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双葉の研究発表 1

 俺が姉に『黒鍵』のCDを借りた二日後の水曜日、国語クラブで双葉の研究発表が行われた。俺達は双葉の研究発表のテーマが何なのか、全く知らない状態だった。

「オーッホッホ!!皆様、ようこそお越しくださいましたッ!!わたくしが小山双葉でございます!!」

 いや、知ってるし…。ていうか毎日ここに来てるのに、今更『ようこそ』って何だよ!と、俺はさっそく心の中で突っ込みを入れた。

「わたくしの本日の研究発表のテーマは、ズバリ!!『表現技法』でございますわッ!!!」

「表現技法…って、つまりあれかな、擬人法とか、対句法とか?」

 俺は双葉にそう訊いた。

「その通りでございますわッ!部長、あなた今、『そんなのもう知ってるし、新鮮味無いな』とお思いになりましたわねッ?」

「…す、鋭いな、お前…」

「ご安心くださいませッ!この小山双葉が発表するからには、け〜〜っして皆さまに退屈な思いはさせませんことよッ!『永遠にこの研究発表を聴いていたい…』そう思わせるくらいの発表をすると、皆様にお約束いたしますわッ!」

「そんなにハードルを上げて、大丈夫ですか?小山さん。フフフ…ボク達の評価は厳しいですよ?」

 冬真が不敵な笑みを見せながら行った。

「さっそく、始めたいと思いますわッ!!」

「…って、無視かよッ!」

 冬真が突っ込むのを見て、未希は「キャハハハ!二人とも、おもしろ〜い!」と笑っていた。双葉は、俺達三人にプリントを二枚ずつ配った。それは双葉が書いた小説をコピーしたもので、『海底の貴婦人殺人事件』とは別の、まだ俺達が読んだことのない作品だった。タイトルを見ると、『人間ソファ』と書いてあった。また江戸川乱歩のパクリかよっ!

「まず、三行目をご覧くださいませッ!『ソファの中から、声が聞こえてきた。「エビチリ食べたいソファ!エビチリ食べたいソファ!」と。』」

「あ、分かった。これ、反復法でしょ?」

「さすがは鶴川部長、お見事ですわッ!これこそ、他ならぬ反復法なのですわッ!」

「でもこの、語尾に付いてる『ソファ』って何なの?」

 俺は疑問点について率直に訊いた。

「あら。お分かりになりませんこと?よくアニメなどで、常に語尾に同じ言葉を付けて話すキャラクターがいらっしゃいますわよね?あれですわッ!」

「え〜!『〜ソファ』は分かりにく過ぎるだろっ!ていうか…てことは、もしかしてこのソファって、乱歩の『人間椅子』みたいに中に人間が入ってるわけじゃなくて、ソファ自体が生きてるって設定?」

「オーッホッホ!!大正解ですわ、部長!ソファ君なのですわッ!」

「うわ〜!やっぱりか!ちょっと待ってくれよ。そうなると、例えば十行目の『ソファが俺に大切なことを教えてくれた』ってところ。ここに傍線引いてあるけど、これ擬人法と言えるのかどうか、めちゃくちゃややこしい話になるぞ!」

「そう!それで良いのですわッ!ややこしいからこそ議論が白熱し、深い研究になるのですわッ!」

「キャハハハ!双葉さん、かっこい〜い!」

 困惑する俺の横で、未希は楽しそうに手を叩いて笑っていた。ひとつだけ確かなことは、『未希は相変わらずめちゃくちゃ可愛い』ということだった。

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