姫君の物語 2
「それにしても、めちゃくちゃ寒いね。あいつが起こした吹雪、一体どうなってんだよこれ」
俺はガクガク震えながら言った。
「でも、メリットもあるよ」
ミキテリーナが靴ひもを結び直しながら返答した。
「メリット?どんな?」
「スーパーでアイスを買ったとき、ドライアイスを貰わなくても大丈夫」
「何だよその、どうでもいいようなメリット。ていうか、冷え過ぎてアイスがカチコチになって食べられなくなるぞ、これ。全てのアイスがあずきバーみたいになるよ多分」
「ちょっと!素敵なファンタジー作品なんだから、商品名とか出さないでよ。現実に引き戻されちゃうでしょ」
マサキリウスとミキテリーナがそんな会話をしていると、フタバテリーナが怒って近づいてきた。
「ちょっと!放置しないでよ!私が主役みたいな感じの場面なんだから」
「うるさい!私をただの女剣士だと思ったら大間違いだよ?私、魔法使いでもあるんだから!」
ミキテリーナはそう言って、真っすぐ伸ばした右手の人差し指で空中に大きな円を描きながら叫んだ。
「立て!火柱!」
その瞬間、凄まじい勢いで巨大な火柱が立った。
「うわ、熱っ!離れないと火傷しちゃうよ、これ。大阪の通天閣くらいはあるじゃん、この火柱」
マサキリウスが避難しながら言った。
「ちょっと!ファンタジーの雰囲気壊すような比喩はやめて〜!」
「え?そう?『天に通じる楼閣』だよ?かなりファンタジーだと思うけど」
「そういう問題じゃなくて。アリエンデース王国とか魔法使いとか言ってる世界なのに、大阪がある時点でおかしいのよ。『もうかりまっか?』みたいな世界観じゃないのよ」
「ちょっと!また私のこと放置してるっ!私の起こした吹雪に対抗するための火柱でしょ?それ!私の反応とか、ちゃんと描かないとダメでしょ」
あ、はい。ごめんなさい。地の文である私の役割でした。火柱を前にして一瞬ひるんだフタバテリーナであったが、「おのれ!生意気なっ!」と叫んで腕を激しく回転させ、吹雪を更に激しいものにした。マサキリウス、ミキテリーナ、トウマンモス以外の街の人々はひとり残らず家の中に避難していた。アリエンデース王国は冬になるとかなり気温が下がる地域にあったので、分厚い外壁で寒さに備えている家がほとんどであった。しかしマサキリウス達が闘っているコクコクラフという街には、外壁が薄い家が一軒だけあった。ケチリマース家の家である。建てたときに費用が安く済むように、薄くしてしまったらしい。「浮いた分のお金で、旅行に行ける。賢いでしょ、俺」などとケチリマース家の主人は言っていたらしいが、このような状況になってみると、賢いどころか「良い子のみんな、こういう大人になっちゃいけませんよ」と言いたくなるくらいの愚かさである。




