冬真の感想
冬真は真剣な顔で双葉の小説を読み始めた。しかし、やはり内容があまりにも奇天烈なので「…ププッ!…アハハハハハ!!」と、途中で笑い始めた。そしてまた、真剣な顔に戻る。また、笑う。それを繰り返して、ついに読み終えた。
「…小山さん…この作品は…」
俺はゴクリと唾を飲んだ。双葉と未希も、冬真が一体どんな感想を口にするのか、固唾を飲んで見守っている。
「素晴らしいではありませんかっ!ボクが、このような重要な役を頂けるとは…思ってもみませんでしたッ!大変、光栄なことですッ!ありがとうございますッ!」
「いや、確かに重要な役なのかも知れんが…チワワの相手をして遅刻して、空き巣みたいに他人の家に侵入し、最後は犯人であると自白して気球で飛んでいった奴だぞ?いいのか、冬真…?」
俺がそう訊くと、冬真はこう答えた。
「構いませんともッ!おそらく彼はチワワに頬ずりしていたのでしょう、スリスリと!『出かけることになっちゃってごめんね!帰ったら遊ぼうね!』などと言っていた可能性もあります。つまり!彼は、とっても優しい人物なのであります!まさにこのボクのように…!」
自分で言うのかよ。俺は心の中でそう突っ込みを入れ、「まあ、冬真がいいなら、いいんじゃないか」と言いながら、双葉が作ったたこ焼きをひとつ口の中に放り込んだ。
「でも双葉、これタイトルが『海底の貴婦人殺人事件』だけど、海底要素どこにあるんだよ」
「オーッホッホッ!!!何をおっしゃいますか!西園寺夫人は、エビチリを召し上がっておられたのですわよ?そのエビチリのエビは、深海にのみ生息する未知の深海エビ、マリアナエビなのでございますわッ!海女さんが素潜りで海底まで行って、見事捕獲してきたのですわッ!」
未知なのに、なんで名前がついているうえに捕獲されて、調理までされてるんだよ!ていうか、マリアナ海溝の底まで素潜りって…水圧どこいった?俺は再び心の中で突っ込みを入れた。小説だけじゃなくて、作者の発言まで『突っ込みどころの博物館』じゃないか!
「キャハハ!双葉さん、最高!…読んでいたら、私も小説を書いてみたくなっちゃいましたよ」
未希はそう言って笑っていた。
「それは素晴らしいですわッ!ファンタジー、ミステリー、恋愛…どのようなジャンルでも、あなたならきっと素敵な作品を生み出すに違いありませんわッ!」
「エヘヘ…ありがとうございます!」
俺は皆の会話を聞きながら、やっぱり俺はこのクラブが好きだと思った。一人ひとりが異なる個性を持ち、お互いに認め合い、支え合っている。双葉が書いた冬真への悪口も、ひとつの愛情表現なのだ。この優しさにあふれる国語クラブを、皆が無事に卒業するまで、しっかり守っていこう。俺はそう思った。




