嵐雷鵺
おまたせしました。20話です。
めでたくユニークが300人突破!
ありがたいことです。はい。
20話 - 嵐雷鵺
瞬です。
今、目の前では昨日助けた子が神威に抱きついてものすごいにこやかな顔で感謝の言葉を述べとるとです。
僕もその場にいて一緒に助けたというのに確実に目に入ってないとです。
こういうモテ役はいつも神威だけというのに理不尽さを得ないとです。。。
瞬です。。。瞬です。。。瞬で。。
朝起きてギルドで残りの依頼の日程を聞こうと思っていたら、宿屋の女将さんに教会のミサは明後日だっていうのを聞いてギルドにいく必要がなくなってしまった。
なので神威が女の子に来てと言われていた鍛冶屋に朝から来ています。
店の扉をあけて中に入ったとたんの出来事が先ほど言った光景です。
後ろで鍛冶屋の親方さん、たしかガンドルフさん、が微笑ましくも嫉妬の目で神威とその子を見ています。
ガンドルフさんと目が合い、神威を生暖かく見るその様子はなにやら通じた様で、お互いの心の中で「同士!」とか呟いていることだろう。
神威も困惑しながらも若干嬉しそうな顔をしてその子の相手をしている。
リア充爆発してしまえ。
傍からみたらいちゃついている様にしか見えない二人はほっといて、周りに飾ってある武器を眺め始める。
こういう所に来るとファンタジー世界だなぁ、と実感がわく。
壁沿いにおいてあるロングソードを手に取ってみる。
重い。
剣術スキルがないからなのか、僕にそもそも力がないからなのかはわからないけどこれは振り回せないなぁ。
いろいろな形状の武器を手にとって試してあきらめて。を繰り返していると、女の子の代わりにカウンターに座っているガンドルフさんが声をかけてきた。
「おまえさんもユーゲンの弟子なのか?」
ユーゲン?幽玄?お師匠さん?
「幽玄というのはたしかにお師匠さんの名前ですが、知ってるんですか?」
「おう。そこのカムイにも話はしたが、昔はよく奴の武器の世話をしたもんだ。」
お師匠さんがこっちの世界に?
神威に目をやると、後で話す。とだけ言って女の子、名前をリタというらしいが、二人で店を出て行ってしまった。
神威は女の子と仲良くおでかけ、僕はおっさんと二人きり。
この差はなんなの。。。?
「お前もカムイと同じでカタナを使うのか?」
「はい。お師匠さんからいただいた刀を使っています。」
「ユーゲンの弟子だから刀術は当然のように持ってるんだろうな。どれ、見せてみろ」
「あ、はい。これです。」
鞄から刀を取り出し、ガンドルフに渡す。
鞘から抜き、刀身の歪みや刃こぼれなどを確認している。
「カムイの刀は見たか?あれと同じように銘入れして付与することができるがどうする?」
「え、いいんですか?」
「ユーゲンの弟子なら問題ない。悪いようには扱わないだろうしな。カムイも変なことには使わないだろう。」
「変なことって。武器を強くしてくれるのは助かります。」
「カムイのと同じで、水属性がすでに付けられている。氷か雷しか付けられないはずなんだが、なにかおかしい。付与できる属性はもう一度調べるが、あと一つ付けられると思えばいい。あとはこの刀に入れる銘を考えておけ」
といい、作業場から複数の魔石を持ってくる。
カウンターに置いた刀の刃の部分に魔石を一個ずつ当てていく。
落とす魔石の属性によって、キンだったりカンだったり音が変わるのが面白い。
「この刀に付けられるのは風属性だな。もしくは上位属性の嵐属性。」
付与できる属性がわかったようだ。
石を当てたときにキンって音がしていた属性かな?
それにしても嵐属性って。
惹かれるけど使いこなせないに3000点。
「嵐属性ってのがあるんですか。。。」
「んむ、水、風、雷の3属性が混合した属性だ。うまく扱うのは大変だが、カタナ使いには好まれる属性だな。」
「ほー」
「風属性で敏捷向上、雷属性で身体能力向上、水属性で体力消費軽減。と思えばいい。実際水属性はすでにカタナが持ってるから上書きみたいになるけどな。」
「うは。なんという至れり尽くせり。」
「他に付与した属性での攻撃、にもなる。」
「わーお。でもお高いんでしょう?」
「金なんか取らんよ。ちゃんと使いこなせる自信があるなら、な。はっはっは」
そういってガンドルフさんは高笑いしている。
嵐属性かぁ。
僕の戦闘スタイル的にはたしかにちょうどいい。
だけど使いこなせるのかなぁ。
雷をまとった刀での斬撃。
まとった風を真空波のように飛ばす斬撃。
うん、萌える。
神威のが氷だからかぶらないしいいんじゃないか?
「嵐属性を付けてみてもらっていいですか?使いこなせるようにがんばりますので。」
「おう、わかった。やっておく。銘はどうする?」
「少し時間をください。考えます」
「わかった。属性付与で3時間程度時間をもらう。昼にでも行って一休みしてからまた来い」
「はい。ではお願いします。」
----
店を出て満腹亭に移動して、お昼ご飯を食べようとする。
いつものツンさんが相手をしてくれるが、ふと依頼で名前の出ていたラルゴさんってのはどうしたのかを聞いてみる。
「あー、他の依頼を受けたやつからの情報で必要な食材を買いに出てるよ。店は俺と二人でやってるんだが、食材確保がラルゴ担当、みたいになってるな」
「へぇ、そうなんですか。ふと依頼書を見てん?って思っただけなのでー」
「あれなー。ほんとは実際に調理をする俺の名前で出そうとしたんだが、ラルゴの名前で出した方がレシピが集まりやすくてな。。。」
「?? なんでですか?」
「定食屋にレシピを持ってくるような料理に詳しいのは家を守っている女性がほとんどだ。後は察しろ」
「あぁ。。。そういうことですか」
ラルゴさん目当てでくる奥様連中に期待してたわけですね。
もげてしまえばいいのに。
ツンさんと二人、何かでつながったのを自覚し、空を仰ぎ、「青いな。」「あぁ」と呟く。
「それはそうと、から揚げやら米やらはどうなったんですかね?」
「米は今、商会を通して手配中だ。陸竜便で取り寄せると言ってたからあと二日くらいで届くそうだ。」
「どれくらいの距離があるのかわからないけど、それってお金すごいかかるんじゃ?」
「曲がりなりにも竜を使ってるからな。ただ米自体、釜一杯分しか頼んでないからそんなに高くもない。モノになるかわからんものにそこまで金はかけられんからな」
「ですよね。でもあれはハズレがない料理です。」
「うまいのが出来たら定期的に仕入れるような算段もつけてある。後は俺の腕の見せ所だな」
「がんばってくださいね。食べに来ますよ!」
「おう、まかせとけ。から揚げは、いい感じのものにはなった。食べてみるか?」
「お、出来上がったんですか?じゃあ食べますー」
「おう、銅貨5枚だ。」
鞄の中に入っていた巾着から銅貨を出し、ツンさんに渡す。
厨房に入って5分ほどで皿に山盛りにした唐揚げを持ってくる。
見た感じ鳥半分、豚半分、かな?
まずは鳥の唐揚げを口に入れる。
あちち。
噛んだ瞬間に肉汁が口の中に広がり、鶏肉のうまみが溢れ出る。
衣も片栗粉だけのモノとは違うようで、胡椒や塩で絶妙な味付けになっている。
「おおお、これはうまい。」
「だろう?」
ツンさんは腕を組んだまま、胸をはり、ドヤ顔をしてくる。
次は豚。
サイズは。。角煮くらいのサイズかな?
同じ衣をつけてはいるが、中に入っている肉は全然味わいが違う。
ちょっと固めかな?と気合を入れて噛みこんだら歯がガチッという音を立てる。
力を入れなくても噛み切れるほど軟らかくなっている。
衣はさくさくで中はとろっとろになった角煮と同じような感触。
これはうまい。
びっくりしている僕の顔を見てツンさんはしてやったりとニヤリとする。
いや、ほんとうまいわ、これ。。。
一晩でここまで改良するとか。素直に尊敬するね。
僕が美味しそうに食べているのを食堂にいるほかの人たちが見て、ツンさんに俺にもあれをよこせとか言い寄っているのは見なかったし聞かなかったことにしよう。
----
おなかもいっぱいになったところで刀の名前か。
何がいいかなぁ。
雷属性の刀。
うーん。
雷切とか言われた備前長船兼光とかってのも考えたんだけど、雷を切るんじゃなくて雷の武器。だしなぁ。
素直に雷神様の建御雷とかにしておこうかなぁ。
雷獣の鵺とかでもありだよな。
神威のが鴉だっけか。合わせて鵺にしておくかなぁ。
『嵐雷鵺』とかはどうだろう?
妥当な線かな。
こういうネーミングセンスは神威のほうがいいから相談したかったんだけどなぁ。
これだからリア充は。
----
しばらく市場や屋台をうろついて時間をつぶし、頃合になったら鍛冶屋へ向かう。
すでにカウンターにはガンドルフさんが座っていて、鞘に納められた刀を布で拭いている。
「おまたせしました。」
「おう、ちょうどさっき出来上がったところだ。銘は決まったのか?」
「はい。この銘を入れてください」
嵐雷鵺 と目の前におかれた紙に細い木炭で書き込む。
「ふむ。これはどんな意味があるんだ?」
「雷が降りしきる嵐を纏う、鵺という雷獣。の名前ですね。」
「ほほう。このカタナにちょうどいい名前かもしれんな。ではちょっとまってろ。」
ガンドルフが柄を外し、顕わにした茎の上に銘を書いた紙を乗せ、ノミを当てる。
一度カツンッとノミを茎にあてると紙が淡く光って消え、後には綺麗に銘が彫られた茎があった。
いままで使っていたときより遥かに自分とつながった感じ。
刀に意思が宿ったかのように僕を求めてる。
ちょっとまっててね。
ガンドルフさんが柄を再度はめ、目釘を打つ。
鞘に納められ、「ほれ」と渡された途端、刀に何かが吸い出された感じがした。
背中がぞくっとした途端、足に力が入らなくなり、床に座り込んでしまったが、ガンドルフさんはそんな僕を生暖かく見守っている。
「ははは。だいぶ抜かれたな。」
「抜かれた。。って。。なにを。。。?」
「魔力だよ、魔力。上位属性って言ったろ?それだけ必要とする魔力も多いんだよ。で、吸われて魔力が足りなくなった状態がそれだ。」
「魔力。。。ですか。。。」
「カムイのヤツは平気そうだったぞ?」
「なんですと?」
神威が平気だったのなら僕も負けちゃいられん。
手をつき、がんばって立つ。
まだめまいがしているがなんとか歩けそうだ。
「それだけ吸ったなら相当なカタナになってそうだな。ちょっと抜いてみろ」
「はぁ。。。」
刀を鞘から少し引き抜く。
刃にパリッと電気が走る。
おおお。
鞘から全部抜いた瞬間、刃が紫色に光る電気で纏われる。
おおおおおおおお。
2~3度軽く振る。
軌跡に合わせて紫の線と少し遅れて雷が追従する。
やべぇ、かっこいい!!!
「店の中でそんな危ないもの振り回すな!」
「あ、はい。」
「試し切りしたいなら店の裏行け。」
「いいんですか!?」
「そんなうずうずした顔のおまえを街に投げ出せないわ。。。はよこい」
そんな顔してたのか。恥ずかしい。
----
大体15坪ほどの空きスペース。
真ん中には皮鎧をかぶせた案山子が置いてある。
「カムイから聞いたが刀術はお前のほうが扱えるらしいな。よかったら見せてくれないか?」
「あ、はい。この案山子を切ればいいですか?」
「おう。代えはあるから好きにやれ」
「了解」
刀を左腰に合わせ、右手で柄を握る。
足は肩幅に開き、右足を少し前に。
心を空に。
刀に心を通す。
「。。。小鳥遊流刀術。。。居合:断」
力を入れず、刀をふるう。
刃は紫の線を宙に残し案山子を通り抜け、刀を柄に納める。
案山子がするっとズレて、地面に落ちる。
切断面ではバチバチとした音がたっており、焼け焦げている。
「。。。ふぅ」
「いや。。。なんていうか。。。すげぇもんだな。ユーゲンもすごかったがおまえも大概だな。」
「お師匠さんほどじゃないですよ。お師匠さんならこんな焦げ後すら残さないほど早く振りますよ。」
「そんなかよ。俺といたときは全然本気じゃなかったんだな。」
「まぁお師匠さまですから。」
「まぁユーゲンだしな」
二人で台詞がはもり、大笑いをする。
「大事に使えよ。」
「当然です。ありがとうございます。」
嵐雷鵺と名づけた僕の刀。
あと2週間ほどだけど。どこまで使いこなせるかわからないけど。
よろしくね。僕の相棒。
雷で鵺というとアーシェス・ネイの雷神剣が頭に浮かびます(;´Д`)
ではまた明日ー




