八年後 25 ゴン・フォックス
高山『僕ちょっと、風呂入ってきます!また後で話しましょう!』
鶴川『はーい』
それから約一時間ほど経った頃、国語クラブ Version 2.0 PWFMのグループラインに双葉がメッセージを送信した。
双葉『わたくしの素晴らしい新作が出来ましたわッ!近未来SF短編でございますわよッ!1〜3段落ずつ、貼っていきますわッ!』
鶴川『えっ!SF?双葉、お前がSF作品書いてるなんて初耳だぞ!意外にも程があるだろ』
阿川『小山さんのことだから、主人公の名前が布川で、運動会か何かでちょっと活躍して、「Sugoi Fukawa、略してSFですわッ!」とか言い出すんじゃないの?部長、騙されない方がいいよ。アハハハ』
鶴川『…確かにそうだな。すごくふざけた作品を書いて、「Sugoku Fuzaketaの略ですわッ!」とか言い出す可能性もある。警戒を怠らずに読もう』
高山『あ〜、風呂入ってきたらサッパリしました!双葉さん、SFですか?いいですね!早く読みたい!』
双葉
『 AI搭載ロボット ゴン・フォックス
小山 双葉
昔むかし、JR横浜線の十日市場駅の近くに、中山駅という駅があった。』
鶴川『…「ゴン・フォックス」って…もしかして「ごんぎつね」のパロディか?あの名作を汚す行為は許さんぞ、双葉ッ!』
阿川『タイトルからして、嫌な予感しかしないね。これ確実に、名探偵・暗智大五郎シリーズみたいな、「ただの突っ込みどころの詰め合わせ」でしょ』
高山『昔むかしって言うか、中山駅は今でもありますよ、双葉さん!』
双葉
『 その中山駅の近くの川で、ソルジャー・テン博士はいつも、うなぎを獲っていた。その日も朝から博士はうなぎ獲りに精を出していた。』
高山『ソルジャー・テンって…もしかして「兵十」ってことですか?直訳にも程がありますよ、双葉さん!』
鶴川『双葉の悪い癖が出まくってる。最悪だ』
双葉
『 三年前に博士によって作られた後、研究所から脱走した高性能AI搭載ロボット“HAL 90000”またの名を“ゴン・フォックス”は、うなぎを獲っている博士の近くに忍び寄り、籠に入っているうなぎを盗もうとした。しかしそのとき、うなぎがゴン・フォックスの首に絡みつき、慌てたゴン・フォックスは首にうなぎを巻いたまま逃走した。』
高山『おっ。“HAL 90000”って、スタンリー・キューブリック監督の名作『2001年宇宙の旅』に出てくるAI、“HAL 9000”のパロディですよね。さすが双葉さん!やりますね!』
鶴川『感心してる場合じゃないよ。まったくもう』
双葉
『 ソルジャー・テン博士がよそ見している間にうなぎを盗んだのだが、博士は「このあたりでゴン・フォックスが悪さをしている」という村人達の噂話を聞いたことがあったので、「もしかしてゴン・フォックスのやつの仕業か?」と疑い始めた。
数日後、ゴン・フォックスが散歩をしていると、村の真ん中にある広場で、なにやら大勢の村人が集まって、お祈りのようなことをしていた。その周りには、見物人も大勢いた。その見物人の中にいた幼い男の子に、ゴン・フォックスは「あれ、何をやってるの?」と訊いた。男の子は、「お葬式だよ。ソルジャー・テン博士のお母さんが、亡くなってしまったんだ」と言った。
ゴン・フォックスは、この前自分が盗んだうなぎは、ソルジャー・テン博士が病床の母親に食べさせようとしたものに違いないと思った。“そんな大事なものを盗んでしまって、申し訳ないことをした”ゴン・フォックスは、そう思って深く反省した。』
阿川『あれ?もっとメチャクチャな話になるのかと思ったら、意外と原作の筋を壊してないね。』
鶴川『騙されるな、冬真。双葉がこのまま、おとなしく話を終わらせるはずはない。』
双葉
『 翌日、ゴン・フォックスはソルジャー・テン博士の家の庭に忍び込み、窓から中を覗いてみた。博士は一人ぼっちで、とても寂しそうだった。ゴン・フォックスは、ずっと一人で生きてきた自分と同じようになってしまったソルジャー・テン博士を目の当たりにして、“なんとかしてやらねば”と思った。
翌日からゴン・フォックスは、博士の友達にするための友達ロボット、ゴン・フォックス・スーパーHAL 90000の製造を開始した。』
鶴川『な?やっぱりふざけ始めただろ?』
阿川『ゴン・フォックス・スーパーHAL 90000…なんか、嫌な予感しかしない…!』
高山『そもそも、“2001年宇宙の旅”に出てくるHAL 9000は、人間を排除していくヤバいAIですからね。』
双葉
『 心優しいゴン・フォックスは、“友達がたくさんいた方が、博士は寂しくないだろう”と考えて、合計150体のゴン・フォックス・スーパーHAL 90000を製造し、着払いの宅配便で送りつけた。』
阿川『着払いって…もはや迷惑でしかない』
鶴川『ひどいなこれは。どこが「心優しい」なんだよ』
高山『ていうか普通に犯罪ですよね?やってること…』
双葉
『 送り付けられたソルジャー・テン博士は、着払いの代金を支払うために借金をする羽目になったが、それでも、大量の友達をゲットして、おおいに喜んだ。』
鶴川『おいおい、おかしいだろ。なんで喜ぶんだよ。そもそも置き場所が無いはずだろ。』
阿川『庭に並べても収まりきらなそうだよね。ロボットだから、雨が降ったら錆びそうだし。』
双葉
『 ロボットが届いた翌日、ゴン・フォックスは博士の家を訪れ、「博士…この前はごめんなさい。ロボット、届いたみたいだね。どう?嬉しい?」と訊いた。博士は感謝の涙を流しながら、「ゴン、お前だったのか。嬉しかった。嬉しかったぞ。だけどな、ゴン・フォックスよ。わしは今、思った。わしが今、一番友達になりたいのは、150体のロボット達ではなく、お前じゃ、ゴン」と言った。一人ぼっちで生きてきたゴンは、泣きながら博士の胸に飛び込んだ。同じように一人ぼっちで生きてきた博士は、優しくゴンを抱きしめた。その瞬間から二人はもう、一人ぼっちではなくなっていた。
完 』
鶴川『…双葉…これ…』
阿川『最後のところ、ちょっと感動しちゃった』
高山『お、おれもです!途中までは、完全にふざけている作品なのかと思ってました。正直!」
鶴川『俺もだよ。そこからのどんでん返し、さすがだな、双葉』
双葉『みなさんの心に響いたのであれば、わたくしにとって、これ以上の喜びはございませんわッ!オーッホッホッ!』




