表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/66

59話 梟の凱陣

天使型ゴーレムの残骸を踏み越え、深く冷たい闇の底へと進んだ一行を待っていたのは、想像を絶する光景だった。


かつて最強を謳われたドラゴン族と、初代魔王ゾルタークが死闘を繰り広げ、最後は相打ちで魔王が亡くなったとされる「魂の墓場」。


伝説によれば、山が削れ、湖が枯れるほどの魔法の応酬があったとされる場所だ。


だが、最深部に広がる広大な空間は、戦闘の痕跡など何一つ見当たらないほど綺麗なガラスのような石が続いていた。


「……なんだ、これは。爪痕も、魔法で焼け焦げた跡すらないな。


てか、こんな何もないところで初代魔王様とドラゴンは戦ったのか?」


レンジが警戒用に出していた薔薇の炎をより広域に広げつつ、怪訝そうに呟く。


そこにあったのは、山の中に突如現れた巨大な「すり鉢状のクレーター」だった。


「……血の匂いもしない。まるで最初から、何も存在しなかったみたいだわ」


 リリスが腕をさすりながら身震いする。


「ヴァルガス爺。ここで間違いないのだな?」

アークの問いに、ヴァルガスは沈痛な面持ちで頷いた。


「はい。この場に残る魔力の波長……間違いなく、初代様とドラゴン族のものです。


しかし、痕跡が何もないとは・・・」


「いや、痕跡がないんじゃない、この場所そのものが痕跡だ。」

レノが口を開く。


一同は何を言っているか分からないとの顔でレノの方を見遣るが、ミラが気づいたようにあっと声を上げる。


「巨大な殲滅魔法・・・。太陽王国の首都を襲ったものと同一かは分かりませんが、この規模の魔法が存在することは確かですね。」


それを聞いたアークはクレーターの中心へ歩み寄り、静かに目を閉じた。


王たる者にのみ許された権能、深紅の『魔眼』が限界まで見開かれる。空間に焼き付くように残った残留思念を読み取ろうと試みる。


「……見せてくれ。この地で、父上に何があったのか」


アークの視界が歪み、世界がセピア色に染まる。

そこに映し出されたのは、魔王とドラゴンの血みどろの死闘ーーーなどではなかった。


初代魔王ゾルタークと巨大なドラゴンが並び立ち、はるか上空をにらみつけるを眺める。両者の様子は敵対というより、むしろ共闘。


だが、次の瞬間。

空が割れるようにして、音もなく、熱すら伴わない「紫色の光の柱」が、天から一直線に降り注いだ。


それは魔法や物理攻撃という次元の現象ではなかった。光に触れた端から、初代魔王の腕が、ドラゴンの鱗が、そして大地そのものが、まるでキャンバスから絵の具を拭き取られるように、無機質に消滅していく。


「……あ、が……ッ!」


アークは両目から一筋の血を流し、大きくよろめいた。


「アーク様!」


駆け寄るヴァルガスを手で制し、アークは荒い息を吐きながら虚空を睨みつけた。


(父上、龍王、其方らは一体何と向き合っていたのだ・・?)


アークが絞り出すように光景を伝えると、レノが目を細める。


「歴史の改竄。魔王とドラゴンは対立ではなく共闘。しかし、歴史では二代目魔王は滅龍戦争を継承し、現にドラゴンは姿を消した。そして、三代目魔王を天翼族は裏切った。


⋯不確定要素が大きすぎるな。歴代魔王様は一体何と対峙しているんだろうな。」


その言葉を聞いたヴァルガスは、人知れず頭を抱えていた。

(なぜだ、なぜ私は⋯あれほど長く尊い日々を思い出せないのだ。)


その苦悩に満ちた表情に気付いた者はいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ