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55話 梟の生還

それは、レノの完璧な計算をあざ笑うかのような、理不尽な暴力だった。


ギルドから引き受けた『古代遺跡の魔物討伐』。だが、その遺跡に待っていたのは、魔獣などではなかった。


白磁のような滑らかな肌に、のっぺらぼうの白い仮面。背中には後光のような光の翼を背負った、無機質な人型兵器。


「……なんだ、こいつは。


天使を模したゴーレム?」


レノが警戒の声を上げた瞬間、天使型のゴーレムは無音で床を蹴った。


速い。


「ゾラ、前衛に出ろ!」


ゾラが咆哮を上げて突進し、丸太のような豪腕を振り下ろす。だが、ゴーレムはそれを片手で容易く受け止め、空いた手で光の刃を生成し、無造作に薙ぎ払った。


「ガァッ……!」


ゾラの胸甲が紙切れのように裂け、鮮血が噴き出す。そのまま強烈な蹴りを腹部に受け、ゾラの巨体が石柱まで吹き飛ばされた。


「速いな、防衛障壁の展開が間に合わないな」


しかし、戦闘不能と判断してゴーレムが意識外に置いたゾラが、血を撒き散らしながらも死角から跳躍する。


斧をゴーレムの首筋に深々と突き立てた。


確かな手応え。だが、仮面の奥から感情のない光が漏れたかと思うと、斬り裂かれたはずの傷口が、瞬時に光の粒子となって塞がっていく。


「自己修復!?」

驚愕して動きが止まったゾラの脇腹に、ゴーレムの無慈悲な拳がめり込んだ。


ゴキィッ! という肋骨が砕ける嫌な音が響き、ゾラは肺から空気を吐き出して地面を転がった。


圧倒的な出力、無尽蔵の自己修復、そして痛みも恐怖も感じない絶対的な無機質さ。


「ミラ、バム、遠距離攻撃で足を止めろ!


ラナ、ゾラを治療してくれ、防御障壁を張る。」


ミラが両手に銃を構えると連続でゴーレムの体に弾丸を打ち込んでいくが、それすらも数秒で再生してしまう。


ゴーレムが光の剣を構え、無音のままレノに向けて歩み寄る。


ゾラは血の海に沈み、痙攣している。


(今撤退すれば、なんとか生き残れるか・・・。


だが、俺が殿を務めると言って、大人しく下がってくれる連中でもない。倒す以外の道はないか⋯?


そもそも誰がなぜゴーレムを⋯?)


その時。


――遥か彼方の空気が、爆ぜた。


ドォォォォォォォンッ!!!


音が聞こえるよりも早く、一筋の閃光が遺跡の入り口から一直線に空気を切り裂いて飛来した。

それは、光の剣を振り下ろそうとしたゴーレムの「仮面」を正確に撃ち抜き、再生機能を上回る圧倒的な質量破壊をもって、頭部から胸部にかけてを完全に爆散させた。


「……これは」


首から下だけになった白い巨体が、ガクンと膝をつく。再生を始めようとするが、その巨体が美しいバラに包まれてーーー燃え上がった。


そして、ゴーレムはそのまま光の粒子となって崩れ落ちる。


遺跡に静寂が戻った。


濛々と立ち込める砂煙の向こうから、のんびりとした足音が近づいてくる。

魔力残滓で周辺に炎の薔薇を咲かせた青年と、その横で無表情に佇む白銀のドレスに身を包む少女。


「人相手じゃあ無敵でも、純粋な力勝負じゃあ弱いのな。


よう、元気にしてたか?」


レンジはニヤリと笑い、血と泥にまみれたレノたちを見下ろした。


「ヤマトと喧嘩しちまってな。魔法使いと錬金術師、募集してたりするか?」

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