二組への訪問 2
「えへへ。面白かった?他にも、まだあるんだよ!」
未希はそう言って、机の中から水色のノートを取り出して、開いた。そこには自作の短文作成問題が並んでいた。
「自分で問題作っちゃったの〜?」
俺は笑いながら言って、読み始めた。
『指定語句:もしも』
『もしもツルカワ部長が総理大臣だったら、日本が滅びる。』
「ちょっと!ひどいなこれ!まあ、確かに滅びそうだけどさ!」
俺は大笑いした。
『指定語句:なぜなら』
『ツルカワ部長はゴキゲンな顔で部室に向かった。なぜなら、部員の工藤がそこにいるからだ。』
「…っ!えっと、あの、これは…!いや、確かに正解…というか図星なんだけどさ…!」
俺が赤面してアタフタしていると、未希は「キャハハハ!鶴川君、顔赤いよ?」と言って笑った。本当に小悪魔だ、この人!
『指定語句:たまゆら』
「えっ!急に難しいの来たね!『たまゆら』なんて、どこで知ったの?」
「双葉さんがこの前、休み時間に二組に来て、和歌の本を貸してくれたの。それを読んでいたら、『たまゆら』っていう言葉の解説が載ってて。勾玉が触れ合う微かな音が由来だって書いてあって、すごく素敵だなと思ったの。『ほんのわずかな時間』っていう意味なんだよね?」
「うん!そうだよ。俺もこの言葉、大好きなんだ」
俺は、未希と自分が同じ言葉に惹かれ、気に入っていることを知ってとても嬉しかった。
『たまゆらの 休み時間にツルカワ部長 次の授業に恋ふべきものか』
「何これ凄い!本歌取りじゃん!柿本人麻呂の!」
「キャハハハ!その本に解説も載っててね。素敵な和歌だなと思って、勝手に改造してみたの!」
「そういうの『本歌取り』って言うんだよ!工藤さん、才能あるよ!」
俺は未希と一緒に大笑いした。
『指定語句:いそいそ』
『いそいそと、イソギンチャクを採りに行く準備を進めた。』
「アハハハ!何これ!ただのダジャレじゃん!」
『指定語句:極めて』
『極めて重大な事実を発表する。ツルカワ部長は、私が休み時間に一組に行くと、かなり嬉しそうな顔をする。』
「…!…えっと…あの…。ば、バレてた?」
「バレバレだよ!キャハハハハ!」
楽し過ぎるし、小悪魔過ぎるし、破壊力が凄過ぎる。俺はそう思った。この圧倒的な可愛さを前に、俺はどうすればいいのか!ただただ、降参するしかない!
「あ、そうだ。私、国語クラブでの研究発表の準備しなくちゃいけないでしょ?テーマは何がいいと思う?」
「う〜ん…そうだなぁ。工藤さんは新入部員だから、余裕をもって準備できるように、俺と双葉の後に発表するスケジュールにしておいたんだ。研究発表は週に一回だから、まだ二週間以上あるよね」
「うん。だから早めにテーマを決めて、しっかり準備したいなと思って」
「めちゃくちゃ偉いじゃん!こんな立派な新入部員が入ってくれて…部長として、感無量ですっ!」
俺はわざとらしく、泣きそうな顔を作って言った。
「ちょっと!部長〜!ふざけてないで、一緒に考えて下さいよっ!テーマ、何にするか!」
「あ、ごめんごめん!え〜と、小説を書くときの、キャラクターの作り方についての研究っていうのはどう?」
「キャラクターの作り方…?それって、どんな感じのことを研究して発表すればいいの?」
「例えば工藤さんは『世界一クラブ』が大好きでしょ?光一やすみれ達って、個性が一人ひとり全く違うじゃん?それぞれどんな個性を持っているのか解説してから、自分が小説を書くとしたら、主要キャラクター達にどういう個性を持たせて、どう書き分けていくか、計画みたいなものを発表するんだよ。この研究発表の面白いところは、後で本当にその小説を書き始めることも出来ちゃうところだよ。どう?ワクワクしてこない?」
俺の話を聞いていた未希は興味津々な様子で、目を輝かせていた。
「決めた!それ、やる!」
話を聞き終えた未希は、満面の笑みで宣言した。俺はもちろん、こう思った。
『可愛過ぎるだろ…!相変わらず…!』




