表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この記憶の片隅に  作者: さんしあ
3/22

1-2

『新宿、新宿です』


どうやら、電車が駅に到着したようだ。僕はスマホを見ながら、ちらっと見える前の人に

続く。


既に僕が入るころには電車の中は人がいっぱいだった。


これ以上はもう入りそうもないのだが、一人の女性が身体を押し込んで無理やり入ってき

た。それにもう一人、もう一人と続く。流石にもう無理だ、勘弁してくれと思っていると、

遠くから駅員がやってきて、僕たちを押し込む。そうして満員ギチギチになった電車が、

僕たちを乗せて出発する。


こうなったら、僕はもう身動き一つ取れない。片足も浮いていてまともに立つことすら出

来ない。


何だこれ… 今僕どういう体制だ… ?


そう思う暇も既になくなっていた。


こんな体制なのに、僕はなんとか右手を動かし、スマホを取り出して、それを顔の前に持

ってきて、画面を見つめた。


そうしていくうちに、いつしかこの混雑も忘れてしまっていた。


これが僕の日常だ。


『世界で最も安全な国』


日本。


ご飯も美味しく、お店でカバンを置いてトイレに行っても盗まれることのない、安全神話

があるこの国。


毎日電車で会社に通っていると、それをよく実感する。椅子に座り気持ちよく寝ているサ

ラリーマン。いつ財布を盗まれてもおかしく無い状況の満員電車で、殆どの人がスマホに

夢中になって注意力散漫だ。


みんな何のために生きてるんだ。


たまに僕は、自分自身がわからなくなる。自問自答しているうちに、それすらもどうでも

よくなって、スマホの中の情報に夢中になる。


僕も同じだ。この人たちと何も変わらない。ただの一人の人間。


こんなことを考えながら、会社帰りにくたびれたスーツを身に纏い、黒の四角い手さげ鞄

を胸と腕の隙間に挟み、スマホでどうでも良い明日には忘れる程度のニュースを見漁って

いる。ポケットに入っている財布は、今コッソリ盗まれても気が付かないだろう。


『芸能人の〇〇が不倫関係を暴露… 』

『少年の凶悪犯罪を無くすには… 』

『若者失踪率が三年連続上昇… 』


興味ある記事をタップする。


『… 近年、若者の失踪率が増加し、全国で三〇代以下の若者が年間何万人も理由なく失踪

しているという事態が発生しており… 』



ここまで見て、記事を閉じる。


興味ない。


しょうもない。


日本の未来は明るいだって?


明るいのはスマホの画面だけだよ… 。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ