ラクラミキオアラと物語の宝石箱 44 六月の夜空に
「アハハハ!ラクラミキオアラ、お菓子なんてくれなくても、もう加速はしないから大丈夫だよ!」
ペイズリー3世は懐中時計を斜めに傾け、ライオンと同じようにUターンしながら、ラクラミキオアラに向かってそう叫びました。
「ただ、ウシャ・マーレの泉に向かって降下する前に、ひとつ、やってみたいことがあるんだ!」
3世の言葉をきいたラクラミキオアラは、
「何をするって言うのよ〜!頭がクラクラしてるんだから、早く地上に降りようよ〜!」
と、横にいるドイナの肩にしがみつきながら答えました。3世は懐中時計の速度を少し上げて、ライオンの真横に寄せました。そしてラクラミキオアラに視線を向けながら、右手の指をパチンと鳴らしました。
「あれっ!?3世、何かした!?急に気分がスッキリしたんだけど!」
ペイズリー3世はニヤリと微笑んで、何も言わずに再び速度を上げ、ライオンの前に出ました。
「ライオンさん!まだ降下せずに、速度を落として下さい!出来るだけゆっくり、ウシャ・マーレの泉の上を旋回して飛んで下さい!」
ライオンはペイズリー3世を見ながら、うなずきました。背中にいるラクラミキオアラたちは小首をかしげながら、顔を見合わせていました。
「一体、何をするつもりなんだろう。ペイズリー…」
ラクラミキオアラが不安そうにつぶやきました。
「ラクラミキオアラ、一瞬も目を離さずに、よく観ていてくれよ!!これからおれが、幼いころから修行をかさねて身につけた魔法の力を最大限に使って、きみに綺麗なものを見せてあげるから!」
そう叫んだ直後、ペイズリー3世は懐中時計を加速させ、ライオンから少し距離をとりました。そして、両腕を真っ直ぐ伸ばし、手のひらをウシャ・マーレの泉に向けました。3世は上空からウシャ・マーレの泉を見たとき、あることに気づいていたのです。それは、あんなに青白く光っているということは、オグリンダの泉と同じように、水の底に"青白く光る石"があるに違いない、ということでした。
ペイズリー3世はかなり高いところを飛んでいたので、ウシャ・マーレの泉との間には、かなりの距離がありました。"ここまで離れている泉の底の石を魔法で動かすのは、簡単なことじゃない"ペイズリー3世は思いました。"しかも、ひとつや二つじゃない。ものすごくたくさん動かす必要がある…全ての動きをコントロールしながら。…絶対に難しい。だからこそ、挑戦する価値がある"
ペイズリー3世が手のひらをウシャ・マーレの泉に向けて二十秒ほど経ったとき、
「あっ!!」
とドイナが叫びました。泉から、ひとつ、またひとつと、青白く光る石が浮かび上がって、どんどん上昇していることに気づいたのです。
「わ〜!!たくさん上がってきた〜!!」
ラクラミキオアラも叫びました。
たくさんの石が、列を作るように、ミッドナイトブルーの夜空にのぼってきていました。ペイズリー3世は、おおきくて強く光る石だけが浮かび上がるように魔法をかけていたので、その"光の列"をラクラミキオアラたちは、はっきり見ることができました。
ペイズリー3世は、前に伸ばした両腕を、おおきく、ぐるんぐるん回し始めました。すると、光る石の列が、その動きに合わせるように激しく動き始めました。そのときにはもう、光る石の列は、1kmくらいの長さになっていました。激しく波打つように動いた光の列は、やがて列ではなく、切り離された複数のグループになりました。その段階になると、3世は両腕ではなく片腕を、指揮者のように動かし始めました。すると、それぞれの光る石のグループは、文字になっていきました。
「わあ〜〜〜!!!!!」
ラクラミキオアラたちは思わず歓声をあげました。六月のミッドナイトブルーの夜空に、きらきら輝く青い光のメッセージが浮かび上がったのです。
「お誕生日おめでとう!ラクラミキオアラ」




