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番外編 傷だらけのドラゴン



2、3話の間のお話になります

 重そうな鞄を肩から提げた少年は、静かな森奥深くにある大きな家の扉を勢いよく開けるなり、


「ただいま!ドラゴンは?!」


 と誰がいるかも分からずに聞いた。案の定誰も居なかったが、床を見ると空き部屋へとぽつぽつと血が続いていた。

 それに気付いた少年は小さな悲鳴を上げて空き部屋へと向かう。

 ゆっくりと中を覗くと椅子に座る大男の後ろ姿が見えた。その前にはベッドがあり人が横たわっていて顔からして、多分女の子だ。

 目を瞑っており起きる気配がないが、胸の辺りが上下に小さく動いているので生きている事が確認出来た。


「おかえりラルゴ」

「ただいまアドルフ。状態は?」

「師匠が魔術をかけてくれたから、傷は大分塞がってきているはずだ。苦しむ様子もないしな」

「そっか、良かった。……やっぱり火傷してるね」


 少年ラルゴは大男アドルフの隣に立って、ベッドの上で眠る少女を見る。

 薄い掛け布団と丁寧に巻かれた包帯で顔が少し見える程度だが、そこからでもどれだけ酷い目にあったかが伺えた。否、ラルゴは見ていた。


 この少女がドラゴンの姿で苦しめられる様を。


 勇者の少年に刺され魔術師達の炎や矢の攻撃を受けて鳴き叫ぶ声を聞いていた。

 本当はそうなる前にどうにかして助けてあげたかったが、闘技場の壁、観客席には大勢の人がいるため壁を壊して逃がすことは難しかった。逃がすとすればその上空だがドラゴンは暴れ回る。話しかけようにも魔術が上手く伝わらなかった。

 やっと上空に行ってくれたがもちろん逃がさないために大勢の魔術師達で作られた結界がある。

 だがチャンスだとばかりに森のある家の方角に魔術で穴を開ける、がタイミングが上手く合わない。長く魔術を使えば宗教団にバレてしまう可能性がある。側にいるのも宗教団の崇拝者ばかりなのでもし逃がしたのが自分だとバレたらという恐怖と戦いながらタイミングをみはかる。ドラゴンは同じルートを暴れ始めたことに気付き、魔術を小さな声で唱える。そうすればドラゴンはぶつかりながらも外へと逃げて行った。そのまま真っ直ぐ森まで入ってくれればと願ながら結界に穴を開ける事でかなり消耗した魔力を使い、家にいるだろうアドルフと師匠に連絡をとる。


 予定通り火傷などの怪我をしたドラゴンが森へ向かった。家に匿って助けてあげて、と。


 アドルフと師匠はそれを聞き付けドラゴンを探しに行った。魔術で森に自分達以外の生き物が動いていることを確認しながら探すと丁度空からドラゴンの姿から人の姿に変わろうとする少女が落ちてきた。

 アドルフは少女に止血をしてから家まで運び、師匠は自作の薬と魔術で回復を早める。そして今に至るのだ。


「一度、目が覚めたんだ。けどちょっと失敗してな」

「アドルフは異界の事となると興奮するからね。気をつけてね」


 アドルフは口を結びポリポリと頭をかいて少女の顔を見る。哀しそうな顔で。


「本当、酷い火傷なんだ。まだ子供なのに。……さっき師匠に薬を頼んだ。もう回復魔術使えないなら火傷が出来るだけ残らない薬を作ってくれって」

「そっか。……アドルフずっと看ててくれたんだよね。ありがとう。僕が代わるよ」

「ラルゴも今さっき帰ってきたばかりだろ」

「大丈夫。それに目が覚めた時、アドルフ達より僕の方がいいと思うんだ」


 そうニコッとしながらラルゴが言えば、アドルフは何も言えず椅子から立ち上がる。そしてその椅子に座るように促した。ラルゴが椅子に座ってから、水を持ってくると言って部屋を出て行った。



「やっと助けられた」


 ラルゴは一人そう、ぽつりと呟く。

 1度目は自分には魔力がなく、2度目は魔力はあったが使いこなせなかった。そして3度目、こうして命はある。だが救えなかった命は沢山ある。

 終わらせなくちゃと自分に誓い、残りの魔力を眠る少女の為に使った。



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