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八年後 16

 鶴川はその場で高山に送る返信メッセージの作成を始めた。阿川と双葉は『どんな返信を書いているんだろう…』と思いながらその様子を眺めていた。

「出来た!こんなんで、どうかな?」

 鶴川が二人に見せた返信メッセージは、次のようなものであった。


『高山君、レポートの作成お疲れ様です!返信の遅れとか、そんなことは全然、気にしなくていいよ!

国語クラブの集まりに参加してくれるとのことで、とても嬉しく思っています。妹さん、とても辛辣(しんらつ)ですね!笑 でも、きっと本当はお兄ちゃんのこと大好きなんじゃないかな?なんだか、そんな気がしますよ。僕は今、大学の近くにある飲食店で、国語クラブのメンバーと食事を終えたところです。僕以外のメンバーも、高山君に会うことを楽しみにしていますよ。』


 そのメッセージを送信前に鶴川に見せられた阿川は、

「部長。僕はまだ『楽しみだなあ』とか、言ってないよね?」

 と、安定の『正論おじさんの若い頃』っぷりを発揮し始めた。しかし、この『サラミではなくイヤミを乗せたピザ』こと阿川の扱いに慣れている鶴川は、

「黙れ、スネ夫」

 とひとこと言って、送信ボタンをタップした。するとすぐに、高山から返信が来た。


『ありがとうございます。とても嬉しいです。あの…もしよかったら、今から喫茶店かどこかで会いませんか?僕は今、渋谷にいるんですよ。まだ五時過ぎですし、高田馬場なら十分ちょいで行けますよ。』


 鶴川はその返信メッセージを阿川と双葉に見せて、「…どうする?冬真と双葉は、今日このあと何か予定とか、あるの?」と訊いた。

「ボクは特に無いから大丈夫だよ」

「わたくしも、大丈夫ですわッ!」

「よし、じゃあ今日これから高山君と合流して、新生国語クラブ、『国語クラブ Version 2.0 PWFM』の初会合を開こう!」

「…部長、そのPWFMっていうの、よく毎回ちゃんと、間違えずに言えるね」阿川が笑いながら言った。

「工藤さんへの愛のなせる(わざ)だ。恥ずかしいんだから、言わせるなよ」

「よく言うよ。言いたくて仕方ないくせに!」

「バレた?」

「バレバレだよ!」

 鶴川と阿川は顔を見合わせて笑った。それから鶴川は、高山とラインでやり取りをして、待ち合わせをする喫茶店を決めた。そして三人はそこへ向かって歩き始めた。鶴川は『僕達が渋谷まで行こうか?』と提案したが、高山が『いえ、僕が高田馬場まで行きます!』と返信してきたので、礼を言って、来てもらうことにした。駅に向かって歩きながら鶴川は、

「しかし、こうなってくると早く会員証を作りたいな!色は何色にしようかな〜。やっぱり紫かな」と言った。

「さすが部長ですわねッ!わたくし、その理由、分かりますわよ。平安時代から最も高貴な色とされていた…そして」

「もうひとつの理由も当てられるか?双葉」

 鶴川は訊いた。

「もちろんでございますわ。紫は、紫陽花(あじさい)の色…工藤さんが生まれた、六月を象徴する色だから…でしょう?部長?」

「当たりだ、双葉」

 そう答えた鶴川の目は、真っすぐ前を見ていた。いつか未希と再会する日が来ることを強く信じて、その未来だけを、真っすぐに見ていた。

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