司祭と騎士と事態の終結
書き上がりましたので26話をお送りします。
これで一段落、と行きたいところでしたがそううまくはいかんかった(;´Д`)
26話 - 司祭と騎士団と事態の終結
さて、と。
孤児院の中に戻って来たのはいいけど、まずは子供達の様子の確認だね。
やっと食堂に集まる様になった子供達を見回してみると、やはり何人かは肩を抱き合って泣いていたり、部屋の隅っこで体育座りをしブルブル震えてる子なんかがいる。
そこまでいかない子も顔色を悪くして雰囲気が暗い。
楽しんだり、笑ったりしている子供は一人たりともいない。
それもそうだよな。
目の前で一人死んだんだから。
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孤児院の中まで入り込んだ襲撃者二人。
奴らに気づいて僕が駆けつけられたのは子供部屋で二人組みがまだ小さな女の子を縛って袋に入れている所だった。
二人組みは女の子を入れた袋を担いだまま孤児院の中を逃げ回り、食堂まで逃げたところで、追い詰められていることを悟ったのか、袋に入っている女の子ごと投げ捨て、替わりに近くにいた子供達に切りかかった。
実際攻撃を受けた子は数人いたが、その中でも一人、心臓の傍を剣で突かれて倒れた子がいた。
僕が追いついて最初に見たシーンだった。
剣からはポタポタと血が滴っていて、床にも血溜まりができるほどで、相当な出血量があることがわかった。
なのにその子は剣を掴んで抜かせまいとしていた。
剣が抜かれれば他の子たちにも危害が加えられることがわかっていたからなのか。
子供達の方に顔を向け、「大丈夫だよ」と言わんばかりににっこりと微笑んだその子は襲撃者のほうを見ると、呪うかのような形相で睨みつけ、抑えている剣にさらに力を入れる。
食堂の入り口からその現場まであと少し!というところで、もう一人の襲撃者が小剣を振るい、切りかかる。
避けることもせず、攻撃を受けている子の耳が、腹が、腕が、足が。
どんどん切られていき、さらに流れ出た血や臓物などの身体を構成するパーツが床を赤く染める。
そして首元を剣で撫でられ、今までよりさらに激しく血が飛び散る。
目からは力が抜け、身体にも力が入らなくなったのか、膝を着くように崩れ落ちる。
だけど剣は手放さない。剣を突き立てた男もひっぱったりしているが、全然抜ける気配がないみたいだ。
その様子を見て、走っていた足を止めてしまった。
間に合わなかった。
ジジッ
あと一息だったのに。
パチッ
ごめんね、助けられなくて。
バチッ
こいつらはきちんと始末するから。
バチバチッ
だから。安心して逝ってて。
バチンッ
「ふふ。。。ふふふ。。。。」
嵐雷鵺から。僕の腕から。身体から。髪の先まで。
雷を纏い、空中放電しているのだろう、バチバチと音を立てて蛇のように体中を幾本もの雷が這い回る。
刀をぶらさげ、ゆらりと立つしぐさだが、帯電した髪の毛は逆立ち、まさに「怒髪天をつく」を体現している様子になっている。
纏った雷の周りで風が渦を巻き、ときたま周りにあるテーブルや椅子を切り刻んでいる。
そんな僕を見て、子供達はもう食堂から逃げて壁の向こうから数人が覗いてるくらいになっている。
襲撃者二人組は僕を見て、体制を整え、戦闘態勢を取ってくるがどこか腰が引けている。
子供の命奪っておいてそのざまはなんだよ。
最後までちゃんと覚悟決めなよ。
やるからにはやられる覚悟はあるんでしょ?
刀をぶら下げ、のそりのそり。身体を引きずるようにして二人に近づく。
二人は幽霊や悪魔でも見ているかのように怖がり、武器を投げ捨て、逃げようとしている。
逃がさないってば。
立ち位置を入れ替えるように食堂から逃げるように走り出した二人は、僕の周りで渦巻いている風に身体を刻まれたが、なんとか出口の方に動けたようだった。
ゆっくりと後ろに振り返ると覗いていた子供達はすでにどこかへ逃げているらしく、見当たらない。
だけど腰を抜かしたように這いずりながら出口の方に向かう二人に対して再度歩みを始める。
「ははは。どこへ行こうというのかね」
嵐雷鵺を軽く振り、風の刃を飛ばしながら二人を追いかける。
もう、いい加減めんどくさいなぁ。
「鵺。いくよ」
嵐雷鵺に声をかけるように呟くと、刀身に纏っている雷が威力を増し、入り口までの通路が青く照らされる。
二人までの距離はそこそこあるが、雷を纏った嵐雷鵺を上段に振り上げ、勢いよく振り下ろす。
その瞬間、刀からは雷が飛び、途中までの壁に焦げを残しながら二人を弾き飛ばす。
そのままの勢いで入り口の扉を突き破り、表へ投げ出される。
ゆっくりと。
追い詰めるように。
崩れた扉を越え、外に出る。
そこには神威や他の冒険者達がいた。
もうこいつら気絶だけさせて後はまかせよう。
きっちり仕留めたかったけど。
あの子の敵をとりたかったけど。
それは後にしよう。
他の人に見つかっちゃったから。
正しい裁きがくだらなかったら。
僕が始末にいくから。
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悲惨な惨状になっていた食堂は、カーミラさんによって綺麗に掃除され、机や椅子の壊れ具合さえなければなにもなかったかのように見える。
遺体はすでにどこかへ運ばれているらしく、近くには見当たらない。
子供達はやはりあんなことがあったからか、それぞれに割り当てられている部屋から出てこようとはしない。
たぶん数日はこのままだろうな。
これは。。。依頼失敗かなぁ。
まぁしょうがないよね。
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食堂の椅子に座ってぼーっとしていると、ふと目の前にあっためられたミルクが置かれた。
意識を戻すと、目の前にはカーミラさんが自分の分のミルクを両手で持ち、フーフー言いながらすすっていた。
「シュンさん。落ち込みすぎです。」
がんばって笑おうとしている顔で僕にそう話しかけてくるカーミラさんを見て、うつむいてしまう。
そりゃ落ち込むでしょうよ。
助けられなかったんだから。
「違いますよ。あの子は助けられたんです。」
その言葉を聞いてゆっくりと顔を上げてカーミラさんの顔を見る。
カーミラさんは涙を流していたが、顔はにこやかにしていた。
「孤児院という場所にいる子たちは、親も親族もいないんです。孤児院の子達は仲もよく、仲間意識も強いですが、心から心配してくれる人。というのはいないんです。」
カーミラさんが涙声になりながら、途切れ途切れになりながら僕に言葉を伝えてくる。
「リリックさんや他の司祭さんやシスターさんが来てくれていてもそれはやはり『仕事』なんです。そんな中、シュンさんだけはあの子のためにちゃんと心配してくれた。怒ってくれた。」
瞬の目をしっかりと見ながら言葉を続けるカーミラを僕は直視できなくて視線を宙に逸らし、天井が見えるほど、上を向いてしまう。
「シュンさんが怒ってくれたおかげで、逃げるだけだったあの子達の心にもあの子のことがしっかり刻まれたはずです。あの子はずっと、他の子たちの心の中で生きるんです。それだけでも救われていると思いませんか?」
そこまで話したら限界だったのか、席を立ち、食堂から出て行ってしまった。
そんなカーミラさんを目で追うこともなく、またぼーっと思考の海へ沈んでいく。
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というわけで。
部屋で堂々とソファーに座って筆頭司祭の帰りを待っている神威です。
もう少しでミサが終わるのだろうか、扉越しに聞こえる声もだんだん静かになっている。
窓の外を見るともうそろそろ夕方、ってくらいの時間かな。
鞄から濡羽黒烏を出し、膝の上に置く。
黒烏からはあいかわらず冷気がシューシューと言いながら周りの温度を下げているが、もう少し落ち着け。
君の出番はもう少し後だ。
しばらくそんな感じで黒烏をなだめていると、扉が開き、筆頭司祭と言っていた男が部屋に入ってくる。
「おや。お客さんですか。今日は来客の予定はなかったと思ったのですが。」
「あぁ、突発ですまんね。いろいろと聞きたくてね。」
怪訝そうな顔で俺を見てきた司祭を逆ににこやかな顔で返してやる。
司祭は出入り口側のソファーに腰掛け、俺と相対する。
「それで、どんな御用でしょうか?」
「あぁ、こういえばわかるかな?『失敗したぞ』」
その瞬間司祭の顔が一瞬だけ激しく歪んだが、その一瞬だけですぐに元の無表情に戻る。
「なにがでしょうか?」
「ん?詳細言わないとわからないのか?お前が計画してたこと。全部だよ。あいつらが全部吐いたぞ。」
実際襲撃者達からはなんにも聞き出していない。完全にはったり。
「私が計画してたことですか。身に覚えがありませんが。そもそもあいつらとは誰でしょう?」
まぁそんなすんなり自供なんてしませんよねー。
しゃーない。ある程度はほんとのことを混ぜるか。
「お前の指示で動いていた襲撃者は全員捕縛され、現在もギルドで尋問を受けている。お前の後ろにいる奴らもそろそろわかっているかもな?」
お前の後ろ、といったくだりで司祭が動揺したのが見えた俺は一気に畳み込む。
「後ろにいる奴らは計画に失敗したお前をどうするんだろうなぁ。筆頭司祭からの降格、司祭資格の剥奪、街からの追放。ですめばいい方か?その後暗殺者でも向けられ口封じかな。」
司祭は顔をかえず無表情ではいるが、目からはさっきの言い張っていたときのような力はなく、死人のような目になってきている。
「そうですか。そこまで把握されているんですか。じゃあ今更逃げたり言いつくろったりしても無駄みたいですね。」
その後は立ち上がった後、両手を広げ、高らかに、司祭が計画していたことを自信満々に自白を開始した。
だいたい予想通りで、貴族へは性奴隷や快楽殺人のための獲物として。自身が裏で仕切っている奴隷商では他の街で売るための商材として。
そして騎士団にまで、『人を殺す』練習をさせるために小さな子を引き渡していたことまでわかった。
その見返りは金であったり、立場保護であったり、さまざまらしい。
最低だ、こいつ。
というか騎士団までもか。
どうりでもみ消されたとかって話になってるはずだ。
腐ってやがるな、こいつら。
ひとしきりの演説が終わったのか、両手を下げ、急に落ち着いた雰囲気になった司祭は後ろの扉を開け、さきほど氷漬けにして退治した騎士団とは違う奴らを部屋に招きいれた。
「騎士団のみなさん。部屋に盗人が入っていました。捕縛をお願いします」
急に堂々とした態度で騎士団に対して命令を下し始めた司祭をゴミでも見るような目で見下してやる。
「俺だけどうにかすれば事態は好転するとでも?」
「他に情報を知っている者はいません。拉致を依頼した奴らも毎回変えていますし、詳細は伝えていません。だから貴方さえどうにかすれば問題は表に出ないんです。」
「だからあんな自信満々に自白したのかい。くだらねぇな。」
自信たっぷりに胸を張り、俺を捕縛しろと言っている司祭は部屋の外に出て、代わりに騎士団の人間が数人入ってくる。
「この盗人め。お前はこれから捕縛され、王都に搬送され、王自らの裁判にて実刑を言い渡される。ちゃんと死刑になるように嘆願してやるからな」
「それは嘆願っていわねぇよ。」
いつもの癖でつい突っ込みをしてしまった。
『まぁ王都まで来る必要もないがな』
突然部屋に響き渡る渋い声。
騎士団の連中も司祭も周りをキョロキョロしてるからこいつらじゃないのは確かだな。
『光神教会、筆頭司祭ティーカイズ。お前が自白した内容は王都議会の全員で聞かせてもらった。そこのカムイという人間が無実だということも今この場で国王である、このわし、ガハナ・フォン・タタールトが宣言しよう』
この渋い声は国王さんか。
イケボごちそうさまです。
そういや司祭の名前、ティーカイズとかって名前だったっけ。
瞬から聞いてはいたけど覚えづらいから覚えてなかったわ。
声が聞こえるのは俺のポケットのズボンに入れっぱなしになっていた、ダンに渡された石みたいだ。
鑑定しようとおもっててそのまま放置だったけど通信石とかそういうのだったのね。
石を机の上に取り出し、国王の声がはっきり聞こえるようにすると、騎士たちはうろたえ始め、ティーカイズを再度部屋の中へ連れ込もうと部屋の外へ動き出す。
そして騎士達がティーカイズを捕まえ、部屋に連れて来るとティーカイズは石に向かって正座し、言い訳を始めた。
「違うんです!これは誰かの策略です!そうだ、きっとこの小僧の!」
俺のせいかい。
自爆したのはお前だろうに。
『言い訳は王都で聞こう。王侯裁判でな。逃げられない様に先ほど王剣を飛竜で送った。あと一刻もしないでつくだろう。あとそこにいる騎士団連中も同様だ。覚悟しておけ。』
ティーカイズはがっくしと正座のまま、床に手を着きうなだれ、後ろで様子を見守っていた騎士達も落胆した様子で立ち尽くしている。
これで俺の仕事は終わりかな?
王剣とやらがこっちに着くまで見張っておくくらいかな。
『そこにいるカムイとやら。今回の件では礼を言う。ダンに報酬を渡してあるから受け取るとよい。』
「了解いたしました。ありがたく頂戴いたします」
念のため、ティーカイズと動ける騎士達を捕縛スキルで縛って部屋の隅に固めておく。
ソファーにどっしりと座り込み、身体を投げ出す。
身体がソファーに沈むが、それが心地よい。
んじゃもうしばらく残業しますかね。
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ありがたやーありがたやー




