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八年後 20

 しばらく四人で談笑していると、注文したビーフカレーとコーヒーが運ばれてきた。高山はテンポ良くカレーを口に運び、あっという間に食べ終わった。

「高山君、食べるの速いね!」鶴川が言った。鶴川はゆっくり食事をするタイプだった。

「え?あ、ああ…そうですね。僕の家は両親が共働きなんで、妹が夕食を作ってくれることも多いんです。で、僕がのんびり食べていると『早く洗い物終わらせたいんだから、ちゃちゃっと食べてよね!』って、怒られるんですよ。アハハハ…」

 高山の言葉を聞き、鶴川達三人の心の中で、『恐ろしいほど妹の尻に敷かれている男』という高山のイメージが、この世にこれ以上固いものは無いと言い切れるほどのレベルで確固たるものとなった。

「でもさ、毎日ダンスの練習を何時間もしているわけだから、きっと疲れてるよね?それなのに夕食を作ってくれるなんて、なんだかんだ言っても根は優しい妹さんだね」

 阿川が、珍しく良いことを言った。鶴川と双葉が同時に『あれ?スネ夫のくせに、珍しく良いこと言った!』と思ったのは言うまでもない。

「ありがとうございます。そうなんです。根はすごく優しい奴なんですよ。中学生だったときに一度彼氏を作ったんですけど、二回目のデートから帰ってきたときに『振ってやった!あいつはダメだわ』と言うから、『えっ、どうしたの?何があったの?』と訊いたんです。そしたら、一緒に電車に乗って座席に座っていたときに、彼氏の前に杖を持ったお年寄りが立ったらしいんですよ。それで、彼氏が席を譲らなかったと言うんです。譲ろうとする気配すら見せなかった、って。それで結局、妹が席を譲って、彼氏は振ったって言ってました。アハハハ…」

「すごい…正義観が強いというか筋が一本通っているというか…やっぱり一芸に秀でている人って、そういうところがあるんですね」

 鶴川が感心して言った。

「ええ…でも、うちの妹はちょっと度が過ぎているところがあるので、正直少し疲れるときもありますよ。あと、電車のお年寄りに優しくする姿勢をそこまで徹底して貫くのなら、俺にももうちょっと優しくしてくれよ…とは思いますね、正直。アハハハ…」

 高山は少しおどけた笑顔で言った。鶴川も「確かにそうですね!」と言って笑い、阿川と双葉も笑っていた。

「高山君はトム・クランシーのファンだって言ってたけど、自分で小説を書いたことは無いの?」

 鶴川が訊いた。

「それは…まだ一度も無いですね。自分で書くという発想自体、したことが無かったです。でも、楽しいかも知れませんね。自分で書くの」

「ええ!きっと、すごく楽しい趣味になりますわよッ!あなたがお書きになるのであれば、その個性的で魅力的な妹さんとの関係を書けばいいと、わたくし思いますわッ!」

 双葉がそう言うと、高山は「な…なるほど!」と、強い興味を示した。鶴川も、

「書いて、妹さんにプレゼントしたらいいんじゃない?『いつも夕食作ってくれてありがとう』って言いながらさ。きっと喜ぶよ」と言って微笑んだ。

「ボクの予想だと、『私を小説に書いたの?お兄ちゃん、相変わらずキモいことするね!』とか言いながら、心の中ではめちゃくちゃ喜ぶパターンだね」

 阿川が述べた予想が意外にも鋭かったので、双葉が

「ス…スネ夫さんが女心を理解しているなんて…ある意味、キャラ崩壊ですわッ!一体、どうなさったのですッ!スネ夫さんッ!」と震えながら言った。

「いやいや!何を言っているんだよ!ボクにだって、女心くらい分かるよ!ていうかスネ夫じゃないよッ!もうッ!」

 阿川の返答に、みんな大笑いした。


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