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ラクラミキオアラと物語の宝石箱 43 はしゃぐ人たちと、気絶寸前の人

「ちょちょちょ、ちょっと待った〜〜!!ライオンさん!!あんな奴の言うこときいちゃダメッ!!!第一、1.56秒で時速180kmなんていう加速をしたら、カシオペイアとカルキノスはどうなるのよっ!!!落ちなければ良いってもんじゃないでしょっ!!ショック死しちゃう可能性も…」

 ラクラミキオアラがそこまで言ったところで、ライオンは"1.56秒で時速180kmの加速"に突入しました。

「ぎゃ〜〜〜!!!!!」

 ラクラミキオアラの叫び声は、亜空間世界の隅々まで(とどろ)きました。お城の地下にあるカラオケルームでカラオケを楽しんでいた執事たちがその声に驚いて、"なんだなんだ!?何事だ!?"と、訳も分からぬまま全員、城の外に避難したことは、今でも語り草になっています。

 ライオンは猛烈な勢いで加速しましたが、カシオペイアとカルキノスは意外にも大丈夫でした。なぜかと言うと、ライオンは三倍の大きさになっていたため、体毛も三倍の長さになっていたからです。一方、もともと人間よりもはるかに背丈の短いカシオペイアとカルキノスは魔法で更に小さくなっていたので、もふもふしたライオンの毛の中で、加速の恐怖を感じることなく過ごせたのです。それに、3世が"絶対に落ちない"魔法をかけたライオンの背中は、空気の流れを全く感じないわけではありませんでしたが、魔法のかかっていない状態に比べると、多少、(ゆる)やかに感じる状態になっていました。なのでドイナやドロシー、モモたちは、"スリルはあるけど、耐えられないほどではない"と思っていました。では、なぜラクラミキオアラ一人が絶叫したのかというと、それは"1.56秒で時速180km"という言葉に惑わされて、もはや、実際に肌で感じていることと心が感じている恐怖の釣り合いが、とれていない状態になっていたからです。

 ペイズリー3世は絶叫するラクラミキオアラを見ながら、"今のラクラミキオアラなら、耳元で「いま、時速500kmだよ」と適当なことを囁いただけで気絶するかも知れない"と思いました。しかし、さすがに可哀想だと思い、そんなことはしませんでした。

 ペイズリー3世は飛行しながら視線を下に向けたとき、暗闇の中で青白く光る、巨大な湖のようなものを見ました。ものすごい速さで飛んでいるため、それはあっという間に後方に流れ、小さくなっていきました。

「ライオンさん!!ストップ!スト〜〜〜ップ!!いま、ウシャ・マーレの泉っぽいのがあった〜!」

 ペイズリー3世がそう叫ぶと、ライオンは徐々に速度を落とし、おおきく弧を描いてUターンしました。ジェットコースターもそうですが、ターンするときは斜めになって、独特のスリル、楽しさがあります。ラクラミキオアラは気絶寸前だったので、もはや"スリルを楽しむ"どころじゃありませんでしたが、ドイナたちは無邪気に「きゃ〜〜!たのし〜い!!」と言って、飛行をエンジョイしていました。ブリキのきこりとかかしは、カシオペイアとカルキノスをそれぞれ両手で抱え上げて、大空からの景色を見せてあげました。カシオペイアの甲羅には、

「ソラヲ トンデイル ナンテ ユメミタイ デス」

 という文字が浮かび、カルキノスの甲羅には、

「イキテイル ジョウタイ デ ソラタカク ノボレル ナンテ!」

 という、ヘラクレスに踏み潰されたあと、夜空に上げられて星座になった蟹ならではのコメントが浮かびました。それぞれが飛行をエンジョイする中、ただ一人ラクラミキオアラだけが、気絶寸前の顔で、こう、つぶやいていました。


「ペ…ペイズリー…も…もう勘弁(かんべん)して…お菓子あげるから…」

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