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57話 梟の同盟

傭兵ギルドの依頼板に奇妙な羊皮紙が貼り出された。


『家に帰りたい。護衛および案内を求む。報酬:金貨100億枚 難易度:S級クエスト。依頼主:匿名』


「……たちの悪い悪戯か、それとも本物の狂人か」


それから数日後、怪しい一団が街に到着したと報告を受けたレノは、彼らを場末の酒場へと誘導させつつ先回りして足を運んだ。


安酒の臭いが立ち込める店内。だが、その一向が足を踏み入れた瞬間、その「異質さ」にレノは肌が粟立った。


喧騒に包まれているはずの酒場で、彼らから漂う圧迫感は、それを感じ取れる強者だけに強烈なプレッシャーを与えた。


そこにいたのは、奇妙な4人組だ。


岩山のような威圧感を放つ老騎士。


金貨の入った袋を品定めするように鳴らす商人の女。


そして、赤い髪を逆立てて退屈そうに酒を煽る龍人の女。


その中心で、一人の黒髪の青年が店主と会話している。


いや、4人の影に溶け込むように黒猫の獣人少女もいることに気付く。


彼らは店主に誘導され、レノ、ゾラ、ミラの後ろの席に腰をかけた。


「君たちが、例の家に帰れなくなった迷子かい?」


レノが真後ろに座った青年ーーアークに声をかけると、アークが振り返った。


老騎士と黒猫の獣人を警戒していたが、アークの深紅の瞳を見て、レノは彼が一団の王たる理由を悟り、軽く笑った。


「ずいぶんと派手な連れだね。……例の依頼書、なかなか面白い書き方だったから、依頼主に興味を持っていたんだ。」


体ごと振り返る。


「僕はレノ=モティエ、梟を率いる傭兵団長だ。


『お家に帰りたい』 金貨100億枚のS級クエスト、我々が受注しよう。」


そう言ってレノが立ち上がると老騎士――ヴァルガスが、鋼の軋むような低い声と共に殺気を放って立ち塞がった。

「無礼であるぞ、若造。我らが主に対し――」


「構わん、ヴァルガス。退がれ」


アークが手で制し、ゆっくりと顔を上げた。


視線が交差する。アークの深紅の瞳を改めて正面から見た瞬間、レノの背筋に冷たい汗が伝った。


それは、裏社会のボスたちが放つような薄っぺらい威圧感ではない。ゾラも全身の毛が逆立ち、本能が『これ以上踏み込めば死ぬ』と警鐘を鳴らして一歩も動けなくなった。


何百年もの歴史と、背負ってきた命の重さが凝縮された「王の覇気」そのものだった。


「お前が『梟』の頭か。……悪くない目をしている。盤面を俯瞰し、すべてを駒として扱い、勝利の為に手段を選ばない、悪党の目だ」


「悪党、、、か。一旦は褒め言葉として受け取っておく。それで?


国家予算並みの金を積んで、どこから亡命してきたんだ?」


レノは努めて平静を装い、不敵な笑みを浮かべて見下ろした。

アークは口の端をわずかに吊り上げる。


「天空魔城エクリプス」


時が止まったように静寂が訪れる。


側に控えていたミラはその真意を測りかねて、一瞬だけ、全身の魔力を殺意として、アークに向けて叩きつけた。


だが、アークは気づいていないかのように瞬き一つしなかった。代わりに、アークの背後から「深淵そのもの」のような魔力の波が押し寄せ、ミラの殺気を赤子の戯れのように容易く飲み込んで霧散させた。


「……こちらの副官が失礼を。」


レノが嗜めると、アークは小さく息を吐いた。


「改めて、俺はレノ。この街で傭兵をやっている。」


(この街だけを変えただけで満足できないほど、自分は野心家だったのだろうか。


亡き第9大隊の連中なら、この馬鹿げた依頼にどう笑うかな。)


「改めて、その仕事、引き受けたいと考えている。」

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