ラクラミキオアラと物語の宝石箱 38 月下の散歩道
「ま…まさか、ほんとうに甲羅に文字が浮かび上がるカルキノスに会える日がくるとは、思っていませんでしたっ!!すっごく嬉しいです!ありがとうございますっ!!」
ラクラミキオアラは目を輝かせながら女王にお礼を言いました。
「い、いや…別にわたしがそういうカルキノスにしてくれって宝石箱に頼んだわけじゃないから…。『物語の宝石箱』が、不思議な力であなたの望んでいることを感じ取って、形にしてくれたのよ」
女王がそう言うとラクラミキオアラは、
「宝石箱さんっ!!ありがとうっ!!」
と言って宝石箱に抱きつき、ひろげた両手でナデナデしました。
「ちょ、ちょっと…ラクラミキオアラ!それ、神聖な物なんじゃないの!?大丈夫かな、そんな風に抱きついたりして…!」
ドイナが心配して言うと、女王は、
「大丈夫よっ!宝石箱は、ラクラミキオアラのこと、かなり気に入ってるみたいだから。じゃなかったら、甲羅に文字が浮かび上がるカルキノスなんて、出してくれないわよっ!」
と言って笑いました。
「ねえ、ラクラミキオアラ!早くお外に行きましょうよ!」
ドロシーがそう言ってラクラミキオアラの手首をつかみました。
「きゃ〜〜っ!!!!!いま、わたし、あのドロシーに、手首をつかまれてる〜〜ッ!!!」
ラクラミキオアラは大興奮して、また気を失いそうになりましたが、なんとか正気を保ちました。
「わたしも、早く、お外に出たい。行こうよ、ラクラミキオアラ」
モモもそう言って、ラクラミキオアラの反対側の手首をつかみ、ひっぱりました。
「きゃ〜〜〜っ!!!!!!ど、ど、どどどドロシーとモモが、ど、ど、同時に、わた、わた、わた、わたしの…!!!」
ラクラミキオアラはそこまで言って、ついに再び気絶してしまいました。仕方なく女王が再び不思議な力をつかって、ラクラミキオアラの意識を回復させました。
「ラクラミキオアラの気絶コントに付き合ってたら切りが無いから、早く外に行こう!!」
ドイナがそう言うと、ラクラミキオアラは、
「コントじゃないよぉ〜!!本気で気絶したの〜!!」
と突っ込みを入れ、ドイナは大笑いしました。
「じゃあ、ペイズリー。あなた魔法使いよね?亜空間は安全なところだから大丈夫だとは思うけど、万が一、何か危ない目に遭ったら、よろしくね。この子たちのこと、しっかり守ってね」
女王はペイズリー3世の顔を見て、そう言いました。ペイズリー3世は、森の女王に信頼されていることが分かり、とても嬉しくなりました。
「は、はいっ!!!この命にかえても、みんなのことは、必ずこのおれが、守りますっ!!!」
女王はペイズリー3世の言葉に、やさしく微笑んでうなずきました。そして、
「わたしはアデラ、エレナとゆっくりお話をするわ。あなた達、今日はこの城に泊まっていきなさい。泊まってから帰っても、向こうの世界では、当日帰ってきたことになるから大丈夫よ。ドロシーやモモと"お泊り会"なんて、最高でしょ?」
と、ラクラミキオアラたちに言いました。彼女たちは大喜びして女王にお礼を言い、はしゃぎながらエントランスホールの方に向かって歩き始めました。その背中を見つめながら女王は、
「なんて可愛い子たちなのかしら…!」
と、静かにつぶやきました。
ペイズリー3世とドイナはエントランスホールで、魔法使いのシルビアに、タキシードとドレスを元の洋服に戻してもらいました。散歩をしたり遊んだりするには、その方がいいと思ったからです。
城を出たラクラミキオアラたちは女王に言われた通り"オグリンダの泉"を目指し、西に向かって歩き始めました。道は、城に近いところは石畳で、途中から平坦な土道になっていました。道の両脇には森がひろがっていて、おおきな月に青白く照らされた樹々はとても幻想的に見えました。森の奥の方からは梟の鳴き声がきこえてきましたが、奥の方は暗闇に包まれていて、何も見えませんでした。
ラクラミキオアラたちは亀のカシオペイアに合わせて、ゆっくりと歩いていました。月の青白い光が、くろい闇とまじりあって、ふかい青をつくっていました。そのふかい青の世界につつまれて、子供たちはゆっくりと進みました。時間も、ゆっくり、ゆっくり流れていました。
ラクラミキオアラが顔を下に向けると、カシオペイアの背中に、ほのかに光る文字が浮かび上がりました。
「ヨルノ オサンポ タノシイ デスネ」
ラクラミキオアラは、
「うん、そうだね…カシオペイア。わたし、こんなに楽しいお散歩、はじめてだよ!」
と言って、白く光るおおきな月を見上げました。




