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侵略者

17話です


途中少しだけグロ表現があります。ご注意を。

17話 - 侵略者


気がついたら結構な時間、地下室にあったベッドで眠ってしまったらしい。

たぶんもう少しで約束のお昼くらいだろう。


地下室の中は明かりがまったくないため、外の様子はわからないがおなかの具合から大体の時間を感じる。


はしごを登り、部屋に戻る。

この部屋にも窓はないため外の様子はわからない。


結局ゴブリンと戦う決意はできないままだったが、それでも刀を持ち、服装を整えて出発する準備を行う。

扉をあけ、部屋から出ると、結界らしい場所の前に、ゴブリンが5匹、こちらを向いて待っていた。


「ソロソロイクノカ?」

「うん。見送りに?」

「ホウコクダ。イマアノバショニイルノハ、ワシラトクルコトヲコバンダモノダケダ。」

「。。。りょーかい。」

「ヒトトアラソワナイモノハスデニベツノバショヘウツリスンダ。アトハオマエノスキニスルトイイ。」

「感謝、する。。。」


なんだかなぁ。。。なんで話できちゃんだろ。


「ねぇ。。。ちょっときいていい?ゴブリンって種族はみんな君みたいに、いろいろ考えてるのかな?」

「アタリマエダロウ?ケモノダッテ、クサキダッテ、イキルタメニイロイロカンガエテイル。イノチアルモノ、ソレハミナオナジジャナイノカ?」

「。。。そうだよねぇ。」

「ナニヲナヤンデイルノカシラナイガ、アイツラハヒトトテキタイシタ。ダカラヒトニカラレル。シゼンノセツリダロウ」

「そんなもんなのかねぇ。」

「カルモノハカラレルカクゴヲモテ。アタリマエノコトダ」


狩るものは狩られる覚悟を持て。


今回ゴブリン達は人を狩っていた。そして敵対。

そのゴブリン達は今回僕に狩られる立場になった。

その僕はいつか誰かに狩られるのかな。


なんか僕よりゴブリン達のほうが物事をしっかりと考えているのがちょっと悔しい。

でもこのまま踏ん切りがつかないで戦闘になったところでいい結果になるなんてことはないはず。

気持ちを切り替えなきゃ。


「ワシラハ、ココカラダイブハナレタトコロニアル、ドウクツニスミカヲウツシタ。コンドコソ、ヒトトテキタイスルモノガデナイヨウニ、キヲツケヨウ」

「そうしてくれるかな?ここまで話がちゃんとできたゴブリンが人に狩られるところとか想像したくないからさ」


僕の言葉を聞いてしゃべっていたゴブリンがニヤッとした笑みを返す。


「オマエガ、ハナシガワカルヤツデヨカッタ。ワシラゴブリンハオマエニ、カンシャスル。」

「感謝なんてしなくていいよ。その代わりしっかり生き延びて。人に迷惑をかけないようにね」

「ワカッテル。デハワシラハソロソロイク。」

「うん。ありがとう。こっちもがんばるよ」


5匹のゴブリンが揃って僕に礼をし、森の中へ消えていく。


狩るものと狩られるもの。か。


まぁそうだよね。

ゴブリン達は狩ったから狩られる。

それでいいじゃないか。


元々、人は傲慢な生き物。

依頼を達成するために。貴重な素材を手に入れるために。自分の力量を試すために。ゴブリンを殺し、魔物を殺し、竜をも殺す。

『法』という枷がないのであれば、その対象が人。ということもあっただろう。

そのくせ可哀想なんていう感情で行動を制限するのなんては当たり前のようにある。

まるっきり僕だね。

話が通じたから。考えが、生き方が、相手のことがわかった気がして急に手を出すのが怖くなる。

傲慢以外の何者でないね。


自然の摂理の中で生きている存在に、ただただこっちの都合で災厄を与える。


侵略者。


そんな言葉が頭に浮かぶ。


そうだよね。ゴブリン達にとっては僕は侵略者だ。


いくら建前や綺麗ごとで飾ったところでやることは殺戮。


僕の心一つでゴブリン達の生き死にが変わる。


僕はたしかに向こうの世界でも獣を狩ったりしていた。

こっちに来てからもすでにゴブリンを数体屠っている。


だけどそれも今までこういったことを考えない状態でやってた。

ゲームや物語と同じように考え、どこか他人事のように思っていた。


命を奪う。

それがどういうことなのか、というのが麻痺してたのかもしれない。


獣だから。魔物だから。

でも同じ命だった。


だったら。


せめてこの世界で僕だけでも、命を奪うということ。そしてその相手も『生きていた』ということを理解しておこう。


それがせめてもの供養になるかな。


半分自己暗示だけど、なんかモヤモヤしてたのが少しだけ晴れた。


----


日もちょうど真上から少し降りたくらいになる。

天気もよく、雲一つない。


ゴブリンの集落が一望できる所に再度到着したが昨日とは打って変わって集落の中は静かだった。

あのゴブリンが集落内で話をした際、やはり対立派はここに残って戦うことを選択したらしい。


しばらく集落を観察し、建物の配置や戦い方を考えていると、家の中からゾロゾロとゴブリン達が出てきた。

聞いていた通り、大体の数は200。


それぞれ剣、槍、斧、棍棒などで武装をしている。

中には魔法使いのような格好をし、杖を持っているゴブリンもいる。ゴブリンメイジとかってやつかな。


広場みたいなところで綺麗に整列し、先頭で集団に向かってなにかを叫んでいるゴブリンがいた。


あいつがボスかな。ゴブリンリーダー的な。


集会っぽい感じの集まりが終わったみたいで広場で整列してたのは崩れ、ばらばらになっている。


気が緩んでいるここが勝負かな?


音を立てないように崖から飛び降り、刀を抜きながら集落へ向かって突っ込む。


途中、家から出てくるゴブリン達を、横を通り過ぎる際に刀を入れ、絶命させていく。


広場に着いたところで近いところから、気が緩んでいたゴブリン達を切り付けて行く。

腕が飛び、足が飛び、首が飛び、腹からは臓物があふれ出る。


そんな死体が100を越えた辺りで、広場の向こう側にゴブリン達が陣を作っていた。

その先頭には先ほど指揮を執っていたゴブリンリーダーが立っている。

リーダーは2m近くあり、他のゴブリンの倍程度の身長がある。

ゴブリンというより、トロルといった肉のつき方をしている。


「コロセ!!!!」


リーダーの掛け声と共に後ろに備えていたゴブリン達が武器を振り上げて襲い掛かってくる。


舞踊スキル、オン


頭の中でスイッチを入れるようにスキルを使用する。

よく考えたら明示的にこのスキルを使うのは初めてだな。


先頭を走るゴブリンが到達する前に軽く刀を振るう。

身体がいつも以上に軽い。


先頭集団が到達するがイメージ的には『雪崩』だね。

結局陣形もなにもなく、ただ到着した順に襲い掛かってくるだけ。


振り下ろされた武器を躱し、代わりに刀を振るう。

剣舞のように刀を、身体を動かし、襲い掛かる脅威を捌いていく。


あれだな。舞踊っていうより雑技団的な動きだな、これ。


遅いかかられるだけでなく、身軽に動く身体を生かし、徐々に前進していく。

もうほとんどのゴブリンは負傷し、また絶命し、戦闘から脱落している。


そしてリーダーの目の前までたどり着くと急に周りのゴブリンからの攻撃がなくなる。


「ヨクゾ、ココマデキタ。」

「そういうのは魔王の台詞だよ。ゴブリンリーダーが言っていい台詞じゃない。」

「ヒトニシテハゴブリンノコトバガワカルヤツトイウコトハキイテイタガホントウニワカルンダナ」

「そーだね。わかりたくなったけどね」

「マァソウイウナ。サァ、タタカオウジャナイカ」


そういうと包丁をそのまま1.5mくらいまで大きくしたような武器を振りかざしてくる。

おおう、これが戦闘狂(バトルマニア)というやつか。


刀を構え、大包丁に向かって相対する。


しばらく隙を伺っていたが次の瞬間、目の前のリーダーが急激に間合いに飛び込んできて大包丁を横なぎに振り切る。

結構慌てて後ろに下がり、大包丁を躱すと空振りになった勢いでゴブリンは後ろを向いている。


今度はこっちの番、とばかりに後ろ向きになっているリーダーに刀を逆袈裟に振り上げる。

その攻撃はリーダーに横に動いただけで躱され、宙を薙ぐ。


動きが早いなぁ。


「ツヨイナ、オマエ」

「速いね、君」


お互い一撃ずつしか放っていないが大体の実力は見えた。


先ほどと同じように相対し、武器を構える。

今度はリーダーは上段からの振り下ろし、そのまま掬い上げ、右からの袈裟切りと続けて大包丁を振り回し、全部を躱すと最後にショルダータックルをしてきた。

タックルがくるとは思わずまともに受けてしまったが、そのまま勢いで宙を舞い、ダメージもほとんどなく後方の方へ無事に着地をする。


手ごたえがなかったことがわかったのかリーダーも大包丁を振り上げ、追いかけるように突進してくる。


一度刀を鞘に仕舞い、居合いの型を取る。


「小鳥遊流刀術。壱の剣。燕」


大包丁を振り上げたまま間合いに入り込んできたリーダーへ、こちらも超高速でダッシュした上での抜き胴を行う。

大包丁を振り下ろそうとしたリーダーはその攻撃で身体が上下に別れ、地面へ落ちる。


恨めしそうな目で僕を見ながら、そのまま絶命する。

大丈夫、君が「生きてた」ことは僕が知ってる。

だから安心して逝くといい。


リーダーがやられてパニックになった残党も、逃げ出そうとしたゴブリンもみな残らず仕留める。

集落に残っているゴブリンが全滅するまでそれは続く。


----


日が暮れるまで続いたそれは、いつの間にか刀を受けるものがいなくなっていた。

着ていた服、刀、そして顔。

総てがゴブリンの緑色の返り血で染められ、まるで殺人鬼の様相になっている。


「終わり。。。かな?」


広場には死体となったゴブリンが積み重なっており、血の匂いが充満している。


「後はここを巣の後だと報告して。。。終わりかな。。。」


なんとなくブルーな気分のまま、集落を出て、森に入り、一度あのログハウスへ向かう。


部屋の中にあった鏡に映った血塗れの自分を見て、ぼーっと服を脱ぎ、水をかぶり、身体を綺麗にする。

血塗れになった防具や服はそのまま処分し、違う服を身に纏う。

今度のは白いシャツに薄い灰色のズボン、その上に紺色のロングコート。

神威なら膝下くらいの長さなんだろうけど僕が着ると足首あたりまである。


コートを着たまま、ベッドに倒れこむ。


「なんか、疲れた。」


減ったおなかを無視してそのままベッドのやわらかさを堪能しているとそのまま眠りについてしまった。


----


なんとなく動きたくなくてそのまま丸一日。

ログハウスでぼーっと過ごしていたが残りの依頼もあるしなぁ。と街に戻る事を決めた。


街へ到着し、門番にギルドカードを提示する。

顔色が悪いと心配され、治療院へ連れていこうとされるが丁重に拒否する。


とりあえずゴブリンの件だけでもギルドに報告するか。。。


リオナさんの所にゴブリンの巣を見つけて殲滅してきたことを告げるとものすごい心配された。

なんでもすごい真っ青な顔をして、ほとんど無表情になっているらしい。


巣を殲滅してきたことに驚かれるより、僕の顔色が悪い方が大事なんだろうか。


ゴブリンの件は巣の場所と規模を報告し、殲滅してある旨を護衛団に伝えるらしい。

それで確認が取れたら依頼は完了。


神威もちょうど半日前くらいにギルドに来て全部の依頼が完了したと報告してきたらしいから合流しようと思う。


ギルドを出てくるときに酒場席から「舞姫の男装ハァハァ」とか「ショタっこ。。。ありね!」とかが聞こえたが無視。


さて、神威は宿にいるのかなー・・・?


どうでしたかね。

瞬くん考えすぎのような気もするんですが。

しかも納得いく結論が出ていない件。


あぁ文才がほしい。

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