ラクラミキオアラと物語の宝石箱 46 チョコの国のお姫様
ラクラミキオアラたちを乗せたライオンは、ウシャ・マーレの泉のほとりに無事、着地しました。
魔法でおおきくした懐中時計に乗ったペイズリーはすぐには着地せずに、泉の水面の上を、円を描くように低空飛行していました。懐中時計の後ろに長く伸びる列を作っていた光る石は、ひとつ、またひとつと、泉のなかに落ちていきました。水の底には数え切れないほどたくさんの光る石があり、空にはおおきな月が輝いていたので、石が落ちるたびに跳ね上がり飛び散る泉の水も、きらきらと青白く輝いていました。ラクラミキオアラは、"なんて、きれいなんだろう"と思いながら、その光景に見とれていました。
全ての石が泉のなかに落ちたことを確認したペイズリー3世は、ゆっくりとラクラミキオアラたちのもとに近づいてきました。3世は懐中時計を着地させずに、浮かせたまま、その上にあぐらをかいて座りました。
「めちゃくちゃ綺麗なところだな…!」
ペイズリー3世は目を細めてウシャ・マーレの泉を眺めながら、つぶやきました。泉のまわりは白い砂の砂地でしたが、泉の青い光に照らされて、砂も青白く輝いて見えました。
「ほんと…!ねえ、ペイズリー!この綺麗な砂のうえを歩いてみたいから、早く元の大きさに戻してよ〜!」
ラクラミキオアラがそう言うと、ペイズリー3世は、
「あっ!ごめんごめん!大きさを戻すの、忘れてた!」
と言って笑い、みんなに魔法をかけて、元の大きさに戻しました。
「カシオペイアとカルキノスは、やっぱり砂地が似合うね!!亀と蟹だから!」
ラクラミキオアラが、カシオペイアとカルキノスをナデナデしながら言いました。
「こんな石が落ちてた。すっごく綺麗じゃない!?」
ドイナが、拾った石を手のひらに乗せて、ラクラミキオアラに見せました。
「ほんとだ!泉の底にある青い石とは、違う色だね。光ってるのは同じなんだけど、光の色が違う」
ラクラミキオアラがそう答えると、ペイズリー3世が懐中時計からひょいと飛び降り、懐中時計を砂地に着地させてから、近寄ってきました。
「おれにも見せてよ!」
ドイナが拾った石を見たペイズリー3世は、
「これ、"マージェの石"に似てるな…この、紫と水色が混ざったような光の色が、そっくりだ」
とつぶやきました。
「マージェの石って、何?」
ラクラミキオアラがきくと、ペイズリーは説明をし始めました。
「昔、じいちゃんに見せてもらったことがあるんだよ。その石を使うと、魔法使いじゃない普通の人が、魔法を使えるんだ。何度も使えるわけじゃないんだけどね。5センチくらいの大きさなら、一回。10センチくらいなら二回なの。使い終わると、光らなくなる」
「これ…5センチはあるよね。てことは、これがもし、その"マージェの石"なら、わたしも一回、魔法が使えるってこと?」
ドイナが目を輝かせてききました。
「うん。そういうこと。でも、どんな魔法でも使えるわけじゃないよ?たとえば水をお湯にするとか、ただの石ころをチョコレートにするとか、それくらいの、可愛い魔法だけだよ?」
「石ころがチョコレートッ!?最高じゃんっ!!」
ドイナが興奮してそう言うと、ラクラミキオアラも、
「ほんとっ!!最高っ!!ドイナ!!その石、もっとたくさん拾い集めて、チョコレート大量生産しようよ!!!」
と大興奮して言いました。ドイナは鳥の妖精なのですが、人間の姿になっているときにチョコレートを食べたことがあり、なぜか美味しく感じて、それ以来チョコレートが大好きになっていました。
「決めたっ!!マージェの石をたくさん拾い集めて、チョコレートを大量生産して、ドロシーとモモにも、たくさん食べさせてあげるっ!!」
ラクラミキオアラがそう言うと、ドイナも、
「それ名案過ぎるっ!!ラクラミキオアラ、天才っ!!ねえ、あっちの方にありそうな予感がするよ!!ペイズリー、これ、ちょっと持ってて!」
と言って、拾った石を3世に渡し、走り出しました。ラクラミキオアラも、ドイナを追いかけて走り出しました。そのときペイズリー3世が慌てて、
「あっ、ちょっと待って!!大事な注意事項があるんだけど…!」
と言いましたが、せっかちな二人は既に遠くまで行ってしまっており、ペイズリーの声は全く届きませんでした。
「まずいなぁ…。マージェの石にそっくりな、"ニテルダーケの石"っていうのがあるんだよ。色もそっくりなんだけど、ニテルダーケの方は、よ〜く見ると銀色の砂粒のようなものが混ざっているんだ。ニテルダーケの方だと、百個集めても千個集めても、魔法なんて使えないんだよ。見てる分には綺麗だけど、ただそれだけの石なんだ」
ペイズリーは困った顔をしながら、ドロシーやブリキのきこりたちに説明をしました。そして、ドイナに渡された石に目を近づけて、念入りに観察しました。
「うわっ!!ヤバい!!これ、マージェの石じゃなくて、ニテルダーケの石だっ!!ヤバい!ラクラミキオアラとドイナに、殺されるっ!!」
焦ったペイズリー3世は走り回ってラクラミキオアラたちを探しましたが、全然見つかりませんでした。
ラクラミキオアラとドイナは、ペイズリー3世が自分たちを探していることには全く気づかぬまま、必死に石を拾い集めていました。
「ラクラミキオアラ!!5つ目ゲット!!わ〜い!!わたし、普通のチョコだけじゃなくて、ホワイトチョコも作っちゃお!!」
ドイナが満面の笑みでそう言うと、ラクラミキオアラも、せっせと石を拾いながら、
「わたしなんか、これで7つ目だよ!!わたしは、イチゴ味のチョコ作っちゃうもんね〜!!」
と喜びの声をあげていました。この物語を読んでいるみなさんは薄々気づいていると思いますが、二人が苦労して拾い集めている石は、すべて、"ニテルダーケの石"でした。そうとも知らず、大はしゃぎしながら二人は石を拾い続けました。
「ドイナ、ヤバい!これだけ集めたら、わたし、世界で一番チョコ持ってる人になっちゃうかも!!」
「そんなことないよ!!だって一番はわたしだもん!!見てよ、この量!!さすがに重くて、死にそうだけど!!わたし、チョコの国のお姫様になれちゃうかもっ!!」
二人は、近くに落ちていた大きくて丈夫な木の葉を風呂敷代わりにして、その中に大量の石を入れ、両手で抱えていました。
「はぁ…はぁ…お、重い…!!」
ラクラミキオアラが苦しそうにそう言うと、ドイナは、
「も…もう少しでペイズリーたちのところに着くよ…!頑張ろ…!!はぁ…はぁ…!!」
と言って歯を食いしばりました。
二人を探すことを諦めたペイズリー3世はドロシーたちのところに戻り、恐怖にふるえながらラクラミキオアラたちの帰還を待っていました。
やがて、二人がめちゃくちゃ重い荷物を抱えて、戻ってきました。ペイズリー3世は土下座をして、
「ほんとごめんなさいっ!!!悪気は無かったんです!!本当に!!もちろん、だますつもりも、全く、無かったんです!!!」
と叫びながら二人を迎えましたが、二人にボコボコにされ、全治3ヶ月くらいの重傷を負ったという説があるようです。でも、"いや、いくら何でも、そこまではしていない"という説もあり、歴史家の間では意見が分かれているようです。




