ラクラミキオアラと物語の宝石箱 39 通じ合う心
ラクラミキオアラはオグリンダの泉へ向かって歩きながら、"ドロシーとモモに何か質問をしよう"と思いました。二人に質問ができるチャンスなんて、滅多に無いと思ったからです。もしかしたら、二度と無いかも知れない。これから先も二人に会うことはできるのかな…ラクラミキオアラはそう考えて、急に不安になりました。せっかく仲良くなったのに、二度と会えないなんて、悲し過ぎる…そう思ったのです。なのでラクラミキオアラは、まず最初に、そのことについて質問しました。
「ねえ、モモ、ドロシー…。わたしたち、また会える…?一度だけ会って、二度と会えないなんて、嫌だよ、わたし…。ワガママかも知れないけど…」
自分の不安を声に出して話したことで、不安が余計にはっきりしたもの、おおきなものに感じられてきて、ラクラミキオアラは泣きそうになってしまいましたが、なんとかこらえました。
「きっと大丈夫よ。わたし、宝石箱から出てきたときに女王さまと話したけど、あの人、とってもやさしい人よ。『物語の宝石箱』の持ち主である女王さまがやさしくて、宝石箱もあなたのことが気に入っていて、わたしだって、あなたとならいつでも会いたいと思っているんだから、二度と会えなくなる理由は無いわ」
ドロシーはそう言って、やさしく微笑みました。モモも、
「わたしも、ラクラミキオアラとなら、何度でも、遊びたい」
と言いました。
「ありがとう…ドロシー、モモ…ありがとう」
ラクラミキオアラの目は涙で潤んでいました。
そのあと、ドロシーに、カンザスでの普段の暮らしについて質問をしようと考えたりもしましたが、ラクラミキオアラはモモが孤児であることを知っていたので、モモの気持ちを考えて、きくのをやめました。ドロシーがお母さんやお父さんと暮らしていないことも知っていたので、たとえば "お母さんにモモ風の服を作ってもらった" とか、そういう自分の話もしないでおこう、と思いました。
今よりもっと幼かったころからラクラミキオアラはずっと、「ドロシーやモモにもし会えたら、いろんな質問をしたい」と思ってきましたが、実際に会ってみたら、質問なんて、する必要は無いように思えてきたのです。ただそばにいるだけで、心が通じ合っているように感じました。それはドイナやペイズリー3世と出会ったときも、同じでした。最初から、すごく心が通じ合っているように思えたのです。
ラクラミキオアラたちが歩き続けていると、前方に、何か光るものが見えてきました。ひとつの光がひとつの場所で止まって光っているのではなく、こまかい光がたくさん、揺れながら光っていました。
「あれ…月の光に照らされた水じゃないか?水面じゃないか?」
ペイズリー3世が光に視線を向けながら、そう言いました。
「あれが、オグリンダの泉よ!きっと、そうよ!」
ドロシーの言葉に3世とドイナはうなずき、興奮して思わず駆け出しました。モモとラクラミキオアラは、相変わらずカシオペイアのペースに合わせて、ゆっくり歩いていました。ラクラミキオアラが少し笑いながら、
「みんな興奮して、走り出しちゃったね!」
と言いました。
「ラクラミキオアラ、すごい。カルキノスに一番会いたがっているのは、あなたなのに!」
モモは目を丸くしていました。
「だって、カシオペイアを置いてけぼりにしたら、かわいそうだもん!わたし、この子大好きなの!」
そう言ってラクラミキオアラはしゃがみ、カシオペイアの頭をナデナデしました。
「アリガトウ ワタシモ アナタノコト ダイスキデス」
カシオペイアの甲羅に浮かび上がった文字を見たラクラミキオアラとモモは、顔を見合わせて、にっこり微笑みました。




