番外編 魔術師のお料理教室
本編後のお話になります
魔術師は誰もがもらえる肩書きではなく、生まれもった魔力を自在に操れる者だけがもらえる称号。
つまり魔術師は職業ではない。
つまり師匠は、
「ニート?」
「お前と一緒にするな。おい、アシュリーを手伝ってやれ。皮剥くのに何時間使う気だ」
「あ、はい」
ある日の昼下がり。
今日も私と師匠と自称勇者で晩御飯を作っていた。
といっても私の料理スピードはかなり遅いし、最近師匠は指示とちょっとした見本を見せてはその辺にある木製の椅子に座ってるだけなので、実質自称勇者だけが作っていた。
仕方ないじゃん。
包丁なんて小学生の時に5回触ったくらいなんだからさ。
火加減を調節してから自称勇者は拗ねた私の隣に立ち、私に見せつけるような早さで芋や何やの皮を綺麗に包丁で剥いていく。
最後の一つ、私の持っている半分も剥けていない芋を剥きましょうかと聞かれたので、黙って渡して師匠の隣にあった椅子にどっこいしょと座った。
出来る人がやればいいんだよ。
「じゃあ師匠は何か仕事してるんですか?」
「何故お前に言わないといけない」
そういって師匠は立ち上がり自称勇者に指差しながら次の指示をする。
逃げた~!答えてくれない!
はっ!まさか師匠、
「ひ、人に言えないような如何わしい仕事を……「ただの薬剤師だ!」」
なーんだと、ニートではないことに安心半分つまらないに半分。
急に興味が無くなったので座っていた背もたれのない椅子を壁に近付けて座る。
足を組み背中を壁に預けて目をつむる。
だから稀に変なくさいにおいだったのかとか、そういえばラルゴは医療関係の仕事で魔力を使っているから私に全部は力を使えないと言っていたとか、色々と思い出す。
「ん?客なんて来ました?」
「大体は病院からの依頼でラルゴがとってくる。それを私が作りラルゴに届けさせる」
「あっ!だから引きこもってられるんですね!」
「お前は働きもしない引きこもりだがな」
「え~私有名人なので外はちょっと……」
師匠はいつまで続くか、と鼻で笑い自称勇者がおたまで掻き混ぜてる鍋を覗く。
働きたくない言い訳に出来た『有名人』。
それはもちろん、ドラゴンの件だ。
私は問題となったドラゴンだし、自称勇者は宗教団の雇われ勇者。
神殿内の事は外に駄々漏れだった、というかそうしたので当たり前の如く騒ぎになった。
アドルフは仕事が再開してからいろんな人に会うたびに労りや好奇心でドラゴンの子はどうだ、勇者様こうだと根掘り葉掘り連日聞かれて大変だったらしい。
アドルフほどでもないが、ラルゴも映像では映っていなかったものの師匠やアドルフの知り合いということは周りの人達にはバレていたので大変だったらしい。
なので2人は仕事だから仕方ないが、私と自称勇者には森から出ない方が良いと言われているのだ。
私は先生に質問するように片手を挙げて「はい!」と言ってみると、呆れた目で見られた。
「じゃあ、最近はどんな薬作ったんですか?」
「風邪薬。と精神安定剤が特に多かったな」
「……クーなんちゃら宗教絡みですか?」
「まぁそうだな。クヤーク宗教絡みが大方だろう。……人の心はそんなすぐ変わらないものだからな」
師匠は視線を窓の外に移し、自称勇者は俯いてなんだか調理場がしんみりしてしまった。が、
「アハハ。最後のセリフ、ラルゴくんの受け売りですよね。それ」
何故か師匠に頭を殴られた。




