双葉の研究発表 2
「ボクの考えでは、これは擬人法ではありませんね!ポイントになるのは、傍線部の前の部分ですよ!」
冬真の発言に促され、俺達は傍線部の少し前の部分を見た。そこには登場人物である名探偵・暗智大五郎と、ソファ君のやり取りが書かれていた。
「ソファ君、なぜ君はそんなにフカフカなんだい」
名探偵・暗智大五郎はソファに質問した。
「生まれつきだソファ〜」
暗智はそのとき、こう思った。ソファが俺に大切なことを教えてくれた、と。
「この部分を読むと分かるように、ソファ君は完全な主体として、実際に言葉を発しています。擬人法というのは比喩の一種のはずなのに、比喩になっていないんですよ。本当に、普通にしゃべって教えてるだけなんです。なのでこれは、擬人法とは言えません!」
完璧な解説であった。俺は『おお…さすが、我が国語クラブが誇る秀才、阿川冬真!!』と思ったが、口に出して褒めると調子に乗るのが目に見えているので、「なるほど、確かにそうだね」とクールに答えた。
「阿川君の説明、すごく分かりやすかった〜!」
未希がそう言って褒めると、双葉も「確かに素晴らしい解説でございましたわッ!わたくし、同じ国語クラブの部員として、誇りに思いますわッ!」と称賛した。
「次は、十五行目をご覧くださいませっ!」
双葉の言葉に従って十五行目を見ると、『暗智は心の底から感謝した。ソファ君に。』と書いてあった。
「これ、句点で二文にした形の倒置法だな。あんまり上手じゃないけど、正直」
俺はそう言って双葉に視線を向けた。
「オーッホッホッ!!確かにその通りですわッ!皆様、実はこれ、表現技法についての研究発表をするために書いた小説なのですわッ!だから、取ってつけた感が隠しきれていないのでございますわッ!」
おいおい、自分で認めちゃったよ…。
「でもこれ、その『取ってつけた感』が、逆にちょっと可愛くて、いいですね!」
未希はそう言って優しくフォローし、ニコニコしていた。可愛過ぎてもはや、地上に舞い降りた天使としか思えない。
「最後の方にも傍線が引いてあるね。えーと、『鉄のフレームを内に秘めたソファは、鉄の意志で困難を乗り越えた。』か。これまた、めちゃくちゃややこしいな!」
俺は困惑して言った。
「ソファ君はソファなわけだから、おそらく『鉄のフレーム』というのは、実際にあるのだろう。だから、まずここは比喩じゃないな。『鉄の意志』、ここは暗喩だろ」
俺は真面目に分析して、そう解説してみた。
「ボクも同意見です」
冬真がそう言うと、双葉はニヤリとわらって俺達を見た。
「お見事ですわッ!お二人とも!さすが、国語王国の選ばれし勇者ですわッ!国王も称賛しておられますわッ!」
「何の話だよ。二枚目に進もうぜ」
俺達はその後、他の傍線部についても意見を交わし、様々な表現技法についての理解が深まったところで、実際にそれらを用いて面白い短文を作ったりして盛り上がった。国語が好きな仲間が集まって、「真面目にふざけて盛り上がる」国語クラブでの時間が、俺は大好きだった。




