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岩瀬の相談

 未希が研究発表をした翌日、三時間目の授業を終えて俺が机の上を整理していると、岩瀬が来てラウンジに俺を誘った。その日はよく晴れていて、ラウンジは心地よい暖かさと明るさに包まれていた。

「マサキ、お前に相談したいことがある」

「相談?田辺さんのことか?」

「えっ!なんで分かった?」

「…いや、誰でも分かるだろ。お前と言えば田辺さんなんだから。犬でも猫でもミジンコでも分かるよ」

「…そうか。それでな、相談したいことと言うのは、服のことなんだ」

「フクって、洋服?」

「そうだ。もちろん洋服のことだ。令和の時代に和服でデートしないだろ、普通」

「…いや、別に和服か洋服か確認したわけじゃないのだが」

「…そうか。で、俺は何を着て行けばいいんだ?田辺さんとのデートのとき」

「別に普通の服でいいだろ。ダサいかどうか気になるなら、無地のシンプルな服を選べばいい」

「無地が無いんだよ。俺が愛用している半袖Tシャツ、長袖Tシャツ、スウェット…全て、あり得ないくらいダサいプリントが入っている」

「…あり得ないと思いながら愛用するなよ」

「母親が買ってくるんだから、着るしか無いだろ。それでな、水族館に行くわけだから、カニかエビ、もしくは魚のプリントがいいだろうと思ったのだが、無いんだ。ドードー鳥とかサーベルタイガーのやつならあったが、水族館でドードー鳥ってどう考えてもおかしいだろ?」

「…お前のお母さんは絶滅動物マニアなのか?」

「俺は思ったんだが、サメのTシャツとかだと、威圧感があって田辺さんが可哀想だ。何の魚がベストか検討した結果、イルカだという結論に達した」

「…イルカは魚じゃなくて哺乳類なのだが」

「細かいこと言うなよ。猿とかライオンに比べたら魚だろ?」

「…ライオン比べたら魚って、どういう理屈だよ。で、イルカのTシャツ買いに行くのか?」

「いや、デート資金も準備しなきゃいけないし、そんな余裕は無い。お前、イルカTシャツ持ってないか?貸して欲しいのだが」

「…持ってるわけないだろ!というか、絶対やめた方がいいぞ、その案。フラれる可能性が高まるだけだ」

「えっ!まじかよ…じゃあ普通にサーベルタイガーにするか…」

「全然普通じゃないだろ、それ」

「ああ…俺は一体、どうすればいいんだ!」

「シャツは無いの?襟が付いててボタンが縦に並んでる、普通のシャツ」

「シャツ…あったかな…あったような気はするが…。あ、妹はシャツたくさん持ってる」

「妹さんの?どんなシャツだよそれ。妹さんがオーバーサイズで着てて、シンプルな無地ならなんとかいけるかも知れないが…」

「アンパンマンのシャツだよ。ハートマークもたくさん付いてる。五歳だからな」

「…もう、それ着ろよお前。腹立ってきたから」

 俺はそう言って、岩瀬がアンパンマンのシャツを着ている姿を想像し、吹き出した。

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