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58話 梟の出発

太陽の光すら薄暗く霞む、不毛の荒野。

最初の依頼として『梟』と魔王たちの一行は、かつてドラゴン族と初代魔王が相打ちで倒れたという「魂の墓場」に向かっていた。


だが、強力な古代の幻惑魔法によって、ただの巨大な岩山に偽装されていた。


「……この魔力の残滓、間違いありません。ここですが、なぜか古いエルフ語で書かれているようです。」


ヴァルガスが岩壁に手を触れると、リリスが古代エルフ語の詠唱を紡ぐ。


すると、空間が蜃気楼のように歪み、地鳴りとともに巨大な金属の扉が姿を現した。


だが、扉が開くと同時。甲高い、耳をつんざくような警報音が周囲の空気を震わせた。


岩山の影から、白磁の肌と光の翼を持つ無機質な巨兵たちが、まるで機械仕掛けの羽虫のように次々と舞い降りてくる。


「この間のゴーレムか!」


レノが舌打ちをする。つい先日遺跡で『梟』を全滅寸前まで追い詰めた、痛みを知らず無限に再生する理不尽な兵器。その数は、ざっと見ても十体以上。


「 あいつは硬すぎる!俺が一瞬食い止めるから、その間に撤退してくれ!」


ゾラが斧を抜き、毛を逆立てて叫ぶ。だが、レノの表情に焦りは一切なかった。手駒の質が、あの時とは全く違うのだ。


「いや、押し通ろう。……レンジ! 上空の三体を潰せ! ゾラは右側の前衛の関節を断て!レイカは左側を押し込んだうえで、ゾラを援護して先に右翼を叩こう。


他はーーー魔王様御一行、頼みます」


レノの指示が飛んだ瞬間、後方の高台に陣取ったレンジの魔法が展開される。


空間ごと燃やし尽くしているような轟音で大きな薔薇が咲いた。やがて薔薇が成長するようにして三つに枝分かれし、上空から急降下してきたゴーレムたちを正確に撃ち抜いた。


「こっちも行くぜェ!」


ゴーレムの懐に、ゾラが疾風の如く滑り込む。硬い装甲は狙わない。瞬きする間に放たれた斧が、装甲の隙間――膝と肘の関節のみを綺麗に切断し、巨体を地面に這いつくばらせる。


 だが、天使型ゴーレムは沈黙しない。切断された四肢の断面が発光し、自己修復を始めようとする。


「レイカっ、頼むぜ」

 

レイカの腕が銀色の流体ブレードに変化しかけたが、規格外の魔力溜まりを察知すると、少しムッとしたような表情をして引っ込めた。


「――『世界 第6番』」


静かな、だが圧倒的な力を孕んだ声が戦場に響いた。


ヴァルガスが一歩前に出て、その剣を前方にかざす。

直後、十体以上のゴーレムたちの真上の空間が、泥のようにドロリと歪んだ。


「ギ……ガァァ……ッ!?」


感情を持たないはずの天使たちが、奇妙な電子音の悲鳴を上げる。

空間そのものを捻じ曲げる超高密度の重力場。自己修復すらも押し潰す圧倒的な圧殺力。白磁の装甲がメキメキと音を立ててひしゃげ、光の翼がガラスのように砕け散った。


次の瞬間、ズゥンッ! という地響きとともに、残っていたゴーレムの群れは地面ごとすり鉢状に押し潰され、ただの鉄屑の塊と化した。


一瞬にして静寂が戻った戦場。ヴァルガスは土埃を払いながら、何事もなかったかのように振り返った。


「……おいおい。マジかよ、オーバーキルすぎだろ」

レンジが呆れたように肩をすくめる。


「今のは量産型の雑魚だ、南部の砂漠で襲ってきたユニーク個体は今の比じゃない。


・・・だが、レノ。我々の力を測る意味もあって、初めからヴァルガスの射線に敵を集めるように前衛を動かしていたな」


アークがそう言うと、レノは知らないとばかりに両手を上げた。


(にしても、俺たちが全滅しかけた量産型でこの硬さだ。ユニーク個体が複数体いるとなれば……。しかも、入り口の古代エルフ語も気になる。


盤面を根本から引き直す必要があるかもな。


いや、それよりユニーク個体を撃退したということは、魔王御一行の底が知れない。ヤマト並みの強さは想定した方がいいのか・・?)


「……まぁ策略を練る余裕があるのは頼もしい限りだ。それで、目的地まであと数刻ってところかな。」


レノの口角が吊り上がる。魔王と軍師を先頭に、一行は開かれた扉の奥、深く冷たい闇の中へと足を踏み入れていった。

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