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この記憶の片隅に  作者: さんしあ
2/22

1-1

1.


今でもたまに夢に見る。


「… はい、オッケー。これで問題無いでしょ。お疲れ様」


この夢を見た日は、決まって寝覚めが悪い。


「はい、ありがとうございます」


あれは… そう、小さい頃、公園で楽しそうに遊んでいた記憶だ。


「じゃあ、今日はもう帰っていいよ」

「はい、それじゃお先に失礼します」


当時は無邪気に、将来のことなんて何も考えてなくて、ただ、今が楽しくて仕方が無かっ

た。家に帰ったら、お母さんの作ってくれたビーフシチューの匂いがして… 。それだけで

幸せだった。


あれ… あの時公園で遊んでいた友達、誰だっけ… 。


「はい、お疲れ」

「… あ、はい!お疲れ様です」

「… ?なに、疲れてる?」


僕が上の空なのに気づいて、上司が心配してきた。


「いえ、大丈夫です!」

「… ちゃんと寝てる?」

「はい、お気遣いなく、それじゃ、失礼します」

「あ、ちょっと!」


明日会議で使う資料を上司に確認してもらい、今ちょうどオーケーしてもらったところだ。

僕はペコリと頭を下げると、机にある荷物を纏めて会社からそそくさと抜け出した。


はぁ。疲れた。


会社入り口で社員証をタッチするとゲートが開く。僕はボーっと何も考えず、会社から飛

び出した。


頭に靄がかかったような状態のまま会社を後にし、いつも通り駅に向かう。錆びついた頭

で、駅の人混みを意に介することもなく、スマホをジーっと見ながら駅の改札に立つ。


「… !」


突然右肩に衝撃が走った。僕はスマホの画面から目を離して頭を上げた。仕事帰りだろう

か、乗り換えで慌てて走っていた初老の男性が僕の肩にぶつかったようだ。


「… チッ」


男は僕に聞こえる程度に舌打ちをしてどこか人混みに紛れていった。


… ちょっと待て、お前が勝手にぶつかってきたんだろ!


そう思ってイライラしたが、言い返す相手はもうどこか遠く。


仕方がないので僕はまたス

マホの画面に目をやった。そうしているうちに、いつしか怒りも消えていった。



なんだこの人生。つまんないの。


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