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八年後 19

 鶴川は「とりあえず、どこか喫茶店にでも入って、座ってゆっくり話しましょ…ハナソウヨ!」と高山に言った。

「ソ、ソウダネ!ソウシヨウ!」

 敬語を使わずに話すことに慣れていない鶴川と高山を見て、阿川と双葉は笑っていた。

「ロボットみたいな話し方になっていますわよッ!」

 四人は談笑しながらしばらく歩いたあと、階段を(のぼ)り、ビルの二階にある喫茶店に入った。高山はまだ夕食を食べていないということだったので、カレーなどもメニューにある喫茶店を選んだ。

「あの、鶴川君…ラインで現在の部員は四人だって言ってたけど、今日は三人なんだね。一人、予定があって来られなかったとか?」

 高山の言葉を聞いた鶴川の目に一瞬、真剣さと悲しさと寂しさが混ざったような光が宿ったが、鶴川はすぐに笑顔をつくって「いや、今日だけってわけじゃなくてね…ちょっと一人、俺のせいで長い間、連絡が取れなくなっている大切な部員がいるんだ」と説明した。高山は何か深い事情があることを察して、「そうなんだね…」と言い、それ以上は訊かなかった。

 喫茶店に着くと、阿川が鶴川の隣に座り、テーブルを挟んで鶴川の正面に高山、阿川の正面に双葉が座った。高山はビーフカレーを、他の三人はコーヒーを注文した。

「あ…妹からラインが来てる…」

 高山がボソッと言った。鶴川達三人は、『例の「ハレー彗星型ツンデレ」の妹か…!』と内心、思った。

「ど…どんなメッセージが来たのですかッ?」

 双葉が好奇心を抑え切れず、恐るおそる訊いた。

「メッセージは『どうよ、これ!』だけで、動画が貼られてますね。ダンスの動画です。僕の妹は小学生のときからダンスをやっているんですよ」

 高山はテーブルの上にスマホを置いて、三人に動画を見せた。三人は絶句した。黒のスーツとハットに白いワイシャツ、黒ネクタイの女の子が、見たことも無いような、人間とは思えないような動きをして踊っていた。とにかく動きのキレが、半端じゃない。

「な…なんだこれ…信じられないくらい格好いい…!」

 鶴川が驚嘆して言った。

「妹の舞子(まいこ)は、マイケル・ジャクソンを崇拝していて、完コピを目指して小学生の頃から毎日練習してるんですよ。特にビリー・ジーンとデンジャラスが大好きで。これはデンジャラスですね。あ、そもそも父親が熱烈なマイケル・ジャクソンファンで、舞子という名前もマイケル・ジャクソンからとって付けたんです。ボクは何故か普通に隼人なんですけどね。アハハハ」

「高山君もダンスやってたりするの?」

 阿川が訊いた。

「いえ、僕も小学生の頃、父に『習ってみたら?』って言われたんですけど、全然興味が無かったので断りました。父は、強制的にやらせるような人ではないんですよ」

「それにしても、妹さんめちゃくちゃ上手いね。おれ、感動しちゃったよ。人間って、あんな動きが出来るものなんだね」

 鶴川が興奮気味に言った。

「小学生の頃から一日も休まずに毎日、何時間も練習していますからね。よっぽど好きなんでしょうね。アハハハ」

「ダンスの大会に出場されたことはあるのですかッ?」  

 双葉も興味津々な様子で訊いた。

「ええ、あります。身内の自慢になっちゃうから自分からは言わないようにしていますけど、何度も優勝してるんですよ」

「ええーっ!」

 三人が一斉に驚きの声をあげた。

「めちゃくちゃ凄いじゃん!そんな人が高山君に『友達券』を手作りしてあげてるなんて、なんだか面白いね!」冬真がそう言って、アハハハと笑った。

「マイケル・ジャクソンのぬいぐるみを手作りして、僕の誕生日にくれたこともあるんですよ。あと、白い手袋にキラキラ光るスパンコールを大量に縫い付けて、『これ、ビリー・ジーンのときにマイケル・ジャクソンが着けてる手袋だよ』と言って、誕生日にくれた年もありました」

「えっと…高山君もマイケル・ジャクソンのファンなんですか?」

「いえ。僕は別に。なのに、何故かくれるんですよ。五年間くらい、ずっと誕生日プレゼントがマイケル関連グッズだったんですよ。しかも全部、手作りなんです。そろそろ他の物がいいと言ったら、『友達券』になったんです」

「…ひとつだけ、わたくし分かりましたわッ!あなたの妹さんは、かなり面白いお方だということですわッ!」

 双葉がそう言うと、鶴川は力強く頷いた。阿川は

「面白いというか、変人だね」

 と、『本ばかり読んで空気読まない男』の本領を発揮したコメントを述べた。

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