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自己紹介!1

 国語クラブの部室の中央には、かなり味のある、使い古された大きな木の机が置いてある。昭和の頃からあるんじゃないかと思うくらい古いやつだが、俺はこの机も気に入っていた。

 俺と工藤未希が部室に入ると、その机をはさんで置かれた四脚の木の椅子には誰も座っておらず、部屋の奥にある大きな窓の前に置かれた小さな机のそばに、小山双葉と阿川冬真が立っていた。机の上には、たこ焼き専用のホットプレートが置かれており、実際にたこ焼きが焼かれている最中だった。

 二人は俺を見て、少し驚いたような顔をした。いつも一人で部室に来る俺が、見慣れない女子を連れて来たのだから、無理もない。

 俺は「部室でたこ焼きつくるなよ!先生に見つかったら怒られるぞ!」と一応突っ込みを入れてから、「この子は入部希望者なんだ。仲良くしてあげてくれ」と少し微笑みながら言った。

 無言で未希に視線を向けたまま、冬真と双葉は少し戸惑った表情で会釈した。数秒の沈黙の後、双葉は「あの…もし宜しければ…たこ焼き、お召し上がりになります?」と未希に向かって言った。

「おい、やめろよ!ドキドキしながら初めて部室に来て、いきなり出来たてホヤホヤのたこ焼きを食べさせられる新入部員の身にもなれよ!」

 俺は二度目の突っ込みを入れてから、「じゃあ、それぞれの好きな本や作家を工藤さんに知ってもらうために、自己紹介しようか。あ、まずは工藤さんに自己紹介してもらうのがいいね。」と言って、促すように未希の顔を見た。

「あ、はい…ええと…名前は工藤未希です。六年二組で…好きな本は、大空なつき先生の、『世界一クラブ』です!」

 少し沈黙が流れた後、冬真が「『世界一クラブ』は僕も大好きです。僕は昭和の児童文学も好きなのですが、あれは『令和の「それいけ!ズッコケ三人組」である』と言えますね」と、いつものように自分の知識をひけらかした。こいつは真面目でいい奴なのだが、知識自慢をするところが難点だ。前にそれを指摘したら、「僕がペダンチックだということですか?」と、また難しい言葉を使ってきたので、適当に「そうだよ!」と言ってやったことがある。

「『世界一クラブ』は、わたくしも読んだことがございますわ。個性溢れるキャラクター達がとっても魅力的な、素晴らしい作品でしたわ。オーッホッホ!!…ところで、たこ焼き…そろそろお召し上がりになります?」

 今度は小山双葉が、いつものようにお嬢様属性丸出しの口調で述べた。双葉は家が渋谷区の松濤というところにあるらしい。とんでもない高級住宅街なのだそうだ。そこからロールス・ロイスの後部座席に乗って通学しているという噂があるが、本当かどうかは分からない。ものすごいお嬢様なのにたこ焼きが大好物で、以前、「好きな食べ物はマカロンとチーズフォンデュとたこ焼きでございますわ!」と訊いてもいないのに言っていた。

「たこ焼きはいい加減諦めろよ!…工藤さん、俺も『世界一クラブ』は読んだよ。『100%フラれる大告白!?』って話とかね。あれは本当に面白いね」

 俺はそう言って未希の顔を見た。未希は笑顔で、「皆さんも読んでいたんですね!嬉しいです」と言った。

「じゃあ、次は俺が自己紹介していいかな?俺は鶴川マサキ。六年一組で、好きな本は…たくさんあるんだけど…絵本ならかこさとし先生の『からすのパンやさん』、活字だけの本なら、芥川龍之介とか、小泉八雲、江戸川乱歩あたりが好きだよ。小泉八雲は『耳なし芳一』の作者ね!本名はラフカディオ・ハーン。江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズは本当に最高で、特に『透明怪人』で小林少年が…」

 俺が語りを続けようとすると、双葉が「ストーップ!!!…で、ございますわ!!あなたはいつも、話が長過ぎるのでございますわ!!黙ってたこ焼きをお食べなさい!…ですわ!」と、静止した。




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