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八年後 18

「先日はありがとうございました!岩瀬君にお願いされて渋々参加した飲み会だったんですけど、鶴川君のおかげで楽しく過ごせました」

 高山はまず、そう挨拶をした。

「いえいえ、こちらこそ。僕もその点は全く同じだったんですよ。高山君のおかげで、助かりました。岩瀬と大学が同じなんですよね?岩瀬とは大学で知り合って友達になった感じですか?」

 鶴川は笑顔で訊いた。

「いえ、実はそれほど仲がいいわけでも無いんです。語学のクラスが同じで、たまに話す程度で。大学の外で岩瀬君と会ったのも、あの飲み会が初めてです。お願いされて、本当に数合わせで参加した感じです」

「えー!そうだったんですね。というか多分、高山君って僕らと年齢同じですよね?敬語はやめて、お互い普通に話しませんか?」

「えっ…あ、はい。じゃあ、そ、そうしよう!アハハハ。なんか、照れますね」

「アハハハ!敬語に戻ってますよ!」

 二人のやり取りを見て阿川と双葉も笑っていた。

「あの…わたくしも、さきほどのラインのメッセージを拝見させて頂いたのですが…。あ、申し遅れました。わたくし、国語クラブの部員で鶴川とは小学生の頃からの友人である、小山双葉と申します。で、ラインのメッセージの件ですが…妹さんから日常的にあのような攻撃を受けていらっしゃるのですかッ?わたくし、あなたのメンタルが心配ですわッ!」

「アハハハ!心配して下さって、ありがとうございます。大丈夫ですよ!妹は、幼い頃からあんな感じなので、慣れていますから。それにあいつは、本当に意地悪なわけじゃなくて、いわゆるツンデレというやつなんです。僕の誕生日には、ちゃんとプレゼントをくれたりしますよ。ちょっと変わった物ですけどね。アハハハ」

「変わったもの…って、どんな物なの?」

 阿川が興味を示して訊いた。

「母の日とか父の日に手作りの『肩たたき券』とか、あげたりするでしょ?あれと似た物で、『友達券』というのをくれましたね、去年は」

「『友達券』…もしかして、それ一枚ちぎって渡すと、一日だけ妹さんが友達になってくれるという券ですか?」

 鶴川が眉間に皺を寄せて訊いた。

「その通りです!『肩たたき券』って普通は十枚くらいの(つづ)りになっていますよね?『友達券』は三枚綴りだったので、『やけに少なくない?』って訊いたんですよ。そしたら『お兄ちゃんと友達になるのは、どんなに頑張っても三日が限界だよ。クソつまらなそうだもん!』と言われました。アハハハ…」

 鶴川達三人は、気の毒過ぎて何といえばいいのか分からず、無表情で三秒ほど静止してしまった。

「い、妹さん…本当にツンデレなのですかッ?ツンツンだとしか思えませんわッ!」

 双葉がそう言うと、高山は少し困ったような笑顔でこう返答した。

「アハハハ。確かに、ツン、デレ、ツン、デレという感じで交互に来ることは無いですね。ツンツンツンツンツンツンツンツン…と、ツンが五百回くらい続いてから、やっとデレが一回来る感じです」

「…デレの『なかなか来ない感』が、もはやハレー彗星のレベルじゃないですか」

 鶴川がさっきよりも更に深く眉間に皺を寄せて言った。

「アハハハ。言われてみると、確かにそうですね。でも、その方が、デレが来たときの嬉しさが大きくなるんですよ。アハハハ」

「あ、あの…ひとつお訊きしてよろしいかしら…。あなたの方は、妹さんのお誕生日に、何か差し上げたりするのですかッ?」

 双葉が訊いた。

「ええ、もちろん!この世で一人の、僕の大切な妹ですからね。バイトして貯めたお金で、妹が欲しがっていたエイフォンを買ってあげたりしています」

「え、エイフォンって…あの、ミップル社が出している、スマホの高級機種ですか?」

 鶴川が驚いて訊いた。

「ええ、そうです。さすがにあのレベルの値段のものは、毎年あげてはいませんけどね。妹が高校に合格した直後でもあったので、ちょっと奮発しちゃいました」

 鶴川はゴクリと唾をのみ込み、『もし国語クラブに、人間性を見るための入部試験があったとしたら、間違いなくトップ合格だ…』と思った。阿川と双葉も、同じようなことを考えていた。


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