ。鶴川君、来てくれてありがとう!ごめんね、急に呼び出しちゃって。驚いたでしょ?」

「うん。そりゃまあ、ちょっと驚いたかな。どうしたの?何か用?」

 俺は決して自信家ではないがそのときは正直、『まさか告白してくるんじゃないだろうな』と少しだけ思ってしまった。わざわざこんな所まで呼び出してする話って、他にあるか?と思ったのだ。

「あのさ、鶴川君って、岩瀬君と結構仲がいいよね?」

「…まあ、確かに、それなりに」

「休み時間によくヒソヒソ話してるし、私と岩瀬君が二人で遊びに行くことになったの、知ってるでしょ?」

「…知ってるのバレてたんだ…」

「そんなのバレバレだよ!それは別にいいの!で、相談したいのはね、洋服のことなの」

「…ちょっと待って。今、なんて言った?」

「洋服!よ・う・ふ・く!」

 俺は耳を疑った。こんなことって、あるだろうか。恋が始まるかも知れない二人の両方から、個別に同じ相談をされたのである。家に帰ったら姉がドードー鳥Tシャツを着ていたとしてもここまでは驚かないというくらい、俺は驚いた。

「…オーケー!分かってる。分かってる。和服と洋服で迷ってるっていう話じゃないってことは、分かってる」

「…何の話?私は、岩瀬君の洋服の好みが知りたいのよ。あ、岩瀬君が自分で着る洋服の好みじゃないよ?どういう服を着ている女の子が好きなのかっていう話ね!」

「え?ちょ、ちょっと待って!えーと、田辺さんは、遊びに行く日、岩瀬の好みの服装をしたいってこと??」

「うん」

「えええ〜!」

「そんなに驚くこと?アハハハ」

「まさかとは思うけど、岩瀬のこと、好きなわけじゃないよね?」

 俺はゴクリと唾を飲んで、地球の存亡に関わる重大な質問を科学者にしているかのような顔で訊いた。

「え?好きだよ」

「…!」

「アハハハ!ビックリした?クラスのみんなには言わないでよ?」

「…い、いつから好きなの?いつ好きになった?」

「五年生のとき。知ってると思うけど、岩瀬君と私、同じクラスだったの。で、岩瀬君が教科書を忘れたことがあってね。先生に言われて、私が見せてあげたの。そのとき、岩瀬君すっごく顔を赤くして恥ずかしがっててね。なんか可愛い人だなと思って、意識し始めたの」

「…!そ、その事件からか…!」

「え?その事件って、知ってたの?その出来事」

「知ってるも何も、岩瀬もそのときに好きになったって言ってたぞ!」

「えー!そうなんだ?嬉しい!」

 田辺は顔をくしゃくしゃにして喜んでいた。俺は、こんなことってあるのだろうかと驚愕し、震えていた。

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